【帰国研修員からの便り】チリ:ホセ・フステル・フスティニアーノさん(2024年度課題別研修「脱炭素化に向けた水素利用(B)」に参加)
2025.07.08
私はホセ・フステル・フスティニアーノと申します。南米チリの首都サンティアゴ、アンデス山脈のふもとに位置する700万人以上が住む都市に住んでいます。サンティアゴの大きな魅力の一つはその立地で、太平洋に面した海岸やアンデス山脈の山のふもとまで、わずか数時間でアクセスできます。自然を満喫するには絶好の場所です。
私はチリ政府の産業振興公社(CORFO)で働いています。CORFOはグリーン水素委員会(Comité de Hidrógeno Verde)の一員として、この産業の国内での発展を推進する役割を担っています。資金調達ツールの設計、戦略的調査を実施するための各種調整、他の省庁や公的機関、企業、研究機関との連携を通じ、低排出型経済への移行を加速し発展させるための取り組みを進めています。
私たちのオフィスは、サンティアゴの中心地にある歴史地区にあり、大統領官邸であるモネダ宮殿のすぐ近くにあります。この地域には公的機関、商業施設、文化施設が集中し、いつも多くの人が行き来しています。私は自転車や公共交通機関を利用して通勤しており、仕事後は職場近くのジムでボクシングを練習しています。これは私の日常生活において重要な一部となっています。
今年1月、JICAの課題別研修「脱炭素化に向けた水素利用(B)」コースに参加する機会を得ました。この経験は、仕事上でも個人的にも非常に有意義な経験であり、講義、視察、専門家との議論を通じて、日本の水素戦略について深く理解することができました。特に、差金決済契約による補助金、モジュール式水素製造装置とアンモニアを活用した輸送、海洋分野での応用など、具体的な取り組みについて学びました。帰国後は、チリでも同様の仕組みの検討を開始しており、さらにJICAの研修で学んだ内容を活用して水素・アンモニアを供給するバンカリング拠点の整備に必要な要件に関する調査を進めています。
日本滞在中に最も印象に残ったのは、人々が公共スペースに対して気遣いがあること、そして静かに公共交通機関を利用する様子でした。皆が静かに移動し、整然とした雰囲気の中で互いを尊重する姿は、チリでは見られない光景でした。チリでは公共交通機関の中はあまり静かではなく、公共スペースも手入れが行き届いていないことも多いです。このような文化の違いから、日本では他人との共有空間の中でお互いに心地よく過ごすことに対していかに配慮されているかを感じることができました。
また、日本の日常生活にマンガとアニメが浸透していることも大変興味深かったです。近年、チリでもこの種のコンテンツが、特に若者の間で人気を集めていますが、アニメやマンガが日本人のアイデンティティを示すのに積極的な役割を果たしている様子を見ることができたのは、私にとって特別な体験となりました。
チリ南部、南極近くにあるトーレス・デル・パイネ国立公園にて
来日研修期間中の休日、隅田川にて
もちろんチリも豊かな文化をもち、多様性に満ちています。私たちは集まって食事をすることが好きで、家族と過ごすことや、伝統的な祝祭を大切にしています。例えば9月には、クエカという伝統的な音楽や踊りとともに、エンパナーダ(挽肉、オリーブ、玉ねぎ、ゆで卵などを包んだパイ)やパステル・デ・チョクロ(同じ具材にとうもろこしのペースをかけてオーブンで焼き上げたもの)、アサード(肉やソーセージを炭火でじっくり焼いたもの)といった伝統的な料理に舌鼓を打ちながら、独立記念日を祝います。
改めて、この研修に参加する機会を与えてくれたことに深く感謝しています。知識を深めるだけでなく、とても充実した文化的な体験を得ることができました。チリと日本の関係がさらに発展し、特にグリーン水素のような分野において、より持続可能で協力的な未来を共に築いていけることを願っています。
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