事業概要

JICA地球ひろばが取り組む業務についてご説明します。

JICA地球ひろばは、設立趣旨にありますとおり、「市民による国際協力」(市民参加協力事業)を推進するための業務を行っています。これには、より多くの方々に開発途上国や国際協力の現状・課題などを知り、理解していただくための事業、国内外での国際協力活動に参画していただくための事業、そして海外での国際協力活動の経験を国内でも広く発信・還元していただくための事業などがあります。国際協力に携わる市民団体へのサポートもそのうちの一つであり、セミナーや報告会の会場としてJICA地球ひろばを利用いただいています。

特にJICA地球ひろばは、JICA本部や全国のJICA国内拠点(国内15ヵ所)と連携しながら、こうした市民参加協力事業の一部についてのJICA全体におけるとりまとめの役割を担っています。

これらの事業の詳細については、「プログラム紹介」をご参照ください。

JICAは、これまでの開発途上国での国際協力の経験を通じ培ってきた知見を、人々に役立つ形で伝え、共に感じ、考えていくことにより、日本の教育において貢献するため、国際理解教育/開発教育支援事業を行っています。
JICAが開発教育支援事業の中で伝える内容と留意点は、以下のとおりです。

内容

(1)世界の多様性

各国で活動しているJICAの関係者は、世界には日本とは異なる様々な価値観があること、そして日本で当たり前なことが世界では当たり前でないことを、身をもって体験しています。そして、様々な価値観を認め、他者を尊重することが、世界各地で活動を進める上で大切であることを学んできています。また、世界には日本にはない様々な魅力的な文化や生活、考え方があり、自分たちが世界から学ぶことが重要であると身を以て実感しています。
そのような経験から、世界の多様性とその魅力を伝え、他者を尊重することの重要性を児童・生徒が理解することは、将来、世界の人々と協働して生きるために大切であり、日本を再発見したり、人生を豊かにしたりする機会にもなるものと考えています。また、いじめの撲滅や、外国にルーツのある子供たちとともに学ぶ態度の育成といった、学校教育現場が直面する課題に対応する上でも重要です。

(2)私たちと世界のつながり

グローバル化の進展により、日本に住む私たちの暮らしは世界とつながり、経済活動、各種産業、エネルギーから食糧・日用品に至るまで、大きく海外に依存しています。また、国境を越えた人の往来についても、日本から海外への移住者も増え、世界各地に日系社会が存在する一方、日本に住む外国人も増加しており、海外に出なくても、外国の人との関わりは日本各地で日常的になっています。
このようなつながりの中で、世界における様々な政治的、社会的、環境的な課題は、国家の利害を超えて協力して解決する必要があり、私たちの暮らしの安全と豊かさも、他の国との関係の中で考えていく必要があります。身近な地域の課題を考える上でも、SDGs(持続可能な開発目標)も参考に、世界の課題とつなげて考えることや、世界各地での解決への取り組みを学ぶことは有効です。さらには、「自分」「地域」「日本」と、世界との関係を理解し、同じ地球に共に生きる地球市民として考え、行動することは、持続可能な社会の創り手として重要な姿勢です。

(3)世界の課題

国際協力を実施するJICAは、様々な国・地域の現場における課題を理解し、その解決に向けた取り組みを現地の人々とともに行っています。世界の課題に関しては、現在SDGs(持続可能な開発目標)として、貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー、水とトイレ、エネルギー、働きがいと経済成長、産業と技術革新、不平等、まちづくり、生産と消費、気候変動、海洋資源、陸の生態系保全、平和と公正、パートナーシップの17分野に整理されています。各国でのそれぞれの分野の現状や、困難な状況がある中で暮らす人々の実情を理解すること、また課題が発生した原因や、一つの課題が他の課題を招くような相関関係を学ぶことなど、世界の現実について掘り下げて理解し、考えることは、社会の形成に参画し、国際社会の発展に寄与する上で、大切なことです。

(4)国際協力活動

国際協力を行うJICAには、現場での実践の経験に基づく様々な知識や情報があり、また青年海外協力隊をはじめとする国際協力の現場での活動に取り組んできた人材がいます。それらをもとに、国際協力を実施する意義・役割、事業のあり方と成果、現場での苦労と喜び、現地の人との関わりと学びなど、様々なことを伝えることができます。そして世界を舞台にして社会に役立つ働き方などのキャリアを考える機会も提供することができます。
さらには、国際協力活動を学ぶ中で世界の課題を解決する具体的な事例を理解することで、自分自身が社会に貢献できる可能性を感じ自己有用感を高めたり、学んだ知識が世界に役立つことを知ることで学ぶ意欲を高めたりすることにもつながります。

留意点

(1)より多くの人々に、より多様な世界を伝えること

これからのグローバル社会で関わる国々は先進国に限られるものでなく、また必要な人材も国際社会で活躍するリーダー的な人材だけではありません。人口動態や経済成長を考えると、現在、日本が国際協力を行っている国々が、これから政治的にも経済的にも大きな影響力を持っていく時代になっていきます。また、日本国内においても国際化がさらに進み、「地方だから」、「海外に行かないから」といって、外国人との関わりは無いとは言えない時代になっています。そして、日本の地方の活性化においても、世界とのつながりや国際的な人材の果たす役割は大きな役割を果たします。
そのようなこれからのグローバル社会のための教育としては、あらゆる人々に対して、先進国に限らない多様な国々の人との関わりについて考え、様々な状況におかれた人々への理解を深め、社会的課題に対する取組みについて考える機会を提供することが大切です。

(2)途上国をパートナーとして提示すること

世界の課題を知った方々は、「開発途上国の人はかわいそうだ。支援をしてあげたい。自分は日本人で良かった。」という感想を持つことがあります。途上国の課題と、そこで暮らす人々の気持ちを理解し、支援をしたいという気持ちを持つことは大切であり、国際協力につながる第一歩でもあります。しかし、開発途上国と言われる国々も、都市部の発展や経済の成長、地方が有する豊かな暮らし、独自の文化、優秀で意欲ある人材、強い人間力、コミュニティや家族の絆の強さ、豊かな自然資源など、日本にはない魅力や、学ぶべき点があることも事実です。
途上国を一方的に援助する対象としてしか見なかったり、資金的な支援をすることが解決策だと安易に結論づけたり、上から目線で見たりすることは、長期的に考えたり、学んだりする機会を失いかねず、また途上国との関係を限定的に捉えてしまうことにもなります。物事を多面的に捉え、お互いを継続して学び合うパートナーとして見ていくことが大切です。

(3)「ジブンゴト」として考え、行動するきっかけを提供すること

様々な課題と多様な価値観のある世界のできごとを、海の向こうの遠い世界での出来事としてではなく、自分とつながりある存在として、「ジブンゴト」としてとらえることで、自分が世界の中の一人の担い手として、主体的に関わる意識をもつことが大切です。そして、知ったこと、理解したことをもとに、自らさらに調べたり、仲間と話し合ったり、世界の未来にとって大切なことを考えて行動したりしていくことを期待しています。日々の生活で何かを見直したり、自分でできることを具体的に考えたり、一歩踏み出して実践したりすることで、より良い世界を創ることに人々が貢献し、豊かな人生を切り拓くことのきっかけを提供するよう努めます。