【インターンが伝える研修】地熱開発における投資促進

2023.09.28

2023年8月21日(月)~8月28日(月)の1週間、JICA横浜センターにて「地熱開発における投資促進」の研修が行われました。コロンビア、エチオピア、グレナダ、インドネシア、ケニア、ニカラグアから計7名の研修員がJICA横浜センターを訪れ、地熱開発プロジェクトに関する討議や箱根への視察に参加しました。

地熱発電とは?

火山の近くで井戸を掘り、マグマによって高温になった高温/高圧の水や蒸気(=地熱流体)を取り出し、地熱流体の力で発電をする方法を地熱発電と呼びます。地熱発電によって排出されるCO2や汚染物質はほぼゼロで、地球に優しく、脱炭素社会実現に効果的なエネルギーであるといえます。同じ再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電よりも時間や天候条件に左右されにくく、24時間安定的にエネルギーを供給できるという利点があります。

地熱発電は、資源のある限られた国しか利用することができませんが、日本にも、今回研修に参加した国々にも発電に利用可能な地熱資源があり、さらなる地熱開発の推進に十分なポテンシャルがあります。

日本の化石燃料への依存度は2021年度時点で83.2%[i]と非常に高い状態であり、自然資源を活用したカーボンニュートラル(=二酸化炭素の排出量と吸収量を等しくすること)への転換を進めています。安定供給が可能な地熱発電は日本にぴったりの発電法ともいえますが、2019年度時点で全国の電力需要のうち0.2%程度[ii]と、資源を活用しきれているとはいえません。また、世界的に見てもエネルギーの中で地熱発電が占める割合は、アフリカで3%、アジア・中南米でわずか1%程度と、非常に低いという現状があります。

地熱開発がなかなか進まない背景の一つに、設備投資コストの高さによる、資金調達の難しさがあります。そこで本研修では、財務省などの公的な金融機関で地熱発電の投資プロジェクトに関わった経験を持つ、投資を促す立場の方々にアプローチし、「どのようにしてお金を集めるか」をテーマに6日間のプロジェクトが行われました。

本研修の説明

初日から、フィリピンでの民間資金を導入した地熱開発の事例について講義が行われました。フィリピンの講師による講義では、事業の説明、法律や自治体との調整、独自の工夫について紹介され、メカニズムや各ステークホルダーに関して積極的に意見や質問が飛び交っていました。IDB(アメリカ投資銀行)・AfDB(アフリカ開発銀行)などからもアドバイザーが参加し、プロジェクトの計画側、「お金を出す側」の視点も交えた討議となりました。

大分県で行われている地熱発電を利用し、グリーン水素を製造するプロジェクトについて、エネルギー開発事業に携わる日本企業からの講義もありました。水素はCO2を排出しないエネルギーとして注目されていますが、その中でもこのグリーン水素は製造過程でもCO2を発生させない、完全にクリーンなエネルギーといえます。地熱開発と同時にさらに環境に優しいエネルギーの生産/導入を目指すこの取り組みに対しても、グローバルな視点から議論が展開されました。

8月25日には、箱根・大涌谷に視察に向かい、発電施設や資金調達について、箱根プリンスホテルの方に説明していただきました。ここでも、主に地域の関係者とのコミュニケーションについて、研修員だけでなく講師からも質問が相次ぎました。視察の後は、ロープウェイに乗って大涌谷を観光しました。研修員は写真を撮ったりアイスクリームを食べたりと、各々とても楽しんでいる様子でした。ロープウェイに初めて乗った方も多かったようで、壮大な大涌谷の景色に皆さん大興奮でした!

最終日には、研修員が自国に帰った後の行動計画(アクションプラン)の発表がありました。どれも本研修での理論が活かされた、具体的で興味深い計画でした。

討議の様子。即座にフィードバックや意見が飛び交いました!

あとがき

本研修に同行させていただきました、インターンの深川真優です。今回が初めての研修への同行でしたが、地熱発電の最先端の情報や議論に触れることができたとともに、JICAの研修の精神についても知ることができた、貴重な経験となりました。

最も印象的だったのは、意見交換が非常に活発であったことです。自国の現状や課題と結びつけ、統計の詳細や解決策についての深堀を次々にしていき、多くの実りのある議論が毎回行われていたと感じました。一部の方だけでなく、全員が積極的に様々な情報や視点を得ようとする姿勢が初日から最終日まで一貫していたことも、新鮮に映りました。

研修への同行前に「研修員の方々は自分の国をよくしようという思いが強い」と聞いていましたが、それを実感し、彼らが自国に戻ってから様々な地熱開発プロジェクトのためにリーダーシップを発揮し、プロジェクトが実現されていくことが容易に想像できました。

最初は、技術の講義ではなく資金調達に焦点を置いたことはユニークな視点だと思っていました。しかし、JICAや国際機関の資金に頼らず、現地の人の力でプロジェクトを実行することを最終的な国際協力のゴールと設定し、それに向かうパートナーとしてJICAが日本の持つノウハウや情報獲得の機会を提供するという形は、JICAの他事業にも共通するJICAの精神だと知ることができました。

今まで海外の方と接する機会は今までほとんどありませんでしたが、研修員の方々と講義の休憩時間にはお土産交換などを楽しみました。講義後や週末には、日本食を楽しんだり観光スポットを訪れたりと、日本についても知っていただくことができ、嬉しくなりました。

この研修を通じて、地熱開発や国際協力に関する新たな視点と多くの学びを得ることができました。熱心な議論と、新たなアイデアを共有し続ける機会に立ち会えたことは非常に刺激的でした。私たちの目標は、地球にやさしく、持続可能な未来を築くための一歩を踏み出すことであり、この研修はその一助になったと確信しています。これからもこの経験を活かすと共に、国際協力と持続可能なエネルギーへの関心を持ち続けていきたいと思います。

研修業務課インターン
深川真優

[i] 安定供給 | 日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 |広報パンフレット|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

[ii] 日本の地熱発電 | JOGMEC地熱資源情報

プリンスホテルの方からは、「これまで色々な団体に案内をしてきたが、これほど質問が出たのは初めてだ」とのコメントをいただきました!

箱根の紹介なども挟みながら、ロープウェイを楽しみました!

閉講式での写真。様々な立場の人が参加しました!

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