薬はTOYAMA

富山大学は、2014年度草の根技術協力事業(地域経済活性化特別枠)「ミャンマーにおける伝統薬品の品質改善を通したプライマリーヘルスケア向上事業」、2017年度草の根技術協力事業(地域活性化特別枠)「ミャンマーにおける伝統医薬品の製造管理及び品質管理の改善を通じた保健衛生向上事業」を実施してきました。 同プロジェクトのプロジェクトマネージャーの紺野勝弘さんにインタビューしました。

富山大学 和漢医薬学総合研究所 天然物化学分野 理学博士
紺野 勝弘さん

富山の薬をミャンマーへ

インタビューの様子

私は富山の配置薬システムをミャンマーへ伝えよう、そして配置薬で富山を活性化させようという思いで始めました。途上国の僻地、山間部、病院へなかなか簡単に行けないところに薬を普及しよう、そのような場所にはこの配置薬システムが1番ふさわしい支援なのではないか、と考えました。富山には本当に良い技術があり、知識、ノウハウをなんとかして伝えたいという強い思いがありました。また、富山は高品質な薬を作れる技術があるという日本国内のお客様からの信頼があります。だからミャンマーで富山の薬を紹介し、どんどん海外進出に繋げていきたいです。そのような支援も今後は拡大していきます。

JICAとの連携

まずJICAとの連携のきっかけは、ミャンマーで伝統医薬置き薬配布事業を先行して行っていた日本財団さんから「JICAがこんな取り組みをしているから相談してみたら」と声がかかったことです。JICAと連携することで、海外で活動が効率的に行えます。その理由として、やはりJICAのブランド力、実績の信頼というものが大きいです。今の取り組みはJICAなしでは実現できません。何においても、“信頼”というものは欠かせません。また、JICA事業を通して改めて富山の薬の良さを感じ、世界に誇れるものであると自信を持てました。そしてこれからも県内製薬業界に私たちの持っている繋がりのルートを活用してもらい、海外進出への橋渡しを強化していきます。

どんなことをしているの?

2014‐2017の第一期では、まず配置薬を伝える前にミャンマーには薬局方という医薬品の規格基準書がなかったので、薬局方の作成支援や伝統医薬品の試験方法等の技術指導をしました。配置薬の配布については、村に1つではなく、富山方式の各家庭に配布する方式を紹介しました。また、そのときに見学した当時の現地の工場は薬を作る環境ではなく、あまりのひどさに驚きました。第二期(2017~2020)では県内製薬企業のミャンマー進出支援、薬を半官半民として配置棚に置いて普及、新伝統薬製造工場の立ち上げに関する技術支援を行いました。新工場の建設は県内の製薬企業が関わり、富山での技術研修や専門家を派遣しての現地指導を通して新工場が立ち上がり、以前見学したときとはまた驚くほどに変化しました。

ミャンマーの医薬品の未来

医薬品の品質管理技術習得に取り組むミャンマー研修生

ミャンマーで配置薬システムをしっかりと根付かせることによって健康増進に繋げたいです。そして将来的にはしっかりとした医薬品製造技術により良質の薬が提供され、それが薬局、ドラッグストアなどでいつでも手に入れられる—ということで、その薬そのものから技術までをミャンマーに伝えられればと思っています。そうして支援の必要がなくても自分たちで出来る持続可能な医薬品の供給体制の確立を目指します。そのために現地での人材育成や、留学生、研修生を招きたいと思っています。何に関しても、やはり人と人との繋がり、信頼関係が1番大事で、私は“人材育成”に重点を置いています。いつかは富山の薬を現地生産できるようになることで「高品質で低価格にしてほしい」という現地の方々の思いも叶えたいです。なかなかうまく進まず、課題も多く、時間もかかりますが、「薬でミャンマーを支援、貢献し、そして県内の製薬業界にも良い影響を」という思いにプラスして、ミャンマーの人々の人柄の良さにこれからも支援を続けていきたいと強く思っています。

取材
JICA北陸インターン
吉﨑 杏樹