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【インドネシア国別研修】地震・津波の情報伝達と啓発/日本の防災知見に触れ地域での取り組みを知る

2023.12.21

インドネシアは火山帯に位置する島国であることから、日本と同様に多様な自然災害が頻発する国のひとつです。地震や津波、火山噴火、洪水など多くの災害リスクがある上、近年の気候変動によって災害の頻発化・激甚化が懸念され対策が急がれています。

頻発する災害から身を守るために、災害情報の適切な伝達網を構築

インドネシアは、複数の岩盤プレートの境界上に位置し、100を超える火山があることから大規模な地震火山活動やそれに伴う津波災害が頻発しています。そのため、インドネシア国気象気候地球物理庁(BMKG)は津波早期警報アラート(InaTEWS)を開発し、地震や津波警報の発信体制の整備を進め、観測網を強化してきました。しかし、2018年に相次いだ地震津波災害において「津波警報が発令されない」「発令された津波警報の精度が低い」「住民に警報が届かない」などの事案発生を受け、地震情報や津波警報の精度や信頼性、即時性の改善を目指してJICAの技術協力プロジェクトの現地活動が2022年から3年計画でスタートしています。

情報伝達の手法を学び、防災啓発を強化するため来日研修を実施

本プロジェクトの一環として、『地震・津波の情報伝達と啓発』をテーマに2023年8月27日〜9月8日までの10日間、来日研修が開催されました。参加したのは、BMKGの地震津波センター長、地震・津波軽減部および地震情報課の職員合わせて12名です。研修では、災害情報をわかりやすく伝える気象庁の取り組みや、自治体が実施する防災訓練・自主防災組織、さらに防災啓発にかかる施設の事例を学び、防災伝達訓練や啓発教材作成の参考とすることを目標としています。

「政府としてできることには限界があり、その中で各人がそれぞれリスクを察知して動くことができるようにしたい。そのような社会を作っていくためにはどのようにしたらいいか、日本で学びたい」と研修員のリーダーであるスーチーさんが学びの目標を語ります。

災害時の日本における気象庁と地方行政の役割を知る

研修は気象庁での講義から始まりました。まずは、防災にまつわる情報伝達と啓発についての気象庁の役割、そして実際の情報伝達フローや緊急地震速報について、さらに災害の正しい情報を伝えるための広報や啓発資料の作成方法など具体的な内容について講義を受けました。災害関連機関として法令で情報伝達にかかわる役割が明確になっていること、災害情報は受け手のニーズや理解度に応じて発出されていることなどが説明されました。

その後、研修員は仙台へ移動し、防災の日に合わせて宮城県各地で行われた防災訓練を見学。仙台駅で行われた帰宅困難者対応訓練では実際に訓練に参加し、避難者として避難場所まで徒歩で移動する体験も。運営の様子も間近で見学できたことで、安全確保の方法や運営のあり方など学びの多いものとなったようです。さらに宮城県総合防災訓練の視察では、訓練の方法や関係機関の組織化された取り組みに驚きの声があがっていました。

被災地の防災知見をふんだんに盛り込んだ研修講義

研修は他にも、NHKの災害時報道や、観光地や仙台空港の津波対策、自主防災組織の運営や自治体の自主防災組織への支援についてなど、市民に向けた情報発信から住民個人レベルの防災活動に至るまで、役割によって細分化された日本のさまざまな防災活動についての講義が設けられました。中でも印象に残ったとの声が多かったのは、東北大学災害科学研究所の今村文彦教授による「防災教育・災害伝承」をテーマにした講義。一般の人に防災をいかに啓発するか、リスクを軽減するためにどのように伝えていくかなど、被災地の経験に基づいた最新の防災科学の知見に触れることができました。

研修後のアンケートでは、「この研修で得た知識や経験は、自分の仕事にとても役立つ」に研修員全員が5段階の5をつけるなど、満足度の大変高いものとなったようです。また、研修員からは「日本の地方行政が独自で訓練を実施したり、インフラを整備したりしていることに驚いた、素晴らしい」というコメントが折々で聞かれました。

今村教授の講義を熱心に受講する研修員の様子

石巻市総合福祉会館で子供たちの作ったハザードマップを見学

日本の取り組みを参考に具体的な長期計画を立案

研修の仕上げには、研修員が2チームに分かれて帰国後の事業計画をプレゼンします。「メディアと覚書を交わして、災害情報を迅速に優先的に放送する」「ハザードマップに震度の情報や情報伝達フロー等、必要な情報を含んだ包括的なハザードマップを作製する」「気象業務支援センターのような民間との連携や、民間に情報を直接提供する組織の設立を目指す」など、長期的な計画が立案されました。

短期間の研修でしたが、研修員たちが日本で直接見聞きし肌で感じた取り組みはインドネシアでの今後の活動の道標になりそうです。ぜひインドネシアに合った方法で進められることを期待します。

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