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第34報 「真っ白な状態で見る」

北海道帯広南商業高等学校 青山 紘子先生   

応募のきっかけ

教員になって1年半。
大学時代はコロナ禍の中で卒業しました。
「海外に行ってみたい」「留学したかった」という思いを抱えたまま、英語教員として働き始めました。

英語の文法や表現は教えられても、「海外ってこんなに面白い場所があるんだよ」「現地の人ってこんな考え方をするんだよ」と伝えられない、聞かれても答えられない自分に、もやもやした気持ちがありました。

そんなある日、教科書の中で「ザンビアのバナナペーパー」という単元を扱いました。
日本が協力してバナナペーパーを作っていることを学びましたが、どこか遠い国の話のようで、実感を持つことができませんでした。

そんな時、職員室の回覧で「教師海外研修 in Zambia」の文字を見つけました。
「ザンビア?どこかで聞いたような…」と思った瞬間、教科書の内容が頭をよぎりました。
このタイミングを逃してはいけないと感じ、その日のうちに志望理由を書き、教頭先生に提出しました。

研修前の学び、心に残る言葉

出国前研修の様子 ※2024年度教師海外研修は北海道と東北の合同で実施されました。

事前研修が数回に分けて行われました。どの研修も自分にとって大きな学びでしたが、出国前研修で、東北の鈴木ファシリテーターの先生からいただいた言葉が今も心に残っています。
「価値観や自分の物差しではなく、真っ白な状態で見る」
この言葉を胸に、現地で感じたことを素直に受け止めようと決めました。

ザンビアでの研修

現地では、支援学校や病院、農家、農業事務所、中等学校、コミュニティなどを訪問しました。
その中でも特に印象に残っているのは、市のごみ処理場の視察です。

目の前に広がる巨大な埋め立て地。
隣には、ごみから染み出た有害な水を貯めた湖。
そこで生活し、生計を立てている人々がいました。

「なぜ分別しないのだろう」と考えた私に、現地スタッフは言いました。
「貧困、教育、健康問題への対応での優先順位、そしてそれを問題だと感じていない現状があるのです。」

その言葉を聞いた瞬間、強い衝撃を受けました。
自分の中の“当たり前”や“正しさ”が、別の場所では通用しないことを実感しました。
そしてあの「真っ白な状態で見る」という言葉を思い出しました。

研修の終盤に差しかかっているのに「私は本当に、真っ白な目で世界を見ていただろうか。」と思い、どれほど自分が自分の価値観の枠から抜け出せていなかったかに気づきました。
そして、「何も決めつけずに見ること」それが、どれほど難しいことかを思い知らされました。

帰国後の実践

帰国後は、1か月ほどで指導案を作成することが求められました。
何度もアドバイザーの先生から助言をいただきながら、修正を重ねました。
当初は「自分が伝えたいこと」ばかりを中心にしてしまい、「生徒の目線に立つ」ことを忘れていました。ここでもまた、無意識のうちに自分の価値観の枠にとらわれていたことを痛感しました。

中間発表では多くの課題を指摘されましたが、改善を重ねようやく授業を行うことができました。

沢山の課題は残りましたが、授業後の生徒の感想には、
「アフリカがより身近に感じられた」
「問題を解決できないもどかしさを感じた」
「他の国のことも知りたいと思った」
という言葉が並びました。

その声を聞いた時、生徒にとって英語を学ぶことも大切ですが世界や文化を知ることの方がもっと楽しいのだと、改めて気づきました。

研修を終えて

この研修を通して、私は“英語教師”としてだけでなく、“一人の人間”としての視野を広げることができました。
今もなお、「価値観や自分の物差しではなく真っ白な状態で見る」という言葉を胸に、生徒や周囲の人々と向き合う日々を送っています。

ザンビアで得た経験は、英語を教えることの意味を改めて考え直すきっかけになりました。
これからも、文化や現地の人々との交流を通して「英語で世界とつながる」授業を目指していきたいと思います。