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第35報 新たな幕開け

北海道苫小牧南高等学校 田中 眞先生   

未知のアフリカ大陸で「とにかく精神」

研修の仲間と

 私は、若い頃に、スポーツ国際交流選手として、オーストラリアとロシアに派遣された経験があります。この経験は、これまでの自分の生き方を見つめ直す良いきっかけとなり、それからは、より海外に目を向けるようになりました。前任の北海道千歳高等学校では、グローバルな視点を学べる国際教養科の担任として経験を積むことができ、様々な国の人たちと会う機会に恵まれました。その中で出会ったJICA海外協力隊員の「日本の常識を超えた苦労」や「それを乗り越えてきたストーリー」に圧倒され、私も実際に経験したい気持ちがわいてきた頃、副校長からJICA北海道教師海外研修の案内をいただき、多くの方からサポートを受け、参加できることとなりました。

Where are you from?

 研修の目標を「とにかく出逢った人に勇気をもって話しかけ、心を込めて交流をする。」と自分の中に掲げ、もしそれが達成できたら、「勇気の証」として宝物にすると決めました。また、日本出発から日本到着まで会話した人の記録をすべて取り続けました。東洋の日本人が珍しいせいか、もしくは気のせいだったのか多くの人と目があい、これを絶好のチャンスとし、「Where are you from?」と積極的に話しかけました。ザンビアとドバイ(※)の2カ国の滞在で、総勢約220名、15カ国の人たちと多国籍感満載の会話を楽しむことができ、人生の宝物を一つ増やすことができました。私自身がこの会話を通じて「日本人」とは何かを改めて強く感じた瞬間でした。

※乗継のトラブルで、急遽ドバイに一泊滞在することになりました

日本の生徒たちに伝えた温かいエピソード

駆けてくる子どもたち
(とっさに写真が撮れなかったのでイメージ写真です)

○「二ムコンダ」コミュニケーション

 現地語で「ニムコンダ」は、「私はあなたが好き」という意味です。この覚えたての現地語が、私にとって感動する言葉となりました。散策中の路上で小学生3人の子どもたちと、私のザンビア国旗が入ったポロシャツをネタに楽しい会話のひと時をすごしました。別れ際に指でハートマークを作り「ニムコンダ」と伝えると、目を輝かせて喜んでくれました。散策を終えバスに戻る途中、先ほど会話した子どもたちが目に飛び込んできました。お互い目が合った瞬間、手を振りながらかけよりそのままの勢いで力強く順番にハグをしてくれました。この子どもたちの純粋さと素直な表現力を日本の生徒たちに伝えると、みんな感動してくれました。

日本語での合唱で歓迎

○「幸せなら手をたたこう」の歌声

 今回の研修に同行されたJICA東北センターの鈴木ファシリテーターが、かつてザンビアでJICA海外協力隊として活動していたコミュニティスクール(※)を訪問すると、元同僚のザンビア人の先生方は、ファシリテーターとの再会に涙を流していました。子どもたちも民族衣装を着て出迎えてくれ、「幸せなら手をたたこう」をきれいな日本語で歌ってくれました。この学校訪問中は、幸せな気持ちに包まれながら過ごすことができました。
 帰国後、日本の高校生に、アフリカ人のエネルギッシュな行動と心から学校を楽しんでいる様子を伝えると、恵まれた自分の学校生活を、改めて考えなおすきっかけになったようです。ザンビアの先生に「幸せですか?」と質問すると、「みんなといて幸せ。自分がNo.1で好き。だから自分を好きなように、みんなのことも好きな気持ちで接している」。私はこの言葉を、日本の生徒が前向きになる一つの言葉として伝えています。

※コミュニティスクールとは、正規の学校に通っていない子どもたちのためのインフォーマルな学校です

ザンビアを知ってもらうプレゼンテーション

現地でお世話になったザンビアの方と札幌で再会

○再会

帰国してから2ヶ月後に、ザンビアで会った高校生が、研究発表で札幌を訪れるということで、会いに行きました。会った時はもちろん「ニムコンダ」と伝え、とびきりの笑顔をもらいました。その生徒は、「ゴミ問題」をテーマに発表をまとめていました。私がこれから行うプレゼンテーションのテーマと同じであったため、解決策を共有することができました。

○未知の国 ザンビア

私が感動したことを交えながら、「ザンビアのゴミ問題」をテーマに、前任校の千歳高校と苫小牧南高校でプレゼンテーションを行いました。アドバイスを頂いた先生方を合わせると、総勢720名近くにプレゼンテーションをすることができ、本当に感謝しています。アンケート結果は、「アフリカのイメージが変わった」が88%、「JICA海外協力隊に参加してみたい」が47%となり、生徒にとって「アフリカは未知の国」からのスタートだったので、この結果は十分満足できるものとなりました。明るく楽しく生活しているアフリカの生活を見て、「元気がでた。」というコメントや、「ゴミ問題からビジネスを展開するアイディア」もたくさん出され、生徒の「探究テーマ」につなげられるものになったと感じています。また、生徒の夢にも影響があり、3年生が、「アフリカ大陸に野球を普及、発展させる夢」や、「培養肉でアフリカの飢餓を救う夢」などをテーマに、第一希望の大学に総合型入試で挑戦し、見事合格を勝ち取りました。私にとっても、生徒の夢の実現が、将来の楽しみとなりました。

 このJICA北海道教師海外研修は、私の人生にとって「新たな幕開け」となりました。この研修で出逢った人たちは、豊かな好奇心と高い行動力を持つ、素晴らしい仲間ばかりでした。その姿勢や挑戦する姿から刺激を受け、私もさらに挑戦していこうと決意しています。
 また、JICA海外協力隊として派遣された方々のイベントにも、引き続き参加する機会をいただいており、参加するたびに大きな刺激を受けています。これからも多くのことを学び、私自身行動し続けていきたいと思います。