日系社会研修

中南米地域日系社会への技術協力を通じ、日系社会の発展と移住先国の国造りに貢献する事業です。北陸では大学が大半を占めますが、その他に地方自治体、公益法人、NGO等の団体等から提案を受け、これらの団体等に日系社会研修員受入の実施を委託して行う国民参加型事業です。

2023年度実績

No コース名 実施機関
(協力機関)
実施期間 対象国・地域 研修員数
1 日系アイデンティティ涵養・日系史教育教材作成 金沢大学 2023年5月7日~2023年7月18日 ブラジル 1人
2 医療(麻酔科) 金沢大学 2023年10月10日~2023年11月2日 パラグアイ 1人
3 多文化共生推進支援 小松市国際交流協会 2023年10月10日~2023年11月30日 ブラジル 1人

事例紹介

高齢者福祉

実施機関:石川県立看護大学
対象国:パラグアイ

地域が主体となる中南米日系社会で、高齢化社会に向けての支援を迅速に実現するには

中南米における日系社会では移住から半世紀以上が過ぎ、日本人移住者の高齢化が進んでいます。パラグアイ全体で見ると、高齢化率は約6%とまだまだ若い国と言えますが、一方で日系人社会としての高齢化率は急速に進んでおり、20%に迫る地域もあります。
しかしながら、国や地方自治体の高齢者福祉施策整備は十分とは言えず、日系社会が主体的に対策を講じなければならない状況にあります。さらに各移住地での高齢者福祉事業の担い手は、ボランティアが中心で、日本人会とし組織的な対応もできていない状況であったことから、研修がスタートしました。

一方、研修実施場所である石川県、中でも研修でお世話になっている中能登地区は、高齢化率37.6%と日本の平均28.9%を大きく上回っている地域です。これまで様々な課題と向き合ってきた経験は、これからパラグアイの日系社会が将来を見据えた福祉対策を講じていくにあたり、参考になる知見が詰まった地域です。

バランスよく学ぶことができるプログラム

この研修の特徴は、石川県立看護大学と羽咋市社会福祉協議会の連携によるプログラムであることです。大学では、その人材育成のノウハウに基づき専門知識を学ぶことができ、羽咋市では、高齢者の実態と福祉の取り組みを実際に現場で学ぶことができます。

石川県立看護大学では、日本の高齢者福祉制度、高齢者の特徴、介護予防に関する講義などが行われ、羽咋市では、高齢者施設や在宅サービス機関などの多様な施設での視察や実習が行われます。実際に高齢者の方が施設でどのように暮らしているのか、また、その際に職員の方がどういう動きをしているのかを自分の目で見て学んだり、時には利用者の方と一緒に作業体験したりしていました。

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高齢者施設の利用者と一緒に花を作る研修員

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「車いすを使う人でも、気軽に外出できるよう支援したい」と福祉車両を見学する研修員

参加した研修員たちの学び

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緊張しながらも、研修での学びや帰国後の取り組み計画について発表する研修員

高齢化が急速に進む中、パラグアイでも介護の必要な高齢者や一人暮らしの高齢者が増えてきており、そういった高齢者への支援の充実を考える研修員は、お年寄りのための住環境の整備の必要性、デイサービスの内容の向上・充実、レクリエーション・リハビリ体操の実践方法の習得などが大事であることを学んでいました。
高齢者福祉の取り組みの必要性は強く感じているものの、若い世代のボランティアの参加が少ないなど何より人材確保や人材育成についての大きな課題を感じていた研修員の方々がこの研修で学んだ知識を各移住地に戻り実践しながら、同じくボランティアとして活動する方々に学びを共有していってくれると思います。そうして充実した活動の姿を周囲に見てもらうことこそが、人材を増やすことに繋がり、高齢者福祉の充実にもつながっていくだろうと思います。