地域から世界へ

NPO法人グリーンツーリズムとやまは、都市と農山漁村の交流=グリーン・ツーリズムで地域を活性化するという目的のもと、富山県内でとやま帰農塾、とやま農山漁村インターンシップなど、さまざまな活動を展開しています。その経験から、JICA青年研修事業の「アフリカ農村振興コース」を受け入れていただいています。

NPO法人グリーンツーリズムとやま 理事長
長崎 喜一さん

「バカの壁を越え、普遍に」

地元である朝日町蛭谷地区は、高齢化が進んでいるが、村人の日本古来の技術や文化、魅力を未来の世代へ残したい、伝えたい、そんな強い思いで1994年に自然体験学校「夢創塾(むそうじゅく)」を設立しました。当時の状況では周りからは「バカなことをしている」と冷ややかな目で見られました。しかし、ある講演会で、ベストセラー「バカの壁」の著者である養老孟司さんと対談する機会があり「バカの壁を超えると、普遍になる」という1つのセリフとの出会いで勇気づけられ、続けた結果、「普遍」となった今に至ります。また、朝日町に自分の手で炭焼き小屋を建設し、その炭焼き技術をバリ島へ普及したところ、村に豊富にある竹を利用した炭焼き産業が大成功し、雇用も生まれ、その地域の活性化に貢献できました。夢創塾をきっかけに、蛭谷地区のお年寄が元気になり、子供たちが集まり、そして今では地域から世界へと大きく活動を広げています。

JICA×グリーンツーリズムとやま

青年研修で、アフリカの研修員に乾燥させた稲を使って説明している様子

JICA研修員受入事業は、少しでもこれまでの農業の知識や技術で助けになれたら、自分にできることがあればしたい、という思いで取り組んでいます。受け入れたばかりの頃は、最先端の農業を教えてきましたが研修員の国とのギャップがあるのではと心配でした。そこで、実際にアフリカの農業が見たいという思いでアフリカはカメルーンに渡航しました。そこでは、すべての農作業が手作業。そんな現実を見たことで、日本で昔使っていた農機具が彼らにとって役に立つという事に気づき、研修プログラムで伝統的な農機具を紹介するようになりました。さらに自分の地域に研修員を受け入れることによって自分の地域を他の国に知ってもらえ、自分自身も富山の良いところを再確認できます。そして地域とその国の交流も増えれば、ネットワークができ、地域の活性化にも繋がります。私たちは地域支援というところに重点を置いて活動をしているので、国内でも世界でも地域の方々がより良い方向に向かってもらえれば嬉しく、それがやりがいです。

現代の若者へ

インタビューの様子

現代にあるものは昔の人々の知恵や技の蓄積であることを忘れないでほしいです。そして基礎からの技術を知り、習得してほしいです。日本の古来の技術はまだまだ通用します。どうしたら活用できるのかを考えてほしいです。例えば、先にも述べたように、アフリカでは日本の伝統的な農機具がまだまだ活用できます。それを普及することにより現地でどんどん活用され、国造りの役に立ちます。また、富山の人々は自分がどれだけ恵まれたところにいるのかわかっていないので、つい「富山は何もないところ」なんて言ってしまいます。一度外に出てみると富山の良さを実感できる良い機会になるかもしれません。富山を守っているのは自然です。自然を大切にすることが地域を守ることに繋がります。そうして富山の良さを伝え、100人いれば1,2人戻ってきてくれるといいなあという思いです。

取材
JICA北陸インターン
吉﨑 杏樹