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第33報 なぜ教師海外研修にまだ行っていないのですか?

香港日本人学校香港校 小板橋 祥記先生   

1年もの間、共に経験し、学び合った先生方

教師海外研修に参加すると人生が変わります。以下、この研修を通して私が得たと思うものです。
・芋虫を食べる経験
・一生経験を共有できる教員の仲間
・日本では会うことのできない人に会えること
・世界で活躍する日本人や外から見た日本を見て日本が好きになること
・世界のつながりと、自分自身の生き方を問い直す教育「開発教育」の手法を学べること
・現地の人々の思考に触れることで、いかに自分が狭い考え、世界で生きていたのかを知ること
・現地の衣食住の文化を体験することで、自分自身の生活や日々の生活に感謝する機会を得ること

じゃんけん大会で盛り上がるザンビアの高校生

現地での約1週間の滞在で、やはり心に残っているのは「人との関わり」です。
もちろん、行く先々で目に映る風景や日本との違いに驚くことの連続でしたが、それ以上に印象に残ったのは、出会った人々がどのように考え、生きているかということでした。

ごみ処理場で出会った「将来の夢は小学校に行くこと」と語った18歳の女性。
じゃんけん大会で盛り上がるザンビアの高校生たち。
「施設も教具も不十分だけど、俺は教育で子どもたちを変えるんだ」と力強く語ってくれた先生。
「あまり悩みすぎなくていいよ、人生長いんだから」と優しく励ましてくれた9歳の少女アニーちゃん。
その一人ひとりが私の宝物です。

「僕は将来○○になります!」ー開発教育の持つ無限の可能性

「マフンジロ」とはザンビアの言葉で「教育」の意味

研修の集大成として、授業実践を行いました。
この授業では、私が実際にザンビアで見たり聞いたりしたことをもとに作成したマフンジロゲームを使用します。
生徒たちはさまざまな環境にいる13歳になりきり、それぞれに起こる理不尽な出来事や、社会の仕組みの中の不平等・差別(構造的暴力)を体験しました。

プレイ中、圧倒的に有利な状況に置かれ、とても幸せそうな表情を浮かべる生徒がいる一方で、理不尽すぎる設定に涙目になるような生徒もいました。

ゲーム終了後の振り返りで、私は生徒たちに問いかけました。
「開発途上国に住み、貧困に苦しむ人々のために、北海道の小さな町に住む私たちに何ができるでしょうか」
予想していた通り、「資金援助」や「物資の支援」といった意見が多く挙がりました。
しかし、最後にある生徒がこう言いました。
「信頼される大人になります。そうすれば、困っている人たちも安心して僕たちに助けを求められるし、信頼できる大人が世界を変えられると思います」
その瞬間、鳥肌が立ちました。
JICAの方、そして長い間授業づくりをサポートしてくださったアドバイザーの先生も来校しており、緊張の中での授業でしたが、生徒の予想外の発言に心を動かされました。
開発教育が、子どもたちの無限の可能性を引き出す手立てであることを身をもって実感しました。

あなたは過去、今、未来 どこを生きていますか?

JICA ザンビア事務所にて

「いや、当たり前に“今”でしょ」と思うかもしれませんが、本当にそうでしょうか。
この記事を書くにあたり、研修中のある言葉を思い出しました。

ザンビアでの研修中、同じ研修参加者の平山教諭がふと語った一言です。
「俺たちは、過去の出来事を忘れられずに縛られたり、未来のタスクや“やるべきこと”に追われて生きているよね。ザンビアの人たちは“今”を全力で生きている。そんな感じがするんだよね。」

その言葉を聞いた瞬間、私はハッとしました。
そして、この記事を書いている今もなお、あの時の風景を思い出しながら、
「自分は今を最大限に楽しめているだろうか」と自問しています。

2025年4月から、私は香港の学校で勤務するという貴重な機会をいただいております。
この一年で出会った生徒たち、魅力的な先生方、そして近所の優しい香港の人々。
そんな素敵な人たちとの関わりがある“今”を、これからも大切に生きていきます。

ここまで来る過程で多くの方々に支えられてきました。
教師海外研修を共にした北海道・東北の先生方、JICAスタッフの皆様、ザンビアで奮闘していた協力隊員の方々、指導案づくりを徹底的にサポートしてくださった水谷由美先生、そして教師としての新たな面白さを教えてくれた標茶中学校の生徒たち。
この場をお借りして、心より感謝申し上げます。

これからも「今」という瞬間を全力で生きていきます。
楽しい人生を送りましょう。