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持続可能な食文化の日と国際協力

2025.07.14

 先月6月18日は国連が定めた「持続可能な食文化の日」でした。世界には多様な人々が住んでおり、その人たちの食文化も、その土地で得られる食料や地域の歴史などを反映した多様性に富んだものです。地域固有の伝統的な食文化を継承していくためには、持続可能な食料生産を実現することは、とても大事です。例えば、日本では食文化の中心としてコメの役割はとても重要で、米食としての消費が減ってきたとはいえ、お餅やお団子、更には煎餅や日本酒など姿を変えて、我々日本人の食文化の大事な部分を形成しています。

 世界に目を向けると、インドネシアのナシゴレン、パキスタンのビリヤニ、セネガルのチェブジェン、スペインのパエリアなど、それぞれの土地で得られる食材を取り入れた様々なコメ料理が食されています。JICA北海道では、世界各地で多くの人の主食となり、食文化の重要な担い手でもあるコメを継続的に生産できるようにするための支援を行っています。

 コメの生産を安定的に行うための取り組みはいろいろありますが、適時に適量の灌漑用水を得られることもその一つです。例えば、田植えから稲への成長の時期や、穂が出て実りはじめの時期には適量の灌漑を行わなければなりません。このように稲の生育に合わせた灌漑を行うには、灌漑水路を共同で利用しているそれぞれの農家が協力して水量の管理を行うことが不可欠です。JICA北海道では、課題別研修「効果的な参加型灌漑管理と水利組織の能力強化」を、日本で稲作が行われている時期に合わせて、講義と稲作現場の視察を組み合わせる形で実施しています。今年はアジアやアフリカから合計21名が参加しました。(カンボジア、東ティモール、インド、アルメニア、ウズベキスタン、ジンバブエ、ウガンダ、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、マダガスカル、マリ、セネガル、トーゴ、モザンビーク)

【灌漑現場を訪問】

この研修では、灌漑用水の管理と水利組織の役割など、効果的な灌漑はどのようにして実現できるかということについて講義を通して学んだり、実際の灌漑現場を訪問し、灌漑施設の機能について目で見て理解するほか、施設を運用する組織・人々の声などを聴きつつ、自国の状況と照らして学びの幅と深さが生まれるように随所で工夫をしています。

美唄市では、北海道で最初に築かれた灌漑用ため池である峰延2号ため池を訪問し、施設の機能と用水管理の仕組みについて学びました。また、数百年にわたる日本の伝統的灌漑用水管理の歴史と近代的灌漑システムの運用について学ぶため、長野県上田市にも足を運びました。

北海道美唄市峰延2号ため池の説明に耳を傾ける研修員

長野県上田市塩田平土地改良区で近代的灌漑施設操作の説明を受ける様子

【稲作農家の実情に関する情報交換】

途上国の灌漑技師にとって、日本の灌漑技術について学ぶことのみならず、実際に灌漑施設を利用して稲作に従事している人からの声を聴くことも大変重要です。それは、稲作含め灌漑農業という生業自体が、技術と経営、さらには地域社会の協働というように、総合的な視点からとらえなければならない取り組みであり、灌漑技師としてもそれらを備えて事業に従事することが求められるからです。

そのため、研修員は農業協同組合「JA上川中央」を訪問し、若手稲作世代である青年部の人たちと、日本や途上国で行われている灌漑稲作農業について多様な角度から意見交換を行いました。そこで話された内容は、農業経営上の農家の判断としての作物選択、種子や肥料の入手方法、国による相違点が農家に与える影響といった幅広いものになりました。研修員にとってみれば、来日して農家の人と直接会うことで初めて聞くことになった「様々な声」はとても印象深いものになったことでしょう。

JA上川中央青年部との情報/意見交換会

【地域住民との交流】

北海道旭川市では、小学校を訪問し、自国の食文化を紹介しました。灌漑稲作の技術者たちですので、お米を中心とした自国の食事の紹介が多かったのですが、その調理方法も実に様々で、さながらお国自慢となりました。

インドの研修員による食文化紹介(旭川市内学校訪問にて)

また、日本の学校では様々な学校行事がありますが、今回の訪問先では敷地に花の苗を植える植栽活動を研修員と生徒たちが共同して行いました。研修員の多くは普段農業に接することが多く、自国では野菜の苗を植えたことのある人もおり、慣れた手つきで率先して活動に参加する様子も見受けられました。

学校花壇の植栽(マリーゴールド)を一緒に行いました。研修員からは、母国では野菜の苗をこうして定植してますと指導が入りました。(旭川市内学校訪問にて)

最後にみんなで水やりを行いました。

JICAでは、来日した研修員が、日本の文化や地域の人たちと交流する機会を設け、専門知識の獲得だけではなく、交流を通じて日本のことをよく知り、心に残る日本滞在になることを期待しています。

<関連リンク>
研修員受入事業 | 日本国内での取り組み - JICA

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