【実施報告】開発教育教員ネットワークセミナー ~あなたは◯◯人?-国籍と多様性について考えよう~
2025.03.26
3月16日(日)にJICA横浜にて、教師海外研修OB/OG会のAsante Sustainable Club(※1)と協働し、セミナーを開催しました。今回のワークショップのテーマは「国籍と多様性」。世界中で人々が国境を越えて移動している現在、日本に住む私たちにとっても大切なテーマです。武貞稔彦氏(法政大学人間環境学部教授)を講師に迎え、15名の小中学生に向けたワークショップ(第1部)と、教員や保護者との意見交換会(第2部)を行いました。
アイスブレイクを兼ねた自己紹介では、「ホント?ウソ?」というワークを行いました。自分自身に関する3つのエピソードを紹介して、そのうちの1つだけが本当で、2つは作り話、というものです。参加した子どもたちはエピソードを楽しく創作しながら、すぐに打ち解けた様子でした。
ドキドキしながら自己紹介ワークの説明を聞いている子どもたち
その後、講師の武貞氏から「今日は国の話などをするけれど、自分の身近な人をよく知ることも大切」というメッセージが伝えられ、早速ワークショップが始まりました。
ワークショップの中で、「日本人ってどんな人のことをいうんだろう?」という問いについて回答を考える時間がありました。「納豆や刺身を食べられる」「ひらがな、カタカナ、漢字が使える」「自分自身で日本人だと思う」「国籍が日本」など自由にアイデアを出した後、講師からある問いが投げかけられました。
「考えている中で、困ったことはありましたか?」
すると、何人かがすぐに手を挙げて、「一つの要素だけでは決められなかった」「すべてに当てはまるけれど、両親の国籍が日本ではない場合はどうなのか迷った」といった意見が出ました。
グループで考えたことを発表している様子
このワークを通して、子どもたちは何かスッキリしないモヤモヤした気持ちになったようですが、講師は「そのモヤモヤを感じてくれて良かった。これから先も考え続けることができるからね」と言いました。そして「実は、国籍の定義は、国によって異なるものが存在するけれど、それは便宜上定めているもので、絶対的なものではないし、将来みなさんがそれを変えることもできるのです」と続けました。
将来を担う子どもたちは、90分間のワークショップを通じて、人はつながり(関係)によって自分を説明できること、絶対的なものは存在しないこと、多様な人々がいること、そしてルールは変えてもかまわないことなどを学び、こころに大切な種を蒔く貴重な時間となりました。
まとめのお話をする武貞講師
第2部では、子どもたちのワークショップを見守っていた大人たちが、ワークショップを振り返りながら意見交換をしました。主催メンバーと教員・保護者など、計11名が参加しました。「子どもたちの頭の柔らかさや柔軟な発想に感激した」「自分たちと異なる人をからかうような事がたまにあるが、そのような時に、大人が感情的になり過ぎずに対応していけるようにしたい」「学校でも地域でも、国籍で悩んだり困ったりしている人は少なくない」などの声が共有されました。
講師から、今日のワークのねらいの一つは、普段考えないようなことを考えながら物事を相対化する練習をすることだったと伝えられ、参加者たちは、「そのねらいは達成できたと思うし、今日参加した子どもたちが良い世界を作っていってくれることに期待します」と応え、みなで想いを分かち合いながらセミナーは終了しました。
※1:Asante Sustainable Clubとは
JICA横浜のプログラムである、「教師海外研修」参加者を中心に設立した団体です。今では、JICA海外協力隊出身の方や、一般の方など、幅広い方達を中心にして活動しています。ワークショップでは、小学生・中学生・高校生が参加し、世界で起こっている様々な出来事について考えます。子どもたちが主役のNGO!それがAsante Sustainable Clubです。
代表:井上文裕(横浜市立飯田北いちょう小学校 副校長)
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