【国別研修】トルコ上下水道地震対策研修/事前に備える大切さとよりよい復興を学ぶ
2026.01.16
日本と並び世界有数の地震頻発国として知られるトルコでは、2023年2月6日にトルコ南東部を震源としたマグニチュード7.8の大地震が発生し、トルコ、シリアあわせて5.5万人以上の犠牲者を出しました。住宅や上下水道等の基盤インフラも広範にわたり被害を受け、いまだに復興の道半ばにあります。日本は、発災直後の国際緊急援助隊の派遣や緊急支援物資の供与、南東部被災地に対する無償資金協力、技術協力などさまざまな協力を実施してきました。さらに被害のあった施設の修復や新設にかかる震災復興支援協力のための円借款事業も実施(2024年4月に円借款貸付契約を調印)することになり、その附帯事業としてトルコ政府からの要望により、上下水道の地震対策に特化した国別研修を実施する運びとなりました。
トルコは、2023年2月6日の大地震によって5万人以上の犠牲者を出し、住宅はもちろん上下水道などの公共インフラも広範に被害を受けました。被災地域が11県にまたがる大規模災害であり、約3年が経とうとする現在も復興の最中にあります。日本と同様に地震の多い国として知られるトルコにとって、公共インフラの災害対策の必然性は高まっています。
今回は、日本独自の地震対策技術や復興プロセスの知見を学ぶ機会として、トルコ被災地の地方自治体職員と、トルコ国内の地方自治体に対してインフラ整備の融資や技術的支援を行うイルラー銀行の技術者を対象に、講義や施設視察および討議を通した実践的なプログラムを提供するためのトルコ向け国別研修「上下水道地震対策研修」を2025年11月3日〜14日の日程で行いました。
国土交通省から講義をしていただきました
来日した研修員は9名。研修は東京からスタートし、国土交通省、日本水道協会や日本下水道協会の担当者から日本の制度や政策を中心に学びました。特に国土強靭化計画に基づく耐震化の計画や基準、また事前防災投資の重要性について説明を受け、理解を深めました。日本とトルコでは、行政システムや自治体の役割が異なりますが、発災時にいかに迅速かつスムーズな連携を図るかが、共通の課題として認識されました。その後、仙台に移動し、仙台市水道局および建設局(下水道担当部門)が東日本大震災以前から上下水道システムにどのような対策を講じていたか、さらに震災後いかに復旧・復興を進めたか、その具体的なプロセスを学びました。
本研修は、「地震が発生した際の被害をいかに最小限に抑えるか(事前防災)」と「いかに迅速に上下水道の機能を復旧させるか(応急対応、復旧・復興)」の二軸がテーマ。仙台市水道局と建設局が中心となり、東日本大震災の教訓から得られた事前防災の知見、そして「Build Back Better(よりよい復興)」[1]の理念に基づいた実践的な取り組みが伝えられました。
[1] 2015年3月に仙台市で開催された「第3回国連防災世界会議」の成果文書である「仙台防災枠組2015-2030」の中に示された概念であり、災害の復旧・再建・復興について発災前より準備をし、災害リスク削減を開発施策に取り込むことなどを指す言葉。
日本水道協会の講義に耳を傾ける研修員たち
地球環境部防災グループから事前防災投資について学びました
研修では、仙台市の上下水道施設や管路の耐震化、アセットマネジメントの一元管理方法、事業継続計画(BCP)や災害対応について学びました。また、発災時に損傷しやすい水道管の継ぎ手部分の耐震化技術について、メーカー工場での視察を行い、研修員から高い関心が寄せられました。特に研修員の印象に残った講義として挙げられたのは、日本とトルコの自治体職員たちが震災時に直面した葛藤やそれぞれの想いを共有した対話型の講義です。講義では、「勤務中に災害が起こった際、上司として部下を「被災した家族の元に帰すか、否か」など、必ずしもどちらかが正解とは言えない、二択の設問が用意され、当時の決断、そして今その選択をどのように受け止めているかについて、活発な意見交換がおこなわれ、双方にとって大変有意義な時間となりました。
研修員からは「仙台市でのプレゼンテーションや対話型の授業は、創造的で学びが多かった。トルコ語通訳も非常に的確で、講義で紹介された設備を現地で直接見学できたことで、より理解が深まった」という声や「復興における仙台市や関連省庁の取り組みを研修の主要テーマとしたことは非常に意義深く、帰国後にトルコ国における地震リスク管理やアセットマネジメントの改善に、学んだ知見を活かしていきたい」との感想が寄せられ、研修全体の満足度は高いものとなりました。
仙台市水道局にて緊急時給水システムのひとつ非常用飲料水貯水槽を見学
仮説水槽の組み立ての実演では、専門的な質問・議論が飛び交いました
南蒲生浄化センターの一部施設の壁面は津波被害を受けた状態で遺されています
トルコにおける断水時の対応は給水車が主流であるため、研修員たちは、通常時は管路の一部として水が通り、緊急時には遮断弁によって水道水が蓄えられる日本の非常用飲料水貯水槽の仕組みに、高い関心を示しました。また本研修を経て、重要施設に接続する水道・下水道管路から優先的に耐震化を図り、段階的に緊急給水施設の整備を進めていくことの重要性が認識されました。
研修員が最終日に発表したアクションプランには、日本のアセットマネジメントの手法を参考に、インフラ情報をデジタル管理に移行する計画なども盛り込まれました。
委託先である八千代エンジニヤリングの田中麻衣さんは、「地震が多いトルコでは、すでに防災の取り組みに関する下地があるため、全員が意欲的に取り組んでおり、専門性の高い質問が矢継ぎ早になされていたことが印象的です。研修員らの垣根なくワンチームで学ぶ熱量の高さは素晴らしいものでした。帰国後も研修員の所属組織同士が連携し、他の自治体も巻き込みながら、事前防災への投資や取り組みを推進していただきたいです」と今後の展開に期待を寄せました。
ダクタイル耐震管の見学では株式会社クボタ京葉工場を訪問
評価会の後、修了証書を授与されました
研修休日には震災遺構の門脇小学校を訪問
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