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えりこの部屋|JICA四国センターの今を知る─所長×新入職員との対談で見えた「地域の力」とは?

2025.08.07

JICA四国センターは、昨年で設立50周年を迎えました。この節目を機に、所長の田村えり子と共に始まった対談企画「えりこの部屋」。第1回のゲストは、国内OJTで四国センターを訪れた新入職員の大儀さん・吉野さん。高知県本山町、愛媛県宇和島市、徳島県鳴門教育大学など、四国各地の自治体・大学・企業を訪問し、地域ならではの取り組みを間近で見てきました。

「四国センターって、実際どんなことをしているの?」という素朴な疑問から始まり、現場での学びや印象的なエピソードをざっくばらんに語り合います。四国で見えた「地域の力」とは?これからの活動にどうつながっていくのか?─そのヒントが詰まった内容です。次回以降は、異なるゲストをお迎えしながら、四国センターの魅力をさらに深掘りしていきます。

左から田村所長、大儀さん(南アジア部)、吉野さん(審査部)

左から田村所長、大儀さん(南アジア部)、吉野さん(審査部)


課題先進地域・四国で見た“夢を実現する”力

田村:「えりこの部屋」にお越しいただきありがとうございます。今回のゲストは、国内OJT(※1)で四国センターにお越しいただいているJICA新入職員の大儀さんと吉野さんです。早速ですが、お二人とも自己紹介していただいてもよろしいでしょうか?

吉野:審査部から参りました吉野匠人(よしの たくと)です。出身は神奈川県です。審査部では、主に環境アセスメントや環境社会配慮に関する審査を担当している課に配属されています。

大儀:本部から参りました南アジア部の大儀凛果(おおぎ りんか)です。出身は青森県です。海外OJT(※1)までは担当を持たないので、現時点では法人文書管理やワーキングペーパーの取りまとめを行っています。青少年赤十字の活動をきっかけに自分が社会のために何ができるのかを考えており、今回国内センターで学ばせていただける機会を得たことを光栄に思っています。

田村:神奈川県と青森県のご出身なのですね。他にも国内センターがあるなかで、四国センターのどこに関心を持って選んでいただいたのでしょうか?

大儀:各国内センターのプログラムを観た時に、四国センターは「地方×国際」をテーマに掲げていました。JICAが国内で事業を展開できるのは、地方での国際協力の理解があってこそです。「地方に国際は必要なのか?」という問いから始まって、「JICAとして何ができるのか?」までの一連のプロセスを学べると思いました。今回、高知県本山町の取り組みや、愛媛県宇和島市で行われているJICA海外協力隊派遣前訓練グローカルプログラム(以下、グローカルプログラム)の現場を視察できることがとても魅力的でした。

吉野:魅力に感じたところは2点あります。1点目は、地方の社会課題の解決にJICAとしてなにができるのかをOJTを通して考えたかったからです。2点目は、高校生の時からスペイン語を学んでいて中南米地域に関心があるので、中南米出身のJICA研修員と交流できる機会があればということで選ばせていただきました。個人的には、本場のうどんが食べたかったという本音もあります!

田村:初日からうどんをご堪能いただいていましたね。OJT期間を通して、四国の印象は変わりましたか?

大儀:変わりました。地方には課題がたくさんあるからこそJICAが介入して地方創生に結び付けたいと考えていました。しかし、今回訪れた企業や自治体の方々が、本当にエネルギッシュに活動されていることが印象的でした。むしろ、JICAの事業を利用して活性化に繋げているような印象を受けました。

吉野:大儀さんと同じく、受け入れ先の方々にエネルギーをたくさんいただきました。宇和島市や本山町の方々からは、自分たちの地域課題をどう変えていくかの熱意を感じ、可能性に満ちた地域だと思いました。今回は四国センター事業のほんの一部分しか見ていないと思いますが、今後国内センターで働くことがあれば、今回の受け入れ先で学んだ事例をどうやって広げていくかを考えていきたいです。

田村:仰る通り本当にエネルギッシュな方が多いです。四国は課題先進地域と呼ばれることが多いですが、四国のパートナーの方から「夢を実現する」という表現を教えていただきました。課題解決という見方も重要ですが、なりたい姿になるためにJICAと手を組んで事業を進めているという見方も出来ます。その他、印象に残った事業はありますか?

よそ者がもたらす新しい風──地域に生まれる変化と活力

吉野:宇和島のグローカルプログラムが印象的でした。グローカルプログラム実習生が地元の方で賑わうサロンで手話のレクチャーをしている場面を視察しました。その時に、地元の方が「若い人とコミュニケーションが生まれることで活力が生まれて、楽しく過ごすことに繋がっている」と仰っていて、私も共感しました。

愛媛県宇和島市のグローカルプログラム視察現場

愛媛県宇和島市のグローカルプログラム視察現場

田村:異なる環境の方とお話すると新たな気持ちも生まれ、元気になりますよね。グローカルプログラムがあることによって、どういうインパクトがあると感じましたか?

大儀:もともと活力があるコミュニティにグローカルプログラム実習生を受け入れていただくことで、新しい風になって町全体として動きがあるように思いました。よそ者から生まれる新しさが大事だと思いました。

田村:これからグローカルプログラム実習生のみなさんはJICA海外協力隊として開発途上国に派遣され、現地のコミュニティのなかで活動されます。宇和島市でよそ者としてコミュニティに入った経験は、開発途上国でも必ず役に立つと思います。私たちJICA職員も同じで、海外赴任した際には現地でのコミュニケーション能力、ネットワーキング能力が必要になる場面が多々あります。そういった面でも、今回の現場を直接見ることができたのは良い経験だったと思います。大儀さんが印象に残った事業も教えていただけますか?

大儀:やはり本山町の活動が印象的でした。山間地域で高齢化が課題となる町ですが、コンパクトシティで生活に必要なものが揃っていました。クラインガルテンという施設を利用した数年間のお試し移住制度や、高知県立嶺北高等学校魅力化プロジェクト等、外部からのよそ者を取り込んだ魅力的な取り組みがたくさんありました。可能性に満ちたこの町で、JICAとしてどのように貢献できるのかを考えていました。

高知県本山町の視察現場

高知県本山町の視察現場

田村:本山町の活動も魅力的ですよね。日本全体的に人口減少が進むなかで、自治体の自然人口を増やすのは難しいように思います。ただ、住んでいなくとも関わりのある関係人口や交流人口は増える見込みがあります。せっかくなので、おふたりとも四国の関係人口になっていただけるとお互い嬉しいですよね。最後に、今回の国内OJTを通して得た学びを今後どうやって生かしていきたいか教えていただけますか?

JICAとの“関わりしろ”をどう広げるか

大儀:日本の地域が抱えている課題と開発途上国が抱えている課題に共通点を感じました。今回、私たちを受け入れていただいたところはJICAの事業に理解があるパートナーの方たちです。しかし、その他にも数多くの自治体や企業が存在しており、JICAのスキームに関わりがなくアプローチできていないところまでどう手を伸ばしていけるかが課題です。相違点としては、開発途上国と違って国内パートナーとの関係はサポートできる部分に限りがあるので、JICAの関わりしろを見つけていくことが今後自分の貢献したい部分です。

田村:そうですね。私は四国センターに来る前、タイやモンゴルに赴任していましたが、案件を担当していた時と似た気持ちを持っています。もちろん、途上国でもJICAがすべての分野で協力できるわけではないので、JICAと一緒にやっていきたいと考えている省庁や組織など適当な相手先を見つけて集中的にプロジェクトを進め、それから国全体や地域全体に波及効果を高めることを海外赴任時に意識していました。まさに大儀さんが仰っていた通り、集中的にお付き合いしている自治体以外にどうやって波及効果を生み出していくかは引き続き検討が必要です。正解は1つではないと思いますので、これからも意見交換しながら考えていきたいところですよね。

吉野:今回のOJT期間中、自分のマインド面に大きな学びがありました。受け入れ先の現場で、JICAの事業は国内パートナーの技術や知識があるからこそ進めることができていると感じました。日本全体で世界にアプローチしていることを忘れないようにしたいです。配属部署との関わりとしては、環境社会配慮に関する知識をもっと国内に活用していきたいと思いました。例えば、早明浦ダムをはじめとする子どもたちの社会科見学で、住民移転の歴史を学ぶと思います。そのなかで環境への負荷に関わるガイドラインをお伝えすることはできないかと考えていました。

田村:早明浦ダムをはじめとして、吉野川を活用した四国における水資源分配の歴史を途上国のプロジェクトでも事例としてお伝えすることがあります。この開発の経験は、四国に限らず開発途上国にとって価値のある教訓が多いです。東京の本部にいると実感として湧かない面もあるかもしれないので、国内の現場を見て、国内パートナーの様々な方々と会って引き出しを増やし、開発途上国での経験に繋げてみてください。海外赴任時も色々な気づきが得られると思うので、いつか国内センターで働く機会があった際にはそれらの経験を教えていただけると 相乗効果が生まれてくると思います。今回、受け入れにあたり調整いただいた関係者の方々への感謝を忘れず、本部で業務に繋げていただけたらと思います。

今回はゲストとして新入職員をお招きした初めての対談企画でした。大儀さん、吉野さん、今回の国内OJTで経験したことを胸に引き続き頑張ってくださいね。四国から応援しています!

※1 新入職員研修の一環として、原則入構1年目に全員が国内センターで2週間程度活動する国内OJTと、開発途上国に数か月赴任する海外OJTがあります。OJTでは、JICA事業やプロジェクトの現場等で、JICA事業のステークホルダー(相手国政府、専門家、 ボランティア、コンサルタント、国際機関、NGO、民間企業等)と協働する経験や、現場の人々の生活や考え方に直接触れる機会を得ることで現場力を養成します。

関連リンク
JICA海外協力隊グローカルプログラム(派遣前型) | JICA海外協力隊
クラインガルテンもとやまの利用者募集について/本山町
嶺北高校 | 嶺北高校魅力化プロジェクト | 本山町

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