JICA長期研修員が真夏の「雪」と日本の夏祭りを体験!(沼田町)
2024.08.15
8月7日、気温が33℃に達したこの日、沼田町で気温4℃の世界を体験したJICA長期研修員は、口々に「寒い~」「夏なのに雪があるなんて!」「寒くてもう我慢できません!」と驚きの声をあげました。
JICAでは、日本の大学で学位取得を目指している開発途上国からの留学生(JICA長期研修員)が、学問以外に日本や、自分たちが住んでいる地域がどのようにして発展してきたのかを知るために、日本理解・地域理解プログラムを実施しています。
毎年行っているこの取り組みですが、2024年度の地域理解プログラムでは、空知管内の沼田町を訪問し、町が進めている地域づくり、「雪」を生かした新技術の活用、地域伝統文化の継承などを学びました。
当日は、北海道大学・帯広畜産大学・北見工業大学に留学中の研修員31名が参加しましたが、皆さん、普段は札幌、帯広、北見といった都市での北海道生活を楽しんでいるものの、人口2800人の町を訪れ、その土地のことをじっくり学ぶのは、ほぼ初めての体験です。
当日は、まず、沼田町役場産業創出課の方から、「田舎ぐらしの良さが、ぎゅっとつまった町」と題して、町の歴史や今の姿、困難を乗り越えて実現している町の魅力についてお話をうかがいました。
沼田町役場の方から町についての講義を聴く様子
「まちづくり」に続く、テーマは「厄介者の雪」をいかにして有効活用しているのか、発想の転換についての講義でした。
沼田町は、北海道でも有数の豪雪地帯で、真冬の積雪は、多い年で2メートルを超えることもあります。この雪は、住民にとっては厄介な存在でしたが、発想の転換により、現在は、「厄介者」を「まちの資源」として活用することに成功しています。
「冷熱エネルギー」という言葉を聞いたことはありませんか?これは、雪が持つ「冷たい熱」、いわゆる「雪の冷熱エネルギー」というものを使って、真夏でも低い室温を保つ工夫で、電気を使わない、地球にやさしい冷房の仕組みです。
沼田町役場の方から「冷熱利用」利用について講義を聴く様子
沼田町には、冷熱を利用してお米を籾の状態で貯蔵する、世界で初めての施設「スノークールライスファクトリー」があり、夏でも鮮度を保っておいしい味として評価されているブランド米「雪中米」を生産しています。それ以外にも、野菜の保冷施設や、沼田町生涯学習総合センターなどでも、「冷熱」を利用した冷房システムが取り入れられています。
「スノークールライスファクトリー」の運営に関して質問をする留学生
この日、留学生のみなさんも、まず初めに、そうした施設の一つである「雪の科学館」で、その効果を実感することができました。雪の科学館では、沼田町で取れた野菜や、開花時期をずらすために春から保冷している、蕾のついた桜の枝などが保管されています。見た目は普通の倉庫ですが、中に入ってみると、外気との温度差に、訪れた留学生は驚嘆の声をあげていました。
外気温33℃、室内気温4℃を体験するため雪の科学館に到着
雪の科学館で野菜の保冷状況について話を聞留学生。とても寒かった様子
昨秋に収穫されたお米が保冷されているスノークールライスファクトリーも訪問しました。訪れたタイミングが遅く、「真夏でも新鮮なお米」として評判の雪中米は既にすべて出荷済みでしたが、実際にファクトリーに入ってみて、その規模の大きさにも感心していました。
「スノークールライスファクトリー」の機能について説明を受ける留学生
この日、最後のテーマは沼田町で継承されている伝統文化「夜高あんどん祭り」です。
富山県に起源をもつこの伝統文化は、北海道ではあまり例がなく、重さ5トンにもなる大きなあんどんをぶつけ合うというとても珍しいものです。今年は8月23日と24日に開催されますが、今回の訪問では、ぶつけ合いの様子を動画で見たり、あんどん制作の現場を訪れ、制作の一部を体験させてもらいました。
幅5m、長さ12m、高さ7m、重さ5トンにもなる櫓について説明を受けました。
着色前のあんどんを確かめる研修員
慎重に和紙に絵の具をのせていきます。
あんどん制作体験後の集合写真
真夏の暑い1日でしたが、留学生の皆さんは、雪を活用するという意外な発想や真夏でも大量の雪が保存され利用されていることへの驚き、さらには、日本人の五穀豊穣に対する思いと夏祭りの姿を触れることができ、忘れられない思い出を得た日になりました。
当日の様子は北海道の夕方の報道番組でも紹介されました。
https://www.hbc.co.jp/news/80456c73fb8757cd2c3f85ad52e4c68d.html
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