横浜と高雄の学生が描く港湾都市の未来 ― アジア・スマートシティ会議で共同提案へ JICA研修員がリアクターとして登壇
2025.11.28
アジア・スマートシティ会議の一環として、横浜市立大学と国立高雄大学(台湾)の学生による共同提案セッションが開催されました。両学の学生たちが台湾で共同実施したフィールドワークとワークショップの成果をもとに、「環境政策」「スマートシティ」「ウォーターフロント再生」「港の歴史遺産保全」の4つの視点から、港湾都市の未来に向けた提案が発表されました。
本セッションには、JICA横浜の研修員(課題別研修「都市課題解決のためのスマートシティアプローチ」)として来日中のアジア諸都市の行政官のうち2名が、プレゼンテーションへのリアクターとして登壇し、学生の提案に対して実務的な視点から助言を行いました。
それぞれ異なるアプローチで港湾都市の課題解決策を提示しました。
グループA:CO₂削減を目指す「カーボンニュートラルポート」構想
グループB:港湾都市政策の新組織設置と民間権限強化
グループC:バナナ埠頭の活性化と歩行者空間の整備
グループD:歴史的建物のリノベーションとグリーンツーリズム
横浜市立大学の青木准教授は「学生の成長に感銘を受けた」と述べ、データに基づいた発表やサステナビリティを重視した視点を評価しました。
高雄大学の呉教授は「港湾都市を市民に開かれた場にする視点が重要」と強調し、中央政府・地方自治体・民間のパートナーシップ強化を提案しました。
リアクターとして登壇したのは、JICA横浜の研修員として来日中の行政官です。彼らは、アジア諸都市の都市政策を担う実務者として、学生の提案に対し現実的な視点を提供しました。
Benazir Syahril 氏(ASEAN事務局 上級担当官)
「国ごとの課題を踏まえた提案が重要」と述べ、資金調達方法の多様化、官民連携を含むファイナンスメカニズムの工夫や、他国との連携の必要性を指摘しました。ASEAN域内での都市間協力の可能性にも言及しました。
Tran Ngoc LINH 氏(ベトナム建設省 都市開発局 主任スペシャリスト)
「提案は具体的でクリエイティブだが、公共スペースへの配慮不足」とし、横浜への適用理由の明確化を求めました。さらに、提案の実現可能性を高めるためのデータ裏付けや、地域特性を踏まえた住民参加の重要性を指摘しました。
これらのコメントは、学生にとって国際的な都市政策の現場を知る貴重な機会となりました。
議論の背景には、港湾都市の再生や活性化が、グローバルな課題であるという認識があります。横浜のみなとみらい地区、高雄の革新的再生事例は、SDGsに適応した都市づくりのモデルとして注目されています。
また大学を通じた都市間交流や、地元コミュニティ理解の重要性も改めて確認されました。
学生の柔軟な発想と行政官の実務的視点が交差した今回のセッション。横浜と高雄の知見を共有し、アジア諸都市への展開を探る試みは、スマートシティの未来に向けた一歩となりました。
Benazir Syahril 氏(中央:ASEAN事務局 上級担当官)
Tran Ngoc LINH 氏(中央:ベトナム建設省 都市開発局 主任スペシャリスト)
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