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第31報:「先生、今度はなんですか?」

幕別町立札内北小学校 籾山 修斗先生

タイトルをご覧になって、どんなことを想像したでしょうか。このタイトルの言葉には2つの意味があります。1つは、「次は何が出てくるのかな?」というワクワクです。日頃から、フィールドワークから集めた情報や、地域にある企業や団体などとの繋がり、そして、海外のものなど色々な視点を活用しながら、授業を構成している私が担任になると、そんな面白さがあるようです。目の前には、キラキラした顔が並びます。

一方で、「今度は何を始める気だ?」という警戒でもあります。人は新しいもの・異質なものを新鮮に・好意的に受け取りづらいのはなぜでしょうか… どうしても、「籾山先生が、また何かを始めた?」と受け取られてしまう… そんな私ですが、今回は、「いよいよ、そこまでか!」と言われた、教師海外研修への参加、キルギスへの渡航です。

実に、高カロリー!

キルギスでの家庭科の授業

キルギスについて検索すると、あまり情報が出てきません。そんな土地に行くにも関わらず、派遣前研修では、「どんな授業がしたいか」と問われました。私は、実際に現地で体験したこと、見聞きしたことの印象や熱量を大切にしたいと思い、家庭科での実践に限られるものの、「詳しいことを決めずに行きたいです」とだけ話していました。現地では、出会った人やもの、状況はとにかく写真に収めたり動画を撮影したりしました。インタビューや移動中の現地通訳さんとのちょっとした会話も収め、必要に応じて見直すことで、頭が整理されていきました。結果的には、帰りのイスタンブールまでの8時間のフライト中に、カード教材のデザインや授業の方向性を一気に書き上げました。体験をもとにした授業づくりへの熱量が桁違いでした。
また、訪問させていただいた学校の先生方や子どもたちとの関わりも貴重な経験でした。披露してくれた踊りやコムズの演奏、素敵な刺繍の衣装やカルパックなどは、キルギス文化を直接感じることができました。ある子どもが「さようなら」をした直後にかばんから取り出した、どデカい袋のお菓子や、ものすごい甘いピンク色の粉のお菓子をもらって食べたのも良い思い出です。

ユルタ設営体験

 今回の一番の大きな教材は、ミニチュアユルタです。ユルタとは、キルギス語ではボズウィといい、移動式の住居で組み立てて設営します。クズルトゥー村のユルタ職人のお宅で、そのユルタの設営体験をした後登場した、可愛いサイズのミニチュアユルタ。これだ!と思い、値段も知らぬままその場で即決、発注しました。
どんなものが教材になるか、考えながら現地で教材を集めていましたが、このミニチュアユルタを活用し、実際に組み立てる体験をしたり、温湿計をいれ、温度や湿度を計り、暖かさを確かめるなど単元の学びを深める存在として大活躍しました。写真も動画もいいですが、やはり実物のもつパワーを改めて感じ、自分も子どもたちも大満足でした。

何回スクロールしたことか

OVOPの製品たち

 研修中、参加者全員が撮りためた写真をGoogleドライブで共有しました。いろいろな視点からの写真が集まります。私は、1年以上経つ今でもよく見返します。あれがおいしかったな、面白かったな、現地の子どもたちとこんな話をしたな…と、思い出に浸ることもありますが、一番のねらいは、「他の授業で生かせないかな」ということです。「社会科のあの単元では?」「総合的な学習の時間のSDGsの場面では?」「外国語の授業では?」と考えると、様々な活用場面が思い浮かび、ワクワクします。

賑やかな家庭科室の棚の上

 2024年の教師海外研修はザンビアが渡航先でした。たまたま参加者によく知る方がいたので、ザンビアの情報とお土産をたくさんもらいました。2023年のキルギス研修では、暖かく暮らす工夫を取り上げましたが、今度はアフリカということで、反対に涼しく暮らす工夫を取り上げ、家庭科の授業づくりをしました。昨年度と同じ子どもたちに授業をしたこともあってか、第一声は「先生、今度はなんですか?」でした。ワクワク・キラキラした子どもたちと、家庭科の学びを深めることができました。

ネクストステージ

 2025年1月、JICA東京にて、教員ネットワーク構築の「集い」に参加してきました。国際理解教育に関わる先生方とのつながりを作り、ともに学び、思いを共有する場をつくることができるように、JICAさんと全国の先生方とコミュニティづくりやイベント企画などを始めました。その名は「JICA Eduventures」。キックオフとして、2月に異文化理解を楽しむイベントを主催しました。この先、どんなことができるか、まだまだ未確定なところもありますが、少しでもお役に立てるように、そして、自分自身が楽しみたいと思っています。

トマムで再会!

 今回は、このような研修の機会をいただき、”世界一贅沢な授業づくり”をさせていただきました。参加が決まった時からの英語・ロシア語の勉強もモチベーションが途切れることなく続けることができています。また、JICAキルギス事務所の方の帰国に合わせて、一緒にトマムでスキーをするという、研修中のバス車中での約束が実現したのも面白かったですし、自分のインスタが中央アジアからの情報で溢れていることもなんだか不思議です。
これからも、新たな国、人、ものとの繋がりを大切に、「今度の“何か“」との出会いを楽しみます。