大阪・関西万博を支える、JICAの知られざる取組み

2025.08.06
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- 関西センター 徳橋和彦
大阪・関西万博では、JICAが協力している多くの開発途上国が参加・出展しています。万博会場でJICAの存在を感じることは少ないかもしれませんが、実はJICAは多くの取り組みを通じて万博に協力しています。
みなさん、大阪・夢洲(ゆめしま)で開催されている万博には行かれましたか?158の国・地域が参加している中、その約7割の国とJICAは協力事業を実施しており、万博会場内でもJICAの取り組みに触れることができます。今回はそうした場所をご案内します。
万博会場で来場者を迎えるミャクミャクモニュメント像
まず足を運んでいただきたいのが、コモンズ(共同館)。大屋根リングの内側にあり、予約なしで入れます。長時間待つこともなく、連日多くの人で賑わっています。JICAはこのパビリオンに深く関わっています。
2023年3月から2024年7月にかけて、JICAは万博に出展を予定していた84か国の関係者に対し、魅力的な展示ができるよう、日本での実地指導も含めて協力しました。対象の大半の国は、コモンズのA、B、D各館(「タイプC」)で展示しています。
これまでの万博の共同館は「アフリカ館」など地域で分かれることが多かったのですが、今回は万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」の下、3つのサブテーマに分かれて展示されています。A館がEmpowering Lives(いのちに力を与える)、B館がConnecting Lives(いのちをつなぐ)、D館がSaving Lives(いのちを救う)です。JICAは各国がこのサブテーマに沿った出展計画を作成できるように協力してきました。
コモンズ以外でも、エジプト、カンボジア、セネガル、チュニジア、バングラデシュ、ベトナム、モザンビーク、ヨルダンの8か国の展示にも同様にJICAが協力しました(これらは「タイプB (博覧会協会が建てた施設内に独立した展示スペースを設ける形態)」)。
ちなみに展示の中で日本の国際協力を紹介頂いていることが確認できたのは、ウガンダ、ガーナ、サモア、バヌアツ、パラオ(以上、コモンズA館)、ドミニカ共和国(コモンズB館)、ブータン(コモンズD館)、バングラデシュなどです。どのように紹介されているのか、是非会場を訪ねてみて下さい。
コモンズに掲げられているインフォメーション
(右下には「展示企画の基本構想においては、独立行政法人国際協力機構(JICA)の支援事業と連携し推進してまいりました」と記載されています。)
万博西ゲートから入場すると、すぐ右手に白いお椀をかぶせたような建物が目に入ります。「ジュニアSDGsキャンプ」です。ここでは小学生から高校生までを対象としたプログラムが日々行われています。この中で派遣中のJICA海外協力隊員が講師を担当しています。スクリーンに映し出された隊員達が派遣国からオンラインで現地の様子をリポートしたり、万博会場の参加者からの質問にライブで答えてくれたりします。
万博会場と隊員が交流している姿は、毎回JICA関西に設置された大型LEDビジョンにもライブで映し出しています。神戸にお越しの際はぜひご覧下さい。
なお、隊員が講師を担当する日はJICAのHPで確認することができます。
ジュニアSDGsキャンプ外観
JICA関西の大型LEDビジョンでジュニアSDGsキャンプのライブ中継を視聴する訪問者
ジュニアSDGsキャンプを出てEXPOアリーナを左に見ながら更に先へ進むと、右手に木の葉のような屋根が連なる「フューチャーライフヴィレッジ」が見えてきます。その中の「ベストプラクティスエリア」ではJICAの取組みがパネルと動画で紹介されています。
フューチャーライフヴィレッジ外観
万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を実現するための活動が「共創チャレンジ」です。JICAと兵庫県が2007年から共同で設置している国際防災研修センター(DRLC)が取り組む共創チャレンジ「共創の力で築く持続可能な未来:JICA関西/DRLCの防災プラットフォーム」は、国内外の二千を超える活動の中から25件の「ベストプラクティス」の一つに選ばれました。万博開催期間中、JICAの取組みが常設展示で紹介されているのです。来場者は共感したプロジェクトに関連するテーマのリボンキーホルダーを持ち帰ることができます。毎日先着100名で人気があるのですぐなくなるとか。午前中早めの来場をお薦めします。
ベストプラクティスの展示(緑色の掲示がJICA関西/国際防災研修センター(DRLC)との取組みを紹介)
その他、JICAは万博のシグネチャーパビリオンの一つである小山薫堂氏がプロデュースした「EARTH MART」において、世界に実在する家族の1週間分の食料を可視化した「世界のレシート」を集めることにJICAが協力しています。またこれまで様々なイベントも主催・共催してきました。今後も幾つかのイベントが予定されていますのでぜひJICAのHPをチェックして訪問してみて下さい。
EARTH MARTに展示されている「世界のレシート」
1970年の大阪万博。私の通っていた幼稚園には、当時一般的ではなかったカラーテレビがありました。そのテレビで開幕式を先生や友達と一緒に見たことを今でも覚えています。華やかで見たことがない世界が広がっていました。当時「未来」といえば万博でした。「万博に絶対に行きたい!」と駄々をこねて親を困らせたものです。当時新潟に住んでいた私にとって大阪はとても遠いところ。幼い私の夢が叶うことはありませんでした。それから55年の時を経て再び万博が大阪で開催されることとなり、その夢を実現することができました。
万博会場では幼い子どもたちの姿もよく見かけます。彼らの記憶にJICAが残ることは難しいかもしれません。しかしJICAが参加、協力した万博の体験は強く心に刻まれることでしょう。JICAではHPに「JICA万博モデルコース&見どころガイド」 を公開しています。ご参考にして下さい。
JICA関西を取材した須磨学園夙川中学校の映像が、兵庫県主催の映像コンテストで入賞。万博会場の表彰式で受賞した生徒さんたちと撮影(左は筆者)。映像は万博期間中関西パビリオンの兵庫県ゾーンで放映されている。
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