南米パラグアイの帰国研修員からの便り~洪水による避難民への救助活動~

2024.02.15

2023年5月に「参加型地域開発のための地方行政強化」コースに参加した研修員

2023/5/9〜5/31の日程で日本での研修に参加したパラグアイの帰国研修員Lucíaさん。中南米地域では、地方分権や住民参加型の地域開発が推進されている一方で、地方自治体の財政・組織・行政能力の不足により、委譲された権限や資金が地域開発に活かしきれず、住民のニーズに合わない、非効率的な事業が顕在化するなどの課題があります。本研修は、地域開発に携わる自治体職員や地方開発を担う中央省庁の職員を対象に、日本における地方行政、住民参加型での地域開発に関する経験・アプローチ手法を学び、自国の地域開発を効果的に担うことを目的に実施しました。

下川町の森林組合で循環型森林経営を視察する様子(右から2番目の女性がLucía さん)

日本全国で農村部の過疎化や地方都市空洞化といった問題がありますが、北海道は他の都府県に比べてかなり以前からこの問題を抱え、全国で最も人口減少のスピードが速い地域です。
そのため、北海道では魅力あるまちづくりに向けた地域資源の活用や住民参加型のまちづくりなど、課題克服のために様々な取組を実施しております。
研修では、3自治体(下川町、東川町、沼田町)を視察し、自国の地域開発に応用可能な様々なアイディアを得ました。

アクションプランについて個人面談で助言を受けるLucía さん

Lucíaさんは、研修修了時のアクションプラン(帰国後の行動計画)で、「自分の活動するアジョラス市で住民参加による水産協同組合を設立し、水産品の生産向上と製品に付加価値をつける機能を備えた集荷センターの導入を通じて、生産者の収入向上、地域経済の発展促進、消費者に高品質の製品を提供すること」をテーマに計画を立案しました。

災害から地域の人々を守るために

2024年2月9日にLucíaさんからアクションプランの進捗と近況について13枚にも及ぶ報告書が届きました。
パラグアイ政府および彼女の所属するヤシレタ公団※の政権交代により新たな戦略に合致するよう計画を見直し、様々な障害を克服するために取り組んできたが、2023年11月15日、豪雨によりパラナ川の水位が上昇し、5つの県と17地区が被害を受ける洪水が発生する緊急事態に直面し、その支援に奔走していること、現在の支援は復興プロセスの第一歩に過ぎないため、立ち直るためには、まだ多くの支援が必要だと認識している事などが記載されていました。

※ヤシレタ公団:アルゼンチンとパラグアイ二国間が共同でパラナ川の水力発電開発の権利と義務を平等に遵守する目的で締結された協定に基づき、主に電力部門で事業を行っているが、現在は社会貢献事業等も実施している。

被害を受けた地域(〇囲みがLucíaさんの活動地域)

政府は25ヵ所に避難所を開設し、ヤシレタ公団は被災者5,500人以上に食料、テントの提供、社会避難所への移動や医療のケアなどを行い、州知事事務所と州開発強化委員会と連携して、45,000人の受益者リストを作成しました。その後、同公団は農民組織と連携して受益者リストの更新に奔走し、関係者の全面的な参加を得て被災者の支援を行っているそうです。
「この危機的な状況が地域社会を脆弱な立場に追いやった以上、やるべきことは多く残されている」、と彼女は言います。

ミシオネス県アジョラス市で住宅が浸水した様子

日本での学びを糧に

Lucíaさんのメールには、以下の文章が添えられていました。
彼女の地域振興に対する熱意と決意が強く感じられるメッセージです。JICA北海道は引続き途上国の地域開発分野の支援を続けていきます。

「重大な理由によりアクションプランを前進させることが出来ない理由を報告しますが、私は既に日本で学んだ事を日常生活と仕事で実行しており、学びの全てに感謝している事をあなたに伝えたいと思います。そして、研修で得た貴重な知識を今後のプロジェクトに応用する予定です。プロジェクトの再開と推進に全力を尽くすことを約束し、これからもアクションプランの進捗状況を報告していきます」

アジョラス市の災害キャンプへ物資を届けた様子

アジョラス市の災害キャンプへ物資を届けた様子(右端の黒いジャンパーの女性がLucíaさん)

浸水から高齢者と犬を保護する様子

食料キットの配給を待つ小規模農家たち

<関連リンク>
研修員受入事業

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