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【研修員受入事業】福井県鯖江市の事例を元に、産業振興と女性活躍について学びました! Learned about the industrial development and women empowerment in Sabae City through “Regional Understanding Program”!

2022年3月31日

参加したJICA留学生と一緒に、はいチーズ!

JICA北陸で初開催となる「地域理解プログラム」を3月15日から17日の日程で実施し、JICA留学生14名が参加しました。女性の活躍が注目される福井県鯖江市やフィリピン、彼ら自身の出身国の事例を通して、「産業開発、地域開発のためには女性活躍が重要」という気づきが得られました。(JICA北陸 野吾奈穂子)
14 JICA Scholars attended 1st “Regional Understanding Program” by JICA Hokuriku from March 15 to 17, 2022. They learned importance of women empowerment for industrial and regional development through the examples of Sabae City known as an women empowerment town, and Philippines and their countries.

意外と知らない、自分たちの地域の取組み。地域のことを学ぼう!

【画像】日本各地の大学院で学ぶJICA留学生に、彼らが暮らしている日本の地域の歴史や経済、取組みについて学ぶ機会を提供するため、JICAでは「地域理解プログラム」を実施しています。JICA北陸が注目したのは、福井県鯖江市。働く女性の割合が全国ナンバーワンの女性活躍県である福井県の中でも、さらに女性活躍で注目される鯖江市は、眼鏡、繊維、漆器産業が盛んな地域です。単に地域のことをJICA留学生に知ってもらうだけでなく、産業開発、地域開発のためには女性活躍が重要な要素であることを理解してもらうため、3日間にわたるプログラムを企画し、金沢大学と金沢工業大学の大学院で学ぶJICA留学生14名(インドネシア10名、カンボジア、キルギス、ザンビア、ガンビアから1名ずつ)が参加しました。講義概要は以下のとおりです。

●講義1:「女性が輝くまちづくり~ジェンダー平等こそが輝く未来への鍵~」
仲倉由紀(さばえSDGs推進センター副所長)
・鯖江市では、眼鏡(1905年)、繊維(江戸後期)、漆器(約1500年前)産業は長い歴史があり、家族経営が多い。そのため、古くから女性も働き、また、2世代、3世代同居が多く、育児を祖父母が担う女性が働きやすい環境も存在した。
・鯖江市では、大学進学のために一度鯖江市を離れた女性が地元に戻ってこないことが課題。大学卒業後にUターンしてもらえるよう、ふるさとの魅力を伝え、若者の意見を施策に反映するため女子高校生(JK)が地方行政に参画するJK課を創設。
・女性が活躍するための課題は、①仕事と家事を担う女性の負担軽減、②家庭内での役割分担の改善、③職場の理解。

●講義2:「日本における地域産業の特徴と産業政策の方向性~福井地域をモデルに~」
南保勝(福井県立大学地域経済研究所長・教授)
・福井県の眼鏡、繊維などの産業の発展には、①江戸時代から織物業で活躍していた女性が明治以降、繊維産業の担い手となったこと(歴史)、②浄土真宗の教えが勤勉で粘り強い人々を作り出したこと(宗教)、③三世代同居が多く、女性の社会参加に有利な条件があったこと(地域風土)の3点が貢献している。
・女性の更なる活躍を進め、産業、コミュニティを発展させるためには企業間、企業と行政との間のコラボレーションによる女性が働きやすい環境整備等が重要。

●講義3:「フィリピンにおける女性活躍と開発:課題と対応策の共有」
リチェル・アロガンシア(筑波大学のJICA留学生、フィリピン国家経済開発庁職員)
・フィリピンはジェンダー平等の優等生で、のジェンダーギャップ指数の順位はASEAN地域でナンバーワンの17位(2021年)。
・政治分野における女性参加の現状は女性の上院議員12名中5名、下院議員243名中68名、知事81名中12名、また企業などでの女性の割合は最高財務責任者(CFO)が38%、人事部長36%、最高執行責任者(COO)が23%と、女性の参加は進んでいるが、もっと改善する必要がある。
・JICAフィリピン事務所に駐在経験のある野吾職員とフィリピンにおけるジェンダー平等についてクロストークを行い、現地の生活を通してのジェンダー平等、女性活躍に関する課題、取り組みを共有した。

●講義4:「ジェンダー平等に向けて—日本と各国の現状は?—」   
加藤まどか(福井県立大学学術教養センター准教授)
・世界の現状として、JICA留学生の出身国のジェンダーギャップ指数の順位を見てみると、ザンビア56位、インドネシア101位、カンボジア103位、キルギスタン108位、日本120位(2021年)。
・日本の現状として、政治分野では女性割合は、衆議院議員9.7%、参議院議員23.1%であり、経済分野では女性の就業者の割合は44.5%、管理職の割合は13.3%と低く、日本特有の長時間労働、女性が担う家庭責任、女性に不利な雇用システム等が大きな要因である。

盛り上がったグループトーク!日本人の私たちも勉強になりました

短時間でしっかりまとめてくれました

白熱するグループトーク!

講義の後はグループに分かれて、JICA留学生それぞれの国の課題点、ジェンダー平等、女性活躍を実現するためのアクションについてディスカッションをしてもらいました。
課題として「男性は外で働き収入を得、女性は家庭を守るという習慣があり、企業は女性は結婚し、妊娠出産をすることから雇用に積極的にはならない現状がある」、今後必要なアクションは「ジェンダー平等教育の推進、フレキシブルな労働環境、男性への出産・育児休暇の付与、妻のキャリア形成へのサポートに関する夫の理解増進」といったコメントがありました。

私も運営側としてこのプログラムを聴講しながら、JICA留学生の国でも日本と似たような、「男性は外で働き、女性は家を守る」という性別による役割分担が残っていることを学びました。開発途上国の国々のほうが日本よりは進んでいるという印象があっただけに、JICA留学生たちのコメントに改めて気づかされることが多かったです。一方で私が駐在したフィリピンはASEAN地域ナンバーワンの女性活躍国。確かにふり返ってみると、たくさんの女性が政府や自治体、大学などで働いていましたし、リーダーを務める女性もたくさんいました。フィリピンの話をしてくれたリチェルに「どうしてフィリピンは進んでいると思う?法律や制度はどの国でもある程度整備されているし、もちろん日本にもあるのに、ジェンダー平等が進まないのはなぜ?」と聞いたら、うーん、と頭を悩ませながら答えてくれたのは、「たぶんフィリピン人は柔軟なんだと思う。『いいことなら、まずやってみよう』というタイプ」というコメント。なるほど。心に刺さりました。

また、私自身も女性ですが、講師のお話を聞きながら、日本では長時間労働をした人が評価される仕組みがあったために子育てをする女性への心理的負担も大きかったことを改めて学びました。従来の性役割からの移行期と核家族化が並行して訪れたために、子育て世帯への負担も増え、そういった様々な要因が少子化につながったのかも知れません。

社会を作るのは、法律でも制度でもなく、私たち一人一人の意識や取組み、具体的なアクションです。地域理解プログラムを通じて、参加したJICA留学生も私たち関係者も、ジェンダー平等と産業振興について学びあうことが出来ました。

さあ、北陸での次なるテーマは?
次回も深い学びにつながるような、ワクワクする企画を考えていきたいと思います!
                                       以上