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JICA九州 大学生インターン潜入レポート(11)

~教師海外研修事後インタビュー~ 鹿児島市立吉田北中学校 松下隼也 先生

こんにちは!
JICA九州センター大学生インターンの中村有李です。
何度かの事前研修を経て、8月10日から8月17日にかけてベトナムで行われた教師海外研修。帰国後の先生方にインタビューさせていただきました!

▽今回インタビューさせていただいたのは?

鹿児島市立吉田北中学校 松下隼也 先生

1.教師海外研修に参加した理由やきっかけ、今回の研修目標は何ですか?その目標は達成できましたか?
 研修参加のきっかけは2つあります。1つ目は、中学校社会科教師として、「ODA」や「社会主義国」、「新興国の発展」など、生徒に教授するために、実体験をもって知識と体験を得たいということ。2つ目は、JICAの青年海外協力隊に強い関心があることです。
 研修目標としては、「できる限りベトナムに住む人・働く人・関わる人の言葉を浴びること」「ベトナムのさまざまな発展を探求すること」がありました。
 まだまだ実践授業等研修も続きますが、海外研修においては、目標の達成を判断はできかねますが、そのすべてに最善を尽くしたつもりです。そのため悔いもなく、さまざまな気づきや学び、新たな問いとの出逢いもあり、人生にとってもかけがえのない研修とさせていただきました。このような貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

ハノイのガイド・フィンさんと一緒に(前列右が松下先生、中央がフィンさん)

2.研修中、印象に残っていることは何ですか? 
 特に印象に残っているのは、「山岳少数民族への訪問」と「ホアロー収容所」、「ベトナム人の生き方」です。
 「山岳少数民族への訪問」では、目標にもたてました「発展とは?」のテーマを深く考えることができました。都市部(国)の発展と山岳少数民族の発展のちがいやつながり、影響など様々な視点から、「発展とは?」という問いを何度も繰り返しました。「大きな発展と小さな発展」「物理的発展と精神的発展」、「発展することは幸せなのか?」「都市部と少数民族の幸せのちがい」「国の発展は過疎化を加速させるのか?」など一つ一つの問いを、帰国してからもゆっくりと紐解き、落としどころを今も探っています。これら問いを、子どもたちと一緒に暮らす地域と照らし合わせながら、探求を加速させたいです。
 「ホアロー収容所」では、帝国主義の歴史と、ベトナム戦争への理解を深めることができました。また歴史認識も日本人とベトナム人、北ベトナムと南ベトナムなど少なからず違いがありました。ただ一つ言えるのは、私はホアロー収容所に実際に足を踏み入れ、目で見て、肌で感じたという事実です。あの何とも言えない異様な空気感、歴史教育の違和感と事実から目をそらしてはいけないということ。その他、私自身の感じた感触はかけがえのない教養という教材になったに違いないと感じます。

山岳少数民族の村で民芸品づくり体験

ホアロー収容での視察

 「ベトナム人の生き方」は、本当に興味深く、おもしろい。まずは社会主義国という政治システムなのか、日本では感じられない勢いがありました。経済発展の時期であるというものでは説明できない、「数年で先進国へ」という国のビジョンに、国民皆がベクトルを合わせて、駆け上がっていこうとする高揚感や熱量はすさまじさを感じました。またガイドのフィンさんがいっていた「ベトナムは平和な時代になってたった30年(中国との戦いの歴史・フランス植民地時代・ベトナム戦争・ポルポトとの戦いのため)」という言葉にギャップを感じたのが、ベトナム人の「昔の話ですから」「歴史は歴史、今ベトナムは未来を見ている」という「過去は過去、未来は未来」という先を見ようとする感覚の潔さが驚きでした。私の思う日本は、過去を重んじ、若者も大人もどこか未来に向けては悲観的な印象が強い。実際に教壇で相対する子どもたちから耳にする言葉も、明るい日本ではなく、どこか諦めた、未来の日本には暗いイメージをもっています。なぜかと聞くと、ニュースや大人の言葉がそれを助長していると言います。ベトナムではその悲観的な感情はほとんど感じませんでした・・・ベトナムの中学生たちからも。

3.研修に行く前と、行った後で変化はありましたか?
 ベトナムには8年前にいったのですが、そのベトナムと比較すると発展のすさまじさにはやはり驚かされました。日本は追い越されるな、いやもう先進国日本という感覚でさえ疑いをもつくらいの衝撃でした。東南アジア諸国の発展の勢いを改めて学ばせてもらいました。さあ日本はどうしていくのか?考えていかなければ取り残されそうですね。
 朝の5:40。ハノイやダナンの町を散策しました。湖畔やビーチには、人。人。人。
爆音のエアロビクス集団、汗びっしょりで走りこむおじさん方、海辺には朝日を浴びながら笑顔照らされるビーチサッカーを全力で楽しむおじいちゃんたち、「ここには幸せがあふれている」と強く感じました。ベトナムでの約1週間の生活で「日本にはない〇〇」がいくつかありました。その中で「ホームレスがほとんどいない」「不登校という概念がない」このことは、朝の笑顔のベトナム人やダナン病院での家族の姿が物語っているのではないかと感じることでした。日本に帰国して、あのベトナム人の幸せそうな姿をお手本に生きていきたいと強く思います。

ハノイ市内の公立中学校での交流

4.生徒たちに伝えたいことはどのようなことですか? 
 授業の構想としては、勤務する校区にはたくさんのベトナム人の技能実習生が暮らしています。本研修で学んだ「発展とは?」を軸に、地域に暮らすベトナム人や地域の過疎化、これからの日本の発展などを結び付けられるような授業づくりを考えています。

5.この研修を一言で表すなら?   
 「知行合一」。やはり行ってみないと真の教養(知識)にはなりませんね。

6.その他、感想や今後の展望など伝えたいことがありましたらお教えください。
 展望としては、今回の研修での授業づくりで改めて、子どもたちの地域の社会資源や社会課題を探求するきっかけづくりを深化する。来年度、中学校社会科の九州大会の授業者になっているので、本研修をつなげていけたらと考えています。また機会があれば「青年海外協力隊への参加」もしたいという気持ちがさらに膨らみました。一教育者として、本研修を糧にして、さらに教育者としても、人間としても成長していきたいです。
 本研修では、たくさんのものや人、思いや考えに触れるかけがえのない経験にさせていただきました。本研修に関わったくださった方々に重ねてお礼申し上げます。たくさんの出逢いをありがとうございました。

教師海外研修について詳しくは以下のリンクから↓

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