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種をまこう


2022年度 1次隊
ルワンダ共和国/理科教育
西角 祐香さん(徳島)

Muraho! Nitwa Nishikado Yuka.
Ndi umwarimu wa science. Nkoramo ishuri rya Gahima Agape.
(はじめまして! 私の名前は西角祐香と言います。理科の先生です。
Gahima Agape Secondary Schoolで働いています。)

2022年8月から2024年3月まで、アフリカのルワンダ共和国へ派遣されていました。
ルワンダ共和国の公用語は4つありますが、国民のほぼ全員が理解することができるのが、上記のキニアルワンダ語です。

「教育は種まき」と言われることがあります。ルワンダへ派遣されるまで、派遣中、そして派遣後を、種まきになぞらえて紹介します。

種をまいてくれた人

初めて協力隊を知ったのは、小学校高学年の時でした。総合的な学習の時間に、協力隊経験者の先生が、派遣国・パプアニューギニアのお話をしてくださいました。
一番不思議だったのは、甘くない緑色のバナナを食べる、ということ。「私の知っている【外国】とちがう!」と、世界にはどんな国があるのか、興味をもつようになりました。

土を耕し、水をくれた人

その後進学した高校で、アフガニスタンでJICA専門家として活躍されている先生が授業をしてくださる機会がありました。「ペットボトルを使って、ろ過の実験をしてみましょう。」と言われ、びっくりしました。そして、「生まれるところがちがえば、こんなに学ぶ環境がちがうのか」と、もやっとしました。

この「もやっと」が、進路選択の決め手となり、「日本で生まれた自分だからこそできることをやってみよう」と、前述の2人の先生と同じ「理科の先生」を目指すことにしました。そして「いつか途上国で理科の授業をやってみたい」と、夢をもつようになりました。

友だちができたバナナの名産地

派遣されたのは、ルワンダ共和国です。
四国の1.4倍ほどの大きさで、形もよく似ています。
(地図はTHE TRUE SIZE OF..より。青が四国、緑がルワンダ)
ルワンダには30の郡があり、私は東部県Ngoma郡の郡庁所在Kibungoに派遣されることになりました。

Ngoma郡は、国内でも有数の青バナナの生産地です。道で、マーケットで、そして学校の農園でも見つけることができます。「本当に緑色のバナナがあるんだなぁ」と感激しました。「日本では青バナナは珍しい。小学生の時に、青バナナのお話を聞いて、海外に興味をもつようになった。好きな給食No.1だ。」と伝えると、派遣先の生徒や先生はもちろん、近所の人とも、おしゃべりに花が咲きました。

どこの畑を耕そう?

私の活動先は、私立中高等学校でした。全校生徒200名ほどで、隣接校(小中高+専門学校で、全校生徒1500名ほど)と比べると規模が小さく、よく生徒と話をすることができました。

話していると、英語(ルワンダの教育言語)に苦手意識を感じていたり、勉強への意欲を保つことに苦労していたりする生徒がとても多いことが分かりました。「とりあえず、理科の実験はしたい!でも、具体的に何をしたいかは思いつかない。」と話す生徒もいました。

同僚は、1日10コマのうち、空き時間は1~2コマしかなく、その空いた時間も、小テストの採点をしたり生徒の相談に乗ったりしています。生徒にも、先生にも関われるような活動をしたいと考えました。

同僚とともに耕す

まず、理科室の備品を整理し、使われている教科書を読むことから始めました。「こんな実験器具を見つけた。」と話しかけたり、同僚から「こんなことをやってみたいんだけど、どう?」と提案されたり。実験や観察を取り入れた授業をする前には、忙しい合間を縫って、予備実験をする時間をとってくれました。

予備実験をすることで、同僚は自信をもって生徒に手順を教えられるようになりました。また時間配分のめどが立ち、演示だけでなく、生徒実験の機会も増えました。

どんどん芽が出る!

授業で実験をすると、生徒は「もっとやってみたい!」と意欲を見せるようになりました。しかしカリキュラムが多く、毎回実験を取り入れた授業ができるほどの時間的ゆとりがありません。どうしようか悩んでいると、近所の先輩隊員が「生徒が生徒を教える実験教室(Skill Academy)」に力を入れていると知りました。

そのアイディアを、活動先の学校で実践してみることにしました。「やってみたい」という生徒(4人程度)に実験のやり方を教え、その生徒が、実験教室の参加希望者(学年のほぼすべてが参加しました。)を募り、彼らに個別で教えます。指導役になる生徒は何度も同じ実験をすることができ、さらに生徒同士だと小さな疑問点も気軽に尋ねることができ、理解が深まります。

こんな肥料はどうだろう

徳島県の学校では、「スクールワイドPBS」が取り入れられています。これは、「学校全体で取り組むポジティブな行動支援(School-wide Positive Behavior Support、以下PBS)」と言われるもので、望ましい行動を増やしていくことを目的としています。

今回の自主的な実験教室の取り組みは、まさに「望ましい行動」そのもの。そこでCertification(修了証書)を発行し、努力の過程が認められる場面を作りました。
校長先生がPBSへの理解を示してくださり、保護者の前で、生徒一人ひとりに授与する時間を設定してくれました。保護者も、「よく頑張っているね」「次もがんばりなさい」と励ます声をかけてくれました。

新鮮な空気にふれてみよう

全校生徒の9割が寮で生活をしています。「スマートフォンは持ち込み禁止、TVは週末だけ」なので、学期中は新しい情報に触れる機会が少ない生活となります。そこで、徳島県内外の中学校とオンライン交流会や手紙・ビデオレターの交換をすることにしました。ルワンダの中学生と日本の中学生が交流するためには、英語を使うしかありません。普段、現地語で私に話しかけていた生徒も、一生懸命英語を話していました。

この3人の生徒は、日本と交流するときに中心となっていた生徒です。折り紙(かぶと)にルワンダの伝統工芸Imigongoをあしらうなど、自分たちの気持ちを表現する方法を工夫していました。

印象的だったエピソードに、「いじめ」があります。山口県の中学生が「日本の学校には「いじめ」があります。つらい思いをして学校へ行けない生徒、命を絶つ生徒がいます。ルワンダの学校では、どうですか。」と質問をしました。

ルワンダの生徒は「みんな仲良くやっているよ!」と肩を寄せ合って、カメラに笑顔を向けていました。同僚は、「「いじめ」の話は、幼稚園のこと?ルワンダの中学校で、無視をしたり、意地悪をしたりするのは、見たことないわ。ルワンダ大虐殺の直後はぎこちない雰囲気だったこともあるようだけれど、今はないわ。」と驚いていました。

これからどんな花が咲くだろう

活動先では、3回ゲストティーチャーをお招きしました。近所のテイラーさんには「ルワンダの人がルワンダのためにできること」を、伝統工芸Imigongoの職人さんには「残していくものがあるという喜びと責任」、Ziplineの職員さんには「人や社会の役に立つために、最新の技術を使うこと」を話していただきました。

回を追うごとに、生徒が将来の夢を話してくれるようになりました。
Rwema Davidくんの夢は、絵を描く人になることです。図書室にある本から絵や写真を選び、ボールペン1本で模写をします。
好きなことに夢中なDavidくんの笑顔は輝いています。

私は、これまで出会ったたくさんの人のおかげで、「いつか途上国で理科の授業をやってみたい」という夢を叶えることができました。

今度は、私が応援する番。ひとつでも多く、笑顔の花が咲くよう、自分にできることをやっていきたいと思います。

あなたの夢は何ですか。