富山国際大学付属高校の「国際理解講座」にて、出前講座を実施しました!

2021年5月28日

5月15日(土)に富山国際大学付属高校の1-3年生を対象に、東京都出身で現在は富山県在住の青年海外協力隊経験者の加藤泰紀さん(派遣国:ネパール、職種:体育)が出前講座を実施しました。
コロナ対策もあり、会場を3つに分け、2つの会場はリモートでの視聴としました。

(1)異文化理解の三段活用を伝授

異文化理解について話をする加藤さん

講座は何の説明もなく、ネパール語での挨拶から始まりました。画面にもネパール語が映し出されるだけで、生徒の皆さんは、戸惑いを隠せない様子でした。
自分の母語ではない言語も「自分の範疇にないもの」の一つであり、「違和感」「異物」になることを肌で感じ、異文化に触れる体験をしてもらった上で、加藤さんは異文化を理解するための以下の3段活用について話をしました。
①(否定)変なの・・・間違っている!
②(気づき・疑問)へえ、違うんだ。なぜだろう?
③(理解)あ、面白い!やってみようかな。
この3段活用を加藤さん自身の経験を具体例として紹介しました。死者の扱いに衝撃を受けたネパールでの経験だけでなく、東京から富山に引っ越してきた際に、生でホタルイカを食べる富山ならではの習慣に驚いたことなど、決して異文化が海外だけでなく、身近なところにも存在するということにも触れていました。

異文化理解の3段活用に関して、生徒の皆さんからの感想文に多数コメントがありましたのでいくつかご紹介します。
・否定から始まったとしても、そこで終わるのではなく、気づきや疑問を持ち、理解することで異文化理解が深まるのだと知って、今までの自分の独断や偏見は、知識や理解不足なのだと感じました。
・私はこれまで、自分の中で「おかしい」と思ったり、普通ではないと感じたことをどのように受けいれたらよいか分かりませんでした。(中略)否定することは良くないことだと思い込んでいたので、今後は「否定する自分」も尊重し、理解につなげていきたいと思います。

(2)ネパールでの協力隊活動について

実際にネパールで行っていた簡単な体操に挑戦している様子

次に、ネパールとはどんな国で、加藤さんがネパールで体育隊員としてどんな活動をしていたのかについて紹介されました。
インターネットで調べることができる内容は省き、加藤さんが見てきたネパールの食文化や、日本の紙幣の材料がネパールから来ていることなど生徒の皆さんの身近にあるものにも触れました。他にも異文化という視点から、世界で唯一「生き神(クマリ)」が存在することや「ナマステ」というネパール語の挨拶だけでなく、簡単なネパール語にも触れ、生徒たちの関心を誘っていました。
活動内容としては、「体操」をメインに指導していたことが紹介され、ネパールで指導したいつでも、どこでも、だれでもできる体操を、その場でやってみると、生徒の皆さんも楽しそうに取り組んでいました。さらに、学校現場での体操指導において、カースト制度による難しさ、山々に囲まれた学校ならではの苦労など、ネパールらしいエピソードや山斜面を使った滑り台が子どもたちの格好の遊び場だったことなどを紹介していました。

ネパールでの活動を聞いた生徒さんからのコメントもご紹介します。
・生活には恵まれていなくとも、放課後の子どもたちは天然滑り台が1日の中にある一番の幸せだと聞いて、どんな状況でもそこで幸せを見つけるのは自分次第だなと感じました。
・今回の話でカーストと民族が印象に残りました。今の時代にそんなはっきりと残っているとは私は思っていませんでした。信じがたいことでしたが、彼らにとってはそれも大切な文化の1つだと考えると否定なんて絶対にできないし、するべきではないということがよくわかりました。
・「カーストや民族が共存している」ということに驚いた。カーストが存在する中でも、学校に行ったり、友達と仲良く遊んだりすることができるのだと思った。

(3)国際支援について考えてみよう

グループで話し合っている様子

生徒の皆さんとネパールの衣装でハイチーズ!

休憩をはさみ第2部では、実例をもとにしたクイズを出題し、国際支援について考えてもらっていました。
『Q.ネパールのある村で3つの課題が見つかりました。あなたはその一つしか支援できません。さて何を優先しますか?』
① 水道   ②電気  ③道路
まず個人で考えた後グループで1つの意見をまとめ、発表してもらいました。

みなさんなら、この問いに対してどのように考え、答えますか?生徒さんたちもいろいろなことを考え、意見交換してグループの意見をまとめていました。

第2部のワークでの生徒さんの感想をご紹介します。
・国際協力に正解はないことを感じた。
・加藤先生が支援をすることが正しいのかどうか葛藤したとおっしゃっていて、驚いた。漠然と支援は正しいことだと思っていたけれど、自分が正しいと思っていることが本当に正しいことなのか見つめ直すきっかけになった。

最後に、今回の出前講座を通して、生徒の皆さんからの感想文には、「20歳からJICA海外協力隊に応募できるということであと数年後から機会があれば是非応募してみたいと思った」という感想や、「一つ違う文化に飛び出してみることで気づくことがたくさんある、将来JICAを通して海外で何か人の役に立ちたいと思いました」といった未来の海外協力隊員を思わせるコメントもありました。

JICA富山デスク 松山優子