共に学び合う、津波防災・伝承 ~釜石市、大槌町、東松島市などにインドネシア バンダ・アチェ市の中学校、アチェ津波博物館の関係者が来訪

2024.05.30

2004年にスマトラ沖地震で甚大な被害を受けたバンダ・アチェ市…そこから20年経過する今、防災教育に関するノウハウや内容、持続性等に課題を抱えており、2009年に開館したアチェ津波博物館も現在、活用法が模索されています。
そこで、JICA草の根技術協力事業「バンダ・アチェ市における地域住民参加型津波防災活動の導入プロジェクト」が釜石市と地域住民や学校教育、産官学連携で防災教育や研修事業のノウハウがある一般社団法人根浜MIND(以下、(一社)根浜MIND)との協働によって実施されています。
2024年5月、岩手県や宮城県の防災教育を学ぶため、バンダ・アチェ市のモデル中学校教諭とアチェ津波博物館職員ら研修員17名が釜石市や大槌町、東松島市などを訪れました。

いのちをつなぐ未来館で

アチェの子どもたちにも体験させたい釜石の避難訓練

インドネシア バンダ・アチェからの研修員は、被災時に釜石東中学校2年生で、現在、鵜住居町の「いのちをつなぐ未来館」職員である川崎杏樹氏から、被災時における地域の様子や教諭の避難判断など生の声を聴き、実際の避難ルートをたどりながら説明を受けました。また、遡上する津波の平均速度とされる時速36kmのワゴン車と並走して津波の速さを実感したり、地震・津波が発災した場合に実際に何を持ち、どのように逃げるのか避難訓練模擬体験をしたりと、ワークショップや振り返りでは真剣に、そして、時には楽しみなら学ぶことの大切さを体験しました。
避難訓練模擬体験やワークショップを経験した研修員からは「中学生が自ら判断して避難したことに感銘を受けた」、「学校での防災教育の重要性を感じた」、「アチェに帰ったら子どもたちにも体験させたい」と意欲のある言葉が飛び交いました。
小野共釜石市長も激励に訪れ、インドネシアと釜石市の繋がりを再確認し、研修員からも笑顔が溢れました。

遡上する津波の平均速度とされる時速36kmのワゴン車と並走して津波の速さを実感

小野釜石市長も激励に訪れインドネシアと釜石市の繋がりを再確認

生徒それぞれの主体性に応じた防災の取組みの大切さ学ぶ

釜石市立釜石東中学校は、2008年に文科省の防災教育協力校指定を受け、東日本大震災以前から防災教育への取組みをスタートしていました。同校の校長先生からは、カリキュラムやプログラムを決めてその通りに実践することが大切なのではなく、生徒や地域とやり取りしてアップデートしていくことが大事であることが語られ、バンダ・アチェの皆さんも腑に落ちたようです。
防災教育は文科省からの指導でどの学校もカリキュラムに入れることになっており、全体計画は学校全体で作成され、各教科授業においても各教員が創意工夫して関連事項を適時適切に取り入れています。例えば同校では、地震津波のメカニズムについては理科や社会で学び、避難訓練の前には津波の速度を数学で取り扱い、また避難経路を示す看板づくりを美術で取り入れるなどタイムリーに実践しているそうです。さらに総合学習の一環でも、防災まち歩きを行い地域の危険個所を確認して歩きQRコードを読み込むと中学生の作った資料を見られる等、中学校が地域防災に関われるような仕組みが作られています。その他、担架の使い方など救命救急の方法、家族構成を踏まえて防災リュックの中身を検討する、仮設トイレ設営、世界の風水害についての学習など、多岐にわたる教科内外での具体例や、防災まち歩きについての地域との協働など、たくさんの質問が出され、それに対し同校校長からはひとつひとつ丁寧に回答して頂きました。

釜石東中学校で真剣に具体的なカリキュラム、授業実践などについて聴く

大槌高校復興研究会の皆さんとの約半年ぶりの再会

岩手県立大槌高等学校では、副校長先生や復興研究会の顧問の先生と意見交換を行いました。大槌高校復興研究会の皆さんは、2023年12月に草の根技術協力事業の現地渡航専門家派遣によりバンダ・アチェに渡航しており、今回本邦研修で来日したモデル校も訪れ、防災に関する授業を行った経験があります。同研究会の皆さんにとっては約半年ぶりの再会となり、また、同会の皆さんが大槌町を紹介してくれました。
同校では、震災当時行った震災復旧、復興について苦い反省点も含めて語っていただきました。同校は震災初日から避難所となったものの、指定された避難所ではなかったため特段備蓄もしておらず、地形的にラジオの電波も入らず、食料も電気水道もなく、本当の意味で孤立をしました。そのような中で高校生と教員が布団毛布の運搬、トイレ用の水くみ、交通整理、炊き出し手伝い等々具体的に行ってきたこと、また混乱はあったものの、生徒が一生懸命対応する姿に文句を言う住民はほとんどいなかったそうです。   
その当時の教訓を活かし、学校は避難所にもなり得るため避難所を運営する訓練も必要であること、災害後は生徒の心のケアも重要であること、教育に携わる者は常に危機意識を持たないといけない等、訓練の在り方についても伝えられました。
復興研究会顧問教員からは、同研究会生徒が主体的に取り組んできている定点観測について主に説明とともに、「防災を学び、教訓を語り・継いでいく」ことの大切さが伝えられました。バンダ・アチェの皆さんからも定点観測地点の選定について等質問があり、見つかった写真や大きな被害のあった地域などから主に生徒によって地点が選ばれている等の回答を得て、具体的なバンダ・アチェでの地域での協働のヒントになりそうです。

大槌高校のみなさんと

大槌高校復興研究会の皆さんによる大槌町案内

東北とインドネシアとの共創による津波防災へのさらなる意識向上へ

釜石での研修後は陸前高田市「いわてTSUNAMIメモリアル」を見学し、その後宮城県入りし、石巻市の震災遺構である大川小学校も訪問しました。東松島市では、バンダ・アチェ市に渡航経験のある方と再会し、共に研修の振り返りや意見交換を行うなど盛りだくさんの研修内容となりましたが、訪れた皆さんの真剣な表情や笑顔がとても印象的でした。
今後は、(一社)根浜MINDのメンバーがバンダ・アチェを訪れ、実際に学校や地域で実施できるように現地の状況に沿った実践的なサポートを行います。本プロジェクトは2025年の夏まで続きます。インドネシア バンダ・アチェのモデル中学校、アチェ津波博物館の皆さんが、日本とインドネシアで共に学び合った経験を活かして、インドネシア/バンダ・アチェの地域住民の津波防災のさらなる意識向上に貢献してくれることと信じています。

東松島市キボッチャにて

アチェ渡航経験のある伊東先生とルカヤ先生の再会

◆関連リンク

・根浜MINDによる草の根技術協力事業概要:
https://www.jica.go.jp/Resource/partner/kusanone/chiiki/ku57pq00000x9trj-att/ind_25_c.pdf
・防災・復興支援特集記事:
【防災・復興支援】根浜MINDに見る協働の力~防災分野のコレクティブインパクト創出を目指して~ | 日本での取り組み - JICA
・大槌高校によるバンダ・アチェでの防災教育の様子:
https://www.facebook.com/100064820075940/posts/pfbid02mpxELwtqAdmL8xRm4isAiEZiBjd2mmctaQqYkf6vPuppBWW6dQYcLHy3zXfznEVil/?app=fbl

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