◆長期研修員インタビュー◆金沢大学 博士課程 ミャンマー Kyi Thar Koさん(2020年10月帰国)

ミャンマー工学教育拡充プロジェクトで2017年3月から金沢大学大学院自然科学研究科電子情報科学専攻にて博士(工学)過程で研究していたKyi Thar Ko(チーターコー)さんが、2020年9月28日に学位を修得しました!またコロナ禍で帰国も通常通りとは行きませんでしたが、無事に母国へ帰ることもできました。

Kyi Thar Koさんのことを教えてください

【画像】 ミャンマー連邦共和国(以下ミャンマー)の真ん中にある小さな町、Pauk出身のKyi Thar Koです。ミャンマーは今、民主化を進めており、今年の 11月に選挙が行われます。この選挙はミャンマーの将来に深くかかわっていて、今、人々は投票にとても関心があります。私の家族は私、妻と息子の3人です。 -妻にはやりたいこと(仕事)を優先してもらい、2017年の3月に単身金沢に来ました。来日中の3年半、家族に会えなかったですが、毎日欠かさず、アプリでビデオ通話をしながらコミュニケーションを取っていました。

このプロジェクトに参加したきっかけ

 ミャンマー工学教育拡充プロジェクトでは、私の所属先(ヤンゴン工科大学)に日本から何度も専門家(熊本大学教授)が訪れていて、来日前から指導していただていました。また多くの同僚も研究のため日本に行っていたので、私もいつかはそのプロジェクトに参加したいと思っていて、2回目の応募で参加することが出来ました。

博士課程で研究していた内容について

【画像】 私はコンピューターやサーバーなどのテクノロジー関連のものに興味があります。日本での研究は、Named Data Networking(NDN)と呼ばれる次世代ネットワーク上のプライバシーに関連しています。NDNは、有望な将来のインターネットアーキテクチャです。 いつかNDNがインターネット上に展開される日がくれば、私の研究がミャンマーのネットワークに貢献できたと言えます。

日本(金沢)での生活について

【画像】 まず、日本の皆さんは素敵で、とても勤勉だなと思います。特に指導教官には忙しくされている中で指導をして下さり、先生の支えなしには3年半を無事に終えることはできませんでした。先生からは多くの事を学び大変感謝をしています。金沢での生活は、住居から大学の研究室まで40分程かけて歩いて行ったり、自転車に乗って通学したりしていました。また住まい周辺の人たち(多国籍)で集まってバドミントンをしたりする時間は楽しかったです。金沢マラソンに参加し、完走できたことは今でも印象に残っています。
 日本での食事はあまり苦労することはなかったです。中でもよく食べたのは、家の近くにあるお店で味噌ラーメンや醤油ラーメン、から揚げなどです。ミャンマーでもラーメンはよく食べますが、日本の味とは違うので、楽しむことが出来ました。
 3年半金沢で生活をしてきて、日本語が思ったように習得できなかったのが心残りです。修士課程を取る時にロシアへ留学をしていたこともあり、日本語を思い出そうとすると、一度母国語からロシア語へそして日本語へと経由されてしまって、スムーズに覚えることが出来ませんでした。日本はとても安全な国だなぁと思いました。特に犀川沿いを女性が一人で歩いているのを見たときには驚きました。

新型コロナウィルスの影響で大変だったこと

 もちろん、新型コロナウィルスの影響は心配でした。ただ毎日ミャンマーにいる家族とは連絡をとっていたので、不安になりすぎるという事もなく過ごすことが出来ました。またコロナ禍にもかかわらず、日本人は多くの人がルールを順守しており、素晴らしいと思いました。
 今(10月5日時点)ではミャンマー国内で感染が拡大しており、妻が住んでいる地域がロックダウンしていて帰国後もすぐに会うことは出来なさそうですが、日本よりは近くにいられるのでより安心することが出来そうです。

最後に帰国後の展望について

【画像】 帰国後私は所属先であるミャンマーのヤンゴン工科大学に戻ります。 そこでは指導者として多くの学生たちに日本で学んだ知識を共有しながら、現在の研究を改善しミャンマーの更なる発展に貢献できるよう頑張ります。

<研修員担当より>
 家族想いで、優しいKyi Thar Koさん。日本でも、ミャンマーでの教え子が勉強のために来日するとアパートの手配などを事前に準備をし、日本での生活に不自由ないようサポートしていたそうです。
 また、日本語を話せるようにはならなかったものの、日本文化体験の機会があると積極的に参加され、一緒にそばを打ったのも思い出の一つです。その中でも、書道で書いた本人の名前や漢字はすごく上手で、驚きました。当時教えてくださった学生さんに言われるがままに書いただけですよ、と言っていたので、本人の器用さはもちろんのこと、ボランティアで参加してくださった学生さんにも感謝したいと思います。大切に研究室に飾っていたこの作品は、帰国の際に記念に持ち帰るとのことでした。
 そんな温かで勤勉なKyi Thar Koさんは、ミャンマーでも生徒想いの先生としてご活躍されると思います。ミャンマーの更なる発展のために、健康第一で頑張っていただきたいです。
JICA北陸一同、応援しております!

※JICA北陸のニュースレター『JICA北陸's World No.26 秋号(2020年10月発行)』の“北陸で学ぶ長期研修員”でも他8名の長期研修員と紹介しています。