「体験」から学ぶこと

公益財団法人とやま国際センター(以下 (公財)とやま国際センター)は、活力ある地域社会の実現と国際的視野を有する人材の育成を図るとともに諸外国との協調と親善に資することを目的に、国際理解、 国際交流、国際協力及び多文化共生を促進します。

公益財団法人 とやま国際センター 国際交流推進専門員
中村 則明 さん

とやま国際センターの役割

(公財)とやま国際センターは、国際交流、国際協力そして多文化共生を富山県で推進しています。近年は多文化共生を中心に活動をして、最近では防災に力を入れています。地震や台風等など日本特有の災害について外国人の方にラジオやHPを通じて啓発しています。阪神淡路大震災を契機に多言語で外国人に災害情報を伝える取り組みが始まりました。富山でも同様の活動の必要性を感じています。
昨年6月、「富山県外国人ワンストップ相談センター」が、とやま国際センター内に開設され、13言語で対応しています。仕事や子供の教育、日本語学習など様々な相談に対応して、情報提供や時にはアドバイスをしています。

「体験すること」の大切さ

国際青年年(1985年)を記念して、富山県が論文を募集していました。それに応募して、特選をいただいたことが、現在の仕事をするきっかけになりました。青年海外協力隊の活動を通じて、自ら体験することの大切さを知りました。
そこで最初に企画した事業が、留学体験セミナー「USA ハイスクール in とやま」です。アメリカの高校の授業をアメリカ人講師よって再現し、高校生が体験するものでした。授業は全て英語で行われました。参加した高校生は、「内容はよくわからなかったが、英語の必要性を理解できた」などの感想があり、英語を勉強するいい動機付けになったようでした。
次に企画した事業が、世界遺産の五箇山での「国際交流の集い」です。バーベキューやキャンプファイヤー、そして教育など様々なテーマで日本人と外国人が交流しました。ここでもキーワードは「体験」でした。共通体験を通じてお互いをよりよく理解できる事業でした。

国際協力と多文化共生の連携

JICAと富山市民国際交流協会と共催で毎年秋に「国際交流フェスティバル」を開催しています。このイベントはこれからも盛り上げていきたいと思います。
これは個人的な思いですが、国際協力と多文化共生の連携が一層進むことを期待しています。国際協力は途上国で国づくり、人づくりに協力する活動です。多文化共生は、地域で外国人支援、あるいは外国人住民と一緒に地域づくりを進める活動です。どちらも活動内容は同じで、実施している場所が、途上国と日本の地域と異なるだけです。多文化共生は、国際協力の人材育成の場であり、国際協力経験者の活動を還元する場でもあると言えます。

多文化共生で日本は変わる

トランプを使ったマジックを披露してくださる中村さん。「どの国でもやっぱり楽しいことは一緒だ、何の違いもない」と語っておられました。これも海外協力隊の経験から学ばれたそうです。

富山県には1万9千人を超える外国人の方が住んでいます。外国人の人口が増えることにあまり良いイメージを持っていない人も多いと思いますが、以前は学ぶことができなかったベトナム語やウルドゥー語(パキスタン)などの少数言語や各国の料理など異文化を富山県にいながら学ぶことができるメリットがあります。
また、日本には、100万人ものニート・引きこもりの人がいると言われています。これは日本が抱えている課題のひとつです。この解決方法のひとつが多文化共生ではないかと思います。多文化共生を通じて、彼らが新しい価値観に出会い、社会への一歩を踏み出すきっかけになればと思います。実際に、富山でベトナム出身の留学生に出会った大学生が「近いうちにベトナムへ、彼の故郷へ行きたい」と言っています。ひとつの出会いがその後の人生を大きく変えることがあります。
国際協力も多文化共生も大事なことは、相手をリスペクトすることです。そうすれば、いろいろ学ぶことができます。これからの未来を担う皆さん、何事にもチャレンジしてください。

取材
JICA北陸インターン
吉﨑 杏樹