未来の看護師・保健師のみなさんへエール!世界とつながる仕事

2021年12月24日

2021年12月8日(水)に富山県立総合衛生学院の保健学科の皆さんを対象に「外国語コミュニケーション」という授業枠で、JICA国際協力出前講座を実施しました。前半は「国際協力とJICA事業について」、後半は「異文化理解、外国への支援の実際について」というテーマで2名の講師でプログラムを構成しました。
この富山県立総合衛生学院は本年度をもって閉院となります。昨年度まで、看護学科の皆さんにも国際看護の授業で出前講座を行い、長年にわたり、JICA北陸とのつながりを大切にしていただきました。実際にこちらの卒業生が協力隊員となったケースもあり、出前講座も未来の協力隊につながる授業となっていました。今年度で最後となった出前講座を紹介いたします!(報告:JICA富山デスク 松山優子)

出前講座のはじまりは、アイスブレイクから!

アイスブレイクの様子

多くの出前講座のはじめに行うことの一つとして、アイスブレイクがあります。これはその名の通り、その場の緊張した雰囲気をほぐし、講義に集中してもらう、もしくはグループ分けをするために、そして参加者同士が意見を言いやすいようにするためなど、様々な目的をもって行います。授業につながる気づきになるアイスブレイクを考えるのも講師の手腕の見せ所です。気づきがあることで、ハッとさせられ、参加者は講座に引き込まれます。そんな演出ができないかいつも試行錯誤しています。今回は、参加者自身の気持ちを問うものを初めに用意しました。第1問「海外に興味がある」、第2問「将来(多少なりとも)海外に住んでみたい、海外で仕事をしてみたい」という質問に対し、「はい」「どちらかといえばはい」「どちらかといえばいいえ」「いいえ」で部屋の四隅に分かれてもらいました。今回の参加者層を知るきっかけにもなり、かつ今日は「海外」の話をするのだ、そして自分の気持ちについても考える日なのだと実感してもらいます。
他にも、二人組となり、1~5までの数字を足したり、引いたりすることで相手の気持ちに寄り添うことへの難しさなどを知ってもらったりしました。ゲーム感覚で楽しみ、時に歓声が上がり、講座の雰囲気がとても明るくなりました。

===参加者の皆さんの声===
・アイスブレイクから始まり、クイズ等を取り入れ、楽しみながら国際交流(異文化交流)について学ぶことができました。
・実際に体を動かしながら授業を受けることができ、楽しかったです。

「とても楽しい授業だった」という感想が多く、授業というのはこうした「楽しい」という気持ちによって興味を持ち、印象に残るものだと思います。出前講座は一度きりの講座かもしれません、だからこそ、この出会いを大切にしながら、授業を組み立てています。

なぜ国際理解・国際協力は必要なのか?

「やさしい日本語」ペアワークの様子

このテーマは、世代や場所に関係なく、私たちが行うJICA国際協力出前講座でも大事な肝となる部分です。それが分からなければ、なかなかこの講義の重要性について理解することは難しいです。外部講師に依頼してまでも国際理解・国際協力について考える理由を知り、理解を深めてもらいます。
国際協力の前に、国際理解が必要な理由にも触れます。世界がボーダーレス化し、日本にも多くの在住外国人がいる現状。私は海外に興味もないし、行くことも住むことはないと言っている人でも否応なしに外国人の方々と関わる機会が増えていることを学んでもらいます。
こうした現状を踏まえながら、「やさしい日本語×医療」と題し、ペアワークで「やさしい日本語」に変換してみる体験をしてもらいました。医療現場では特に「やさしい日本語」を活用してもらいたい状況が多くなります。「実践」に触れることで本講座の意味を再確認してもらいます。
そして国際協力を行う理由にはたくさんの意見があるとは思いますが、私の出前講座では、相互依存や地球規模の課題だけでなく、日本が世界中から支援を受けてきた歴史や震災での経験について話をします。国際協力は、助けあいであり、お互い様であることを知ってもらい、JICA事業や海外協力隊について話をします。

===参加者の皆さんの声===
・やさしい日本語について演習を踏まえることで、理解が深まりました。日本で生活していても海外の方と接する機会は多くあると思うので、やさしい日本語を意識してコミュニケーションを図っていきたいと思いました。
・日本と海外とのつながりを知ることができ、様々な価値観に触れることができました。

保健師としての公務員キャリアをやめ、協力隊に参加して得たもの

オンライン講座に聞き入る学生の皆さん

オンライン講座の様子

後半は、オンラインにて「保健師」としてアフリカ東部のジブチ共和国で活動され、現在JICA国際緊急援助隊で働いている幅野由樹子(はばのゆきこ)さんに、保健師としてのキャリアや協力隊での経験について、現地での映像も交えながらお話いただきました。
幅野さんから初めに「10年後、20年後のなりたい自分から今の自分を考える」ということを今日は一番に伝えたいと発言がありました。学生の皆さん自身にもキャリアについて考えてみてほしいということを明確にしてくださいました。またご自身のキャリアについてお話しすることで、保健師を目指す皆さんのキャリアにも寄り添った形となり、より現実味を帯びた話となりました。「なぜ協力隊にいくことにしたのか、そこで実際に行った活動はどういったものだったのか、協力隊後はJICA国際緊急援助隊でどういった活動をしているのか」といった一つ一つの出来事に対し、丁寧にお話しくださいました。
医療職を目指す人々は、人々を救いたいという気持ちが強いのかもしれません。そのため、ジブチでの貧困、子どもの死、近くに病院がないなど、厳しい現実を突きつけられ、人生観が変わったという話は、学生の皆さんの心にも響いたと思います。また幅野さんの「世界を平等にはできないけど、不公平な世界を少しでも公平な世界にできるのではないか」と考え、行動しているという言葉には説得力がありました。

===参加者の皆さんの声===
・子どもの死を目の当たりにするのは非常に心が痛くなる環境だと感じました。不平等な中で、どれだけ目の前の人が求めているものを提供できるか。自分の知識や技術を高めていく必要性をひしひしと感じました。
・「10年後の自分、20年後のなりたい自分から今の自分を考える」が心に残っています。今のことに精いっぱいとなっていることが多いので、先のことを考える時間を作っていきたいと思いました。
・これまで看護師や助産師が海外で活動しているイメージがありましたが、保健師でも発展途上国で保健活動行っていることを初めて知ることができました。
・保健師として活動された内容を一つ一つ丁寧に説明してくださった点も、今の学習過程とむすびつけながら理解をより深める効果があったと感じました。


【JICA富山デスクより】富山県立総合衛生学院 看護学科・保健学科の皆さん、長年にわたり、JICA事業や海外協力隊について話をする機会をいただき、本当にありがとうございました。心から感謝申し上げます。医療現場等で専門職として仕事をしていく方々から、未来のJICA海外協力隊が輩出されることを期待するだけでなく、多文化共生社会の中でのますますのご活躍を祈念いたします。