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「農」への熱い思いを胸に!高校生たちがJICA筑波で国際協力を体験!

2025年8月25日、昨年に続き2回目となる「JICA筑波 農業高校生国際協力実体験プログラム」が開催されました。北海道から沖縄まで、全国12校から35名の“農”に思いを持つ高校生たちがJICA筑波に集結しました。

今回のテーマは「『農』の力で未来を拓く、世界への第一歩!」。同世代の仲間や、JICA筑波で稲作を学ぶアフリカ出身の研修員との学び合い、JICA海外協力隊になりきるワークショップなどを通じて、参加者は世界の農業の現状や課題への理解を深めました。

また、「農業」という専門性を生かして、課題解決に向けて自分たちに何ができるか、どのような行動につなげられるかを考える機会となりました。さらに、「農業×国際協力」の現場で活躍する人々との交流を通じて、農業の可能性に触れ、進路やキャリアについても視野を広げました。
当日の様子をご紹介します。

プログラムの目的

•農業を学ぶ高校生が、農業・農村開発分野での国際協力事業やキャリアについて理解を深める。
•JICA研修員との交流を通じて、開発途上国の農業課題やキャリア形成への関心を高める。
•自分たちの専門性を活かして国際協力にどう関われるかを考え、行動につなげる。
•農業に関わる生徒・教員同士のつながりを広げる。

実施概要

•日時:2025年8月25日(月)9:40〜17:00
•場所:JICA筑波(茨城県つくば市高野台3-6)
•対象:農業高校・普通高校農業科に在籍する高校生、または農業に関心のある高校生
•参加人数:35名
•参加校(12校): 岩瀬日本大学高等学校、沖縄県立中部農林高等学校、栃木県立宇都宮白楊高等学校、静岡県立下田高等学校、筑波大学附属坂戸高等学校、都立園芸高等学校、北海道旭川農業高等学校、北海道ニセコ高等学校、三重県久居農林高等学校、三重県立相可高等学校、茨城県立水戸農業高等学校、宮城県農業高等学校(五十音順)

●アイスブレーキング
開会式ではJICA筑波の高橋所長による講話の後、グループで「私の学校のここがすごい!」「今の気持ち」などを共有し、さらに全体で「サイレント自己紹介」を実施。言葉を使わずに身振り手振りで自己紹介を行うユニークな活動に、会場は笑顔や笑い声に包まれました。

●稲作を学ぶアフリカ出身の研修員との交流① ディスカッション
続いて、稲作を学ぶアフリカ出身のJICA研修員とグループに分かれて交流しました。高校生たちは、研修員の出身国の国旗を手に温かく迎え入れ、世界地図を使って国の位置を確認したあと、高校生は準備した自己紹介や学校紹介を行い、研修員は自国の農業の特色や課題について紹介し、意見を交わしました。最初は緊張した様子もあった高校生達でしたが、通訳を介しながらも、研修員の英語を理解しようと真剣に耳を傾け、会話に挑戦する姿が多く見られました。

●稲作を学ぶアフリカ出身の研修員との交流② 稲の収量サンプリング調査
ディスカッションでお互いの取り組みについて理解を深めた後は、研修員たちが各国の稲作の課題解決のために実験を行っている田んぼに行き、収量を調査するための1㎡の円を実際に紐と棒を用いて描き、その範囲に生えている稲を刈り取る作業に挑戦しました。初めての方法に最初は戸惑う高校生もいましたが、研修員の動きを真似ながら理解を深め、作業が進むにつれて笑顔と交流が自然と生まれていきました。「農」を通した交流は、研修員たちにとっても充実した楽しい時間になったようです!

●「国際協力」の分野で働くJICA筑波スタッフや海外協力隊経験者とランチ交流会!
昼食にはアフリカのお米「NERICA」を使用したお弁当を味わいながら、国際協力に携わるJICA職員や海外協力隊経験者との交流を深めました。高校生は、専門分野を生かした様々な仕事があること、またそのやりがい、多様な進路や可能性について理解を深めました。普段の生活では得られない知識や経験を共有できる貴重な時間となりました。

●キャリア座談会~農業×国際協力の分野で活躍する先輩達と語らおう!~
ランチ交流会の後は、農業×国際協力の分野で活躍する4名の先輩が登壇し、キャリア座談会を実施しました。異なるキャリアを歩んできた登壇者が、高校生の質問に答えながら、自身の経験をもとに熱く語ってくれました。登壇者の1人である山崎さんは「自分の専門性を高め、自分の点(経験)をどう線にしていくのかが大事」と伝え、農業に関心を持ったきっかけや現在に至るまでの歩みを紹介しました。高校生たちは真剣な眼差しで耳を傾け、積極的に質問を投げかけていました。同じように農業を学び、世界で活躍する先輩の話は、高校生にとって将来を考える大きなヒントとなったようです。

【参加講師(敬称略)】

・佐藤 利春(岩手県立花巻農業高等学校卒/JICA海外協力隊スリランカ食品加工/パキスタンJICA専門家/JICA草の根技協「ネパール国農業高校教育強化サブマネージャー/現・国際理解教育ファシリテーター)
・丸山 順平(都立農芸高等学校卒/東京農業大学国際農業開発学科卒/JICA海外協力隊カメルーン野菜栽培/現・一般社団法人 海外農業開発教育協会)
・浅井 英利(現・国際農林水産業研究センター 主任研究員)
・山崎 るうな(JICA海外協力隊ウガンダ食用作物・稲作栽培/現・JICA筑波 研修指導者)

●ワークショップ「もしJICA海外協力隊になったら」
続いて行われたワークショップでは、高校生が架空の国「バナナ国」の「バナバナ市」に農業隊員として派遣されるという設定で、現地の課題に対する活動計画をグループごとに考案しました。高校生には、派遣要請理由や背景、現地の農業の状況が記載された「JICA海外協力隊 要請シート」や、村長、農家、村の若者たち等の様々な関係者の声が書かれた「インタビューシート」が配布されました。課題となっている原因は何なのか、どのような取り組みが必要なのか、自分達に出来ることは何か…、現地の人たちに思いを馳せ、悩みながらも、各グループ、一人一人が学校で学んでいる作物栽培や農業の知識、経験やアイデアを集結させ、活動計画を完成させました。
技術的からのアプローチだけではなく、ジェンダーや家庭環境の視点から課題解決を考察するグループもあり、高校生たちの豊かな発想力と多角的な視点に驚かされました。

最後に、各グループが考えた活動計画を発表。各グループのファシリテーションを務めた協力隊経験者の先輩やJICA筑波スタッフからフィードバックやあたたかい応援の言葉が送られました。

●ふりかえりと修了証授与
プログラムの最後には、各テーブルで「印象に残ったこと」「今の気持ち、今後取り組みたいこと」について振り返りを行いました。このプログラムだから出会うことが出来た全国の仲間と語り合えたことへの喜び、農業の学びや思いの可能性に気づき視野が広がったこと、専門性を深めるために語学や農業の勉強をさらに頑張りたい、国際協力やJICA海外協力隊への関心が高まった!など、多くの前向きな声が聞かれました。また、来年もこのプログラムを続けてほしいと伝えてくれる生徒の声に、プログラムに関わるスタッフも、非常にうれしく思いました。
全てのプログラムを終えた高校生全員に修了証が授与され、達成感と自信に満ちた表情が印象的でした。

プログラム開始時には初めての経験に戸惑う様子もあった高校生でしたが、新しい体験や出会いに自ら飛び込んでいき、生き生きと交流や発表を行っている姿がとても印象的でした。私たちも農業を学ぶ全国の高校生が持つ能力の高さと知識の深さ、豊かな発想力から気づきや学びをたくさん頂きました。

参加してくださった高校生や先生方、そして座談会やワークショップに参加してくださった講師の皆様、本当にありがとうございました!

【参加者からの声】
生徒
・他校の生徒やアフリカの方々と交流して自分ももっと頑張ろうという気持ちになった!
・数えきれないほどの学びを得て、「楽しかった!」と心から思える1日でした。
・同じような興味を持った農業高校の生徒と関わることができてよかった。他校の取り組みを知り良い刺激になりました。

教員
・英語紹介という点でハードルが高く不安でしたが、四苦八苦しながら話している生徒の姿を見てとても嬉しく思いました。
・普段ではできない経験が良い刺激になり、他校の生徒との交流を通して意欲の向上に繋がったと思う。
・特に開発途上国の農業事情や元協力隊の実体験の話は普段では聞くことのできないものなので、視野がとても広がったと思う。

(参考)
<沖縄センターHP>
沖縄から参加した沖縄県立中部農林高等学校の感想やこれからをより詳しく紹介しています。
沖縄の高校生がJICA筑波 農業高校生 国際協力実体験プログラムへ参加! | 日本国内での取り組み - JICA