2024年度JICA北海道教師海外研修ザンビア現地研修が無事終了しました
2025.03.10
教師海外研修募集要項表紙
JICAでは教員の皆様を対象に、開発途上国にて国際協力の現場に触れていただき、その経験を元に児童生徒たちへの授業づくりを行う「教師海外研修」を実施しています。
例年、各JICA国内拠点ごとに教師海外研修を実施しますが、2024年度はJICA北海道とJICA東北が現地研修先としてザンビアを同じく希望し、合同開催となりました。北海道としては約8年振りにアフリカを訪問しました。
札幌帯広をはじめ、道内各地より8名の先生にご参加いただき、東北地方の先生方と合わせて計16名が7月27日からのザンビアに向かい、現地研修が無事終了しました。
現地研修の様子を参加された先生の声を交えながらお届けいたします!
出国前研修の様子
第一次事前研修を北海道・東北と合同でオンラインにて実施したため、参加された先生方は顔合わせはしていたものの、対面でお話しする機会がありませんでした。そこで、羽田空港にて出国前研修を実施。現地研修を共にする北海道と東北の先生16名がオンラインぶりの再会(?)をしました!
第二次研修の情報共有の様子
出国前研修では、各地で実施した第二次事前研修で学んだことの情報共有や学校交流の打合せなどを行いました。ザンビアに行ったらこんなことをしたい!こんなものを見たい!という思いを北海道・東北参加者同士で高め合う場となりました。日付が変わって7/28の0時に出国し、ザンビアへ向かいました。
チャイナマ特別支援初等学校の子どもたちと川上先生
28日の夕方ごろにザンビアのルサカ国際空港に到着した先生方。28日はホテルでゆっくり過ごし、29日から本格的に現地研修がスタートしました。まずはJICAザンビア事務所にて、館山所長によるブリーフィング。ザンビアの国事情やザンビアにおけるJICAプロジェクト等の説明を受けました。それから村上恵里佳隊員活動先のチャイナマ特別支援初等学校、伊藤亨隊員活動先のカニャマレベル1総合病院へ訪問に行きました。
チャイナマ特別支援学校では、LD(学習障がい)を持つ子やダウン症の子どもたちと交流しました。バスで訪れた際に、たくさんの子どもたちが笑顔で迎えてくれたのが印象的でした。
カニャマレベル1総合病院では、最も多い患者の年齢層は感染症の影響を受けやすい30代と聞いて驚きました。必要な医療機材の整備をするために、日本政府が無償資金援助をしたことも紹介していただきました。
カニャマレベル1総合病院で活動される伊藤隊員と参加教員の皆さん
この日を「ザンビアで活動する日本人と出会い、現地でたくさんの輝く笑顔に感動した1日となりました!」と語る参加教員の鹿追小学校の川上光陽先生。
現地研修1日目の様子を動画にしていただきましたので、是非ご覧ください。
https://www.facebook.com/jicahokkaido.sapporo/videos/8385476794817929
シマを堪能する参加教員のお二人
午前は宮城県丸森町が行う、市場志向型農業プロジェクトの視察に行きました。ザンビアと丸森町の交流は2011年のザンビア人JICA研修員(中小農家)の受入れから始まりました。研修直後に東日本大震災が発生し、帰国したザンビア人研修員が主体となって義援金を届けたというエピソードや、2019年の東京オリンピックにて丸森町がザンビア選手団のホストタウンになるなど、友好な関係が今でも続いています。本研修では、チランガ群の農家の皆さんとお会いし、プロジェクトの様子や、現地の主食である『シマ』作りも体験させていただきました!
チランガ群農業事務所で活動される細谷隊員(左から2番目)
次に、JICA協力隊の細谷和喜隊員が活動するチランガ群農業事務所を訪問。細谷隊員は北海道のご出身で、書籍「世界がもし100人の村だったら」に感銘を受けて協力隊に応募したそうです。まだ派遣されて約半年ですが、「この国は肥料が高く、農家が肥料を購入できないという課題があるため、肥料を購入しなくても栽培可能な方法を探っています。」と活発に活動されていました!
現地研修2日目の北海道当別町立西当別中学校 中尾綾香先生のレポートはこちらです。
https://www.facebook.com/jicahokkaido.sapporo/posts/pfbid0xrUtZZ9MuJbkovLLURYdWzJ3eVnZey2ZWcymZyNFeqTLirtxfe1cDaKfstEik4vPl
ディスティニー・コミュニティスクールの子どもとハイタッチする杉村先生
午前に訪問したのはデスティニー・コミュニティスクールです。ここザンビアは社会的・経済的な理由により正規の学校に通っていない子どもたちのために、地域の方々によって運営される『コミュニティスクール』という学校があります。今回、本研修にご同行頂いたJICA東北の開発教育ファシリテーターである鈴木先生はこのデスティニー・コミュニティスクールにて2007~2009年の間、JICA海外協力隊として活動されたご経験があります。約15年ぶりに任地に帰った鈴木先生と現地の先生による学校紹介や、参加者の先生と学校に通う子どもたちの交流、現地の方のお家に訪問させてもらい、生活の様子を知る貴重な機会になりました。
おはじきと箸に挑戦するデービッドカウンダ中の生徒たち
午後に訪問したデービッドカウンダSTEM中等学校は、JICA海外協力隊の小野亘隊員の活動先です。ザンビアは科学・技術・工学・数学のSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育に力を入れており小野隊員はここで主に化学の授業を担当されています。教育省に指定されている本校は、進級にかかる国家試験によって選抜された優秀な生徒が集まっていて、将来を担う子どもたちを国をあげて本気で育てていきたいという雰囲気を感じることができました。
現地研修3日目の標茶町立標茶中学校 小板橋祥記先生のレポートはこちらです。
https://www.facebook.com/jicahokkaido.sapporo/posts/pfbid0rgGoqGtnXaruXXEdqsqKBwu9cPPpkG9g8tLnb6cnzSVBjmtPPzjzcekwwJrv1Kwvl
コンサドーレユニフォームを寄贈する中尾先生
この日はChawama Youth Project事務所を訪問。ここでは、北海道大学大学院が実施するJICA草の根技術協力事業「子どもと若者の参加型アクションリサーチによる地域に根差したWASH(水、トイレ、衛生)モデルの共創」プロジェクトが行われています。ザンビアは衛生環境の悪さで、感染症が頻繁に発生しています。本プロジェクトでは持続可能な衛生環境の解決のために、子どもから大人というボトムアップ型で衛生への意識向上を目指す取組みを行っています。トイレ等のインフラ整備が様々な理由で追いついていない中、見通しの立たないハード面の改善を待つのではなく、主体となって衛生環境改善にむけて行動できるようソフト面でのサポート(教育)を受けた子どもたちによる成果発表や、ティッピータップ(簡易手洗い装置)作りのデモンストレーションを見ることができました。
現地の子どもたちには発表のお礼も兼ねて、北海道コンサドーレ札幌さんからいただいたユニフォーム(レプリカ)を寄贈させていただきました!
60周年を記念して行われた人形展と松村先生
次に向かったのは国立ルサカ博物館です。ここでは、日本・ザンビア外交関係樹立60周年記念式典が行われ、参加教員の皆さんも式に参加されました。60年前のザンビアはイギリスの植民地であり、名前も「北ローデシア」でした。その60年前というのは、東京オリンピックが行われた年です。「北ローデシア」として参加し、オリンピック開催中に独立。閉会式では「ザンビア共和国」として参加し、日本国民はそのザンビア国旗に拍手を送ったというエピソードがあります。このような深いご縁のある日本とザンビアの記念式典に立ち会うことができました。この60年の関係をJICAや北海道大学などの様々な協力団体が支えていることがわかる展示物も見ごたえがありました。
現地研修4日目の様子は北海道帯広南商業高等学校 青山先生が編集してくださった動画で見られます。
https://www.facebook.com/jicahokkaido.sapporo/videos/8095707857215134/
ルサカ市にあるごみ処理場の様子
この日はJICA技術協力「ザンビア国ルサカ市きれいな街プロジェクト」が行われるごみ処分場の視察に行きました。ルサカ市では稼働できるゴミ収集車が減少していて、市全体のゴミ回収率は低下傾向にあります。特に、ルサカ市の人口の7割が住んでいるコンパウンドと呼ばれる未計画居住区(貧困地区)では、ゴミにより衛生環境が悪化し、水の汚染によってコレラ等の疾患がまん延しています。本プロジェクトでは、あらゆるゴミの課題を踏まえ、ごみ処分場の運営体制を強化する仕組み作りを行っています。参加する先生方はごみ処理場に集められたゴミの山を実際に歩き、ゴミから自然に発火する煙や汚水、ゴミを拾って生計を立てる現地の方々を目の当たりにしてショックを隠しきれない様子でした。
アグリカルチャーショーのJICAブースの様子
滞在期間中に行われたThe Zambia Agricultural and Commercial Showにも参加することができました。これは農業関係の企業や団体がビジネスの紹介をするイベントで、通称「アグリカルチャーショー」と言われています。グラウンドではザンビアの軍隊がパフォーマンスをし、ザンビア大統領だけではなく近隣国の大統領も来て、その様子がテレビ中継されるほどの大規模なショーで、JICAブースも出展されていました。7/30に訪問した市場志向型農業プロジェクトで作られた作物や加工品がこのアグリカルチャーショーの地区1位の評価をもらったこともあります。ザンビア渡航期間中に大規模なイベントに参加することができたのはラッキーでした。
在ザンビア日本大使館にて
在ザンビア日本大使館表敬訪問では、参加教員の皆さん全員でザンビア現地研修で見てきたもの、感じたことを竹内一之大使にご報告させていただきました。日本人にとってあまり馴染みのないザンビアですが、現地研修4日目に参加した国立ルサカ博物館で行われていた日本・ザンビア外交関係樹立60周年記念式典会場にて数々の日本とザンビアの友好関係の歴史についてのパネル展示があり、異国の土地に日本の協力が強く根付いているのを感じました。
JICAザンビア事務所にて研修報告の様子
最後にJICAザンビア事務所へ行き、参加教員の皆さんによる研修報告を行いました。それぞれがそれぞれの場所で強く心に残ったことをお話ししていただきました。優しい国民性のザンビア人に心が温かくなる一方、午前中のごみ処理場で生計を立てているスカベンジャーと呼ばれている人々の存在に戸惑いを隠しきれない先生方の様子が見られました。
夜は協力隊員やザンビア事務所の職員との懇親会があり、現地での活動の様子をより詳しく知る有意義な時間を過ごすことができました。
現地研修5日目の音更町立木野東小学校 杉村萌先生のレポートはこちらです。
https://www.facebook.com/jicahokkaido.sapporo/posts/pfbid02NRgnosRpiXN3mvje8aeoxmbLdwtGkgPzj2voYntPPhDtjzk5Kgkfvxw1nFyN6EhRl
ルサカ国立公園で出会えたキリン
この日はまず、ルサカ国立公園に行きました。私たちが想像する公園というよりも、サファリパークを車で移動するようなところでした。公園内でキリンとインパラを見ることができました!ルサカ市内はショッピングモールもあり、都会なところが多いのですがこの国立公園では、一般的にイメージするようなアフリカを感じることができました。
保護されている孤児になった子象たち
次にルサカ国立公園にある象の孤児院「ワイルドワイフ・ディスカバリー・センター」に行きました。ここでは孤児になった象が保護されています。ただ保護するのではなく、自然な形で野生に返せるように活動しているのがここの特徴です。私たちも象を観察するときは、音を立てずに、葉っぱのオブジェで人の目が象から見えにくいフェンス越しで象を見ました。
現地研修6日目の北海道千歳高等学校 田中眞先生のレポートはこちらです。
https://www.facebook.com/jicahokkaido.sapporo/posts/pfbid027Eh5mbTcSHa87pFxhewfJauPfLmzvQArPBPzGptcBNXMRuCm4Y9Etkz34n2V9bcbl
ザンビアのハンバーガーショップ「ハングリーライオン」
参加された教員の皆様は、ザンビアで見てきたことを授業化するため、試行錯誤している最中です。教科書や本だけでは伝えきれないザンビアの様子をいかに臨場感あふれる状態で児童生徒たちに伝えられるかが課題です。また、伝えるのではなく、児童生徒自ら自発的に意見が言えるように仕掛けを作るのが開発教育の醍醐味です。次の帰国後研修では、参加された教員の皆様が作った指導案を検討する研修です。色々な意見に揉まれて出来上がった授業は2025年1月上旬に「成果報告会」を予定しておりますので、是非ご参加ください。
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