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- 第40報 教室の「外」にある世界を求めて
音更町立木野東小学校 杉村 萌先生
私が国際理解教育に興味をもった原点は、中学時代のカナダ訪問にあります。様々な異文化に触れ、見るもの、食べるもの全てが驚きでした。「世界って広い!おもしろい!」とその時の感動は今でも覚えています。
しかし、カナダ滞在中に「9.11(米同時多発テロ事件)」が起きたのです。ホームステイ先の家にいた私は、朝起きてリビングに行くと、ホストファミリーのママがテレビのニュースを見て「Oh my god...」と絶句していました。画面には、世界貿易センタービルに飛行機が突っ込む信じられない光景。当時、英語はまだ十分に理解できませんでしたが、大変なことが起きたことだけはわかりました。その後、急遽参加者とホストファミリーが集められました。同行していた英語科の先生が「戦争が起こるかもしれません」と緊迫した声で言いました。私たちのカナダ訪問は帰国を早めることを余儀なくされました。
カナダ訪問を通して、共通の言語があることで、国境も文化も超えて心が通い合う。世界には知らないことがたくさんある。視野が一気に広がった気がしました。また9.11の出来事を通して、私の心の中に深く残ったのは「世界で起きていることは、決して他人事ではない」という実感です。もし日本にいたら、ただの「海の向こうのニュース」として聞き流していたかもしれません。しかし、異国の地で世界の痛みを自分事として感じたあの経験が、私が国際理解教育を大切にしていきたいと思った原点となりました。
ザンビア最初の夕食 ハングリーライオンにて
大学では国際理解・協力を専攻し、教職の道に進むことを決めました。教員として働く中で、上司からの勧めもあり、ザンビアでの教師海外研修に参加しました。アフリカの地を訪れることにわくわくする一方で、「ザンビア」は未知の国でもありました。はじめは、アフリカのどこに位置するのかもわかりませんでした。知らない世界に飛び込むことは楽しみでもありましたが、少々不安もありました。
羽田からドバイを経由し、合計21時間以上かけて辿り着きました。ザンビアの首都、ルサカの空港に降り立った瞬間、「ついに来たんだ」という実感が込み上げました。
心の豊かさを問い直す
Destiny コミュニティースクールの生徒たち
ザンビアでの滞在では、今の日本が忘れかけている、大切な価値観に出会いました。一つ目は「時間」です。アフリカ特有のゆったりとした時間が、そこには流れていました。最初は、スーパーのレジ待ちがなかなか進まないことに、苛立ちを感じていました。しかし、ふと周りをみると、現地の人々はその待ち時間さえも、見知らぬ誰かとの会話を楽しんでいました。「タイパ(タイムパフォーマンス)」を追い求め、常に時間に追われている自分の心が、いかに貧しいかを痛感しました。「郷に入っては郷に従え」。ホテルのエレベーター待ちの時に、思い切って話しかけてみました。その方はジンバブエからきた宿泊客で、「明日帰国するんだ」と伝えると、「次はジンバブエにも遊びに来てね」と返してくれました。何気ないやりとりですが、見知らぬ人との会話がこんなにも気軽に楽しめることが、とても新鮮でした。日々の忙しさを忘れ、目の前の人との関わりを楽しむザンビアの日常は、私にとって最高のリフレッシュであり、豊かさの再定義となりました。
対話から生まれる未来
ティッピータップ(※)の実演
※アフリカを中心に使用されている「簡易手洗い装置」
二つ目は、各地で活動するJICA海外協力隊員の皆さんの姿に、胸を打たれました。どの現場でも共通していたのは、「人と人との繋がりを大切にしている」ことです。目の前の子どもたちのため、ザンビアの未来のために、真摯に対話を重ね、現地の方々と信頼関係を築き上げていました。情報化社会でなんでも効率よく進む現代だからこそ、「顔を合わせ、対話をすること」。それこそが、遠回りに見えても確実な未来への種まきなのだと、彼らの地道な活動が教えてくれました。
これらの二つは、ザンビアに行ってみなければ学ぶことができませんでした。この価値観は、教員として、人としてのあり方を考える大切な宝物となりました。
知らないことを知る「喜び」
報告会のスライドより
帰国後、小学1年生を対象に授業実践をしました。まだ「外国」や「日本」という概念をはっきりもっていませんが、ザンビアの文化に触れることを通して、「外国っておもしろそう」「行ってみたい」「友達をつくってみたい」、そんな国際理解の第一歩を踏み出せるような授業を意識しました。
その授業実践をしてから一年後、ある保護者の方にこんな言葉をかけていただきました。「先生、うちの子、今でもザンビアの話するんですよ。行ってみたいって。」その言葉を聞いた時は、本当に嬉しかったです。子どもたちの心に世界へと目を向ける小さなきっかけを作ることができていたら、それは本当に素敵なことだと感じました。
一歩踏み出したその先で
JICA地球ひろばの研修にて
ザンビアでの教師海外研修を機に、より一層国際理解教育について学びたいとの思いを強くし、2025年度JICA地球ひろば主催の国際理解教育/開発教育指導者研修に参加しました。全国各地から集まった先生方やアドバイザーの先生方との出会い、自身の授業実践のブラッシュアップを通して、新たな学びを得ることができました。また、ザンビアでの研修に一緒に参加した先生方と互いに近況報告をし合ったり、志を同じくする仲間との出会いの輪がさらに広がったりするなど、授業作りのモチベーションにつながっています。
今後も研修で得た学びを生かし、子どもたちと、教室の「外」にある世界を見つめ、共に考えていきたいと思っています。