素敵な「出逢い」に恵まれて

JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業を活用して、マレーシアでロボットによる下水道管路維持管理の案件化調査を実施された株式会社北菱(石川県小松市)の福田 悠哉さんにインタビューを行いました。

株式会社北菱 車輌事業部 海外営業
福田 悠哉さん

株式会社北菱との「出逢い」

マレーシアでの案件化調査にて実際に使用されたものと同じモデルの下水維持管理ロボット。25㎏と軽量で持ち運びやすく操作も簡単。

外国語大学出身、国内外に関わらず旅行に行くのが好きだという福田さん。海外の企業との取引に携わることができる仕事があると紹介を受け、株式会社北菱への入社を決めたそうです。大学で学んだ言語の知識や留学経験を生かし、大好きな海外をフィールドに仕事ができるところに魅力を感じたといいます。担当されている業務はドイツ企業からのロボットの輸入、自社製品の輸出、代理店との契約締結、海外への視察やブース出展、書類の和訳や英訳と多岐にわたります。特にマレーシアへの自社製品の輸出に向けた準備を進めてきましたが、その一環として2019年2月~2020年1月にはJICAの民間連携事業を受託し、下水道維持管理ロボット「ミニモグ」による下水道管路の維持管理案件化調査を実施いただきました。

地元北陸での「出逢い」そして現地マレーシアでの「出逢い」

現地では担当者に実際にロボットを動かしながら使い方をレクチャーする。

JICAの民間連携事業に取り組むきっかけは、株式会社北國銀行の海外ビジネス支援担当の方との「出逢い」でした。事業の企画段階から実施・報告・評価まで外部人材である銀行・コンサルティング会社と、それぞれの強みを生かして連携し、支援を受けながら進められたことが調査の成功に大きく貢献したといいます。海外で事業に取り組むことは難しい挑戦ですが、不完全でも助けてくれる人がいることは事業を続けていく大きな力になっていたそうです。
また、マレーシアでの活動中は日本とは違う新たな文化に触れる機会があったとのこと。マレーシアの首都クアラルンプールの町は開発が進んでいて活気に満ち溢れていたことが印象的だったといいます。また現地で事業を進める中で、現地企業の担当者が協力的で且つフレンドリーであったこと、現地の事情についてたくさんの情報を教えてくれたことに驚いたが、その親身な姿勢が嬉しかったと話してくださいました。

社内での「出逢い」

株式会社北菱さんでは、SDGsの取り組みの一環として外国籍の社員の雇用や実習生の受け入れも行っています。現在はベトナムから20名ほどの実習生が社内で研修を行い、主に現場に入って難易度が高い溶接などの技術を学んでいます。実習生は「日本で技術を学びたい」「学んだ知識を母国のために生かしたい」と日々高いモチベーションをもって業務に取り組んでいます。また実習生は日本語の習得にも意欲的に取り組み、仕事のない休日を利用して日本語の勉強にも取り組んでいます。モチベーションの高い実習生と仕事をすることは他の社員にとって大きな刺激となり、仕事へのモチベーションを高めるきっかけになったそうです。
福田さんご自身も英語力向上のため、1年半前から毎日オンライン英会話を続けています。レッスン回数は累計1971回、学習時間の合計は718時間に及びます。大学時代の経験から英語力には自信があったという福田さんですが、大学卒業後英語を使う機会が減ったことで英語力の低下を痛感したといいます。「継続は力なり」。現地企業の担当者とコミュニケーションを取り、円滑に事業を進めるためには日々の継続した努力が欠かせません。

次のステップとして

現在株式会社北菱さんは福田さんを中心に、案件化調査の成果をどのようにして将来のビジネスの実現につなげるか、の検討を行っています。具体的には、次のステップとして現地での試験的な事業を実施することを目指し、JICAの普及・実証・ビジネス化事業への応募に向けた準備を進めています。2020年1月に終了した案件化調査の報告会でのアドバイスなどを踏まえ、より具体的なビジネスプランを構築することで、マレーシアでの自社製品販売を実現し、実績を積み重ねていきたいと意気込みを語ります。また、福田さんはマレーシアでの自社の取り組みが先行事例・モデルケースとなり、北陸地域の企業がJICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業制度を知るきっかけに、そして他社の海外進出を後押しするきっかけになればとも話してくださいました。

取材
JICA北陸インターン
石黒 歩