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【研修員受入事業】新しい観光の形を考えよう-オンラインでの学びあい/ JICA Knowledge Co-Creation Program: New Style of Tourism – Learning Each Other Online

2022年1月13日

コロナ禍で自由な移動が制限されて大きな影響を受けた観光産業。その影響は、日本国内だけでなく海外の国々にも今なお大きなインパクトを与えています。JICA北陸が実施した「観光開発政策」研修には9ヵ国15名の中央省庁の行政官などが研修員として参加し、今後の観光政策についてアイディアをまとめました。オンラインでのバーチャルツアーや講義でのインプットと、学んだ内容をアウトプットする発表会を織り交ぜた密度の濃い1ヶ月となりました!(JICA北陸 野吾奈穂子)
JICA Hokuriku welcomed 15 officers from 9 countries to the on-line Knowledge Co-Creation Program, “Tourism Development Policies” in November, 2021. They completed the course successfully learning through on-demand and live lectures and drafted the Action Plan as the outcome of the participation. Please refer to the attached file, “Program Structure and Schedule”. 3 representatives will make presentation at the open webinar on February 18, 2022 to share their learning and suggestion from their point of view.

「日本の現場を見に行けない」不利を克服するために

古民家を改装した「こみんぐる」のバーチャルツアー動画

水引き製作体験では、ひもを結ぶ細かな作業が続きました。果敢にチャレンジする人と、あきらめる人が(笑)

これまで観光をテーマにした研修コースでは、日本国内の現場を視察して対面で現場の方々と意見交換を行い深い学びを提供してきましたが、研修員の来日が叶わない今回はすべてオンラインでの実施となりました。アゼルバイジャン、ウズベキスタン、エジプト、コンゴ民主共和国、イラン、キルギス、タジキスタン、タンザニア、レソトの9ヵ国から15名が11月1日~30日まで参加しました。
研修プログラムは、北陸地域の観光産業に詳しい北陸先端科学技術大学院大学と一般財団法人地域振興研究所がタッグを組んで作成し、効果的な動画作成や研修員が学びを深める学習課題の検討を行ったものです。中でも360度カメラで撮影した動画を見ながらのバーチャルツアーではスマートフォンをセットしたVRゴーグルを頭に装着してまるでその場にいるかのようなリアルな映像を視聴できたり、水引き製作体験ではあらかじめ研修員の手元に送っておいた製作キットで実際に水引きを作って金沢らしい文化を体験しつつ、実践できそうな観光振興策のアイディアを学んだり。自学自習のオンデマンド形式の学習では、各講義の動画やテキストを見てから学習課題に回答し、講師陣に提出します。その本数は27本にも及びました。アウトプットの場である模擬授業では、研修員がオンライン上でグループに分かれて「学んだことを伝え直す」演習をしました。分かったつもりになっていることも、他の人に説明することを意識して資料を作ってみることで客観的に自分の理解度を測ることが出来ます。

研修を終えて~研修員たちのチャレンジはこれから!

ウズベキスタンの研修員は、上司(写真右)同席の下、新たな観光地の可能性について発表

閉講式の修了証書授与で、満面の笑みを見せてくれたコンゴ民主共和国の研修員

こうして大変密度の濃い充実したプログラムに、各国の研修員たちは通常業務を抱えながら1ヶ月間みっちりと取り組みました。最後の課題は「アクションプラン(行動計画)」の作成と発表です。この研修で学んだことをどのように業務に活かしていくか、研修員の決意がまとめられたプレゼンテーションを1人ずつ発表していきました。例を挙げると、日本人をインバウンド観光客として迎える際の計画をまとめた人、これまでの伝統的な観光地以外に観光資源がないか分析した人、障がいの有無や年齢などに関係なく楽しめる観光をテーマにアイディアをまとめた人と、様々です。研修員15名のうち4名の発表ではそれぞれの職場の上司も同席してくれ、「観光は他の産業を牽引できる産業」、「観光政策でも持続可能性は重要。地域に経済効果をもたらす観光分野では、優秀な人材の育成も欠かせない」などのコメントをくれました。彼らも研修員と二人三脚で、アクションプランの実現に尽力してくれるでしょう。
充実した研修を作り上げるために、講師を務めてくださった有識者の方々や、北陸先端科学技術大学院大学と一般財団法人地域振興研究所の皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。

通常業務をしながらハードな研修に取り組んだ、熱意溢れる研修員たち。その学びの様子の一部を、「成果発表セミナー」で一般公開します!
2022年2月18日(金)18:00~20:00、オンラインでどなたでも参加できます(日本語通訳つき、参加費無料)。詳細はJICA北陸ホームページ「イベント情報」まで。どうぞ奮ってご参加ください!

コースリーダーから一言(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 敷田麻実教授)

敷田麻実教授

本研修は、新型コロナウイルス感染終息後の観光産業の回復を想定し、各国が「新たな観光」の構築を進めるための観光政策の形成能力向上を目指したプログラムです。カリキュラムは、データや過去の蓄積、市場の状況を把握したうえで、共存と持続が可能な観光政策を立案することを期待して設計されており、現在の世界に共通の課題やニーズに即しています。
研修の構成は、知識マネジメントや最新の学習理論に基づいた効果的な学びを促進するものとなっており、全てオンラインで実施する中においてもファシリテーションや参加型の学習メニューの充実を図りました。最終的に9ヵ国から15名の研修員が参加し、主体的な学びを経験し、満足度の高い研修となりました。
研修員の作成したアクションプランは、コンゴ民主共和国の観光地域ガバナンス構築プランや、地域再生と連携したウズベキスタンのプランなど、現地の観光の現状を反映しつつ、コロナ後を意識した、新たな感染症や社会の変化に耐えられるレジリエントな観光を推進するものが提案されました。研修員は意識が高く、オンライン研修であっても参加型で充実した学習ができており、主体的な学びを生み出すカリキュラムと環境設定が重要であることが明らかになっています。
今回の研修のパフォーマンスは、プログラム運営に関与したJICA職員、講師、コーディネーターとの協働の成果であり、来年度以降も内容の更なる充実を図っていきたいと思います。