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荒天の中、48時間の訓練を完遂!国際緊急援助隊(JDR)救助チーム総合訓練

2025.03.25

国際協力機構(JICA)は、3月1日から同5日、海外の大規模災害に対して派遣される国際緊急援助隊(JDR:Japan Disaster Relief Team)救助チームの実際の捜索活動を想定した実践的な総合訓練を実施しました。激しい雨風が吹きつける中、今年も北海道から沖縄まで各地から選抜された救助チーム隊員75名が、兵庫県広域防災センターにて、実派遣を想定した48時間連続のシミュレーション訓練に挑みました。

被災国到着後の48時間が勝負、初顔合わせの隊員が要救助者の捜索救助に息を合わせる

JDR救助チームのレスキュー隊員は、全国の警察・消防・海上保安庁から特別な訓練を受けて選抜された精鋭たちで構成されており、平時はそれぞれの所属先にて、救助技術の向上に励みながら国内災害に対応しています。実際に国際災害への派遣が決定した際は、その時に対応可能でJDR訓練経験のある隊員が選抜されることになるため、レスキュー隊員の多くは空港参集時にお互いに初めて顔を合わせることになるのです。

総合訓練ももちろん同様の条件で実施します。災害時の人命救助の現場では、「72時間の壁」について度々言及されますが、JDRが派遣されるのは海外の現場となるため、被災国への到着時には、発災からすでに24時間もしくはそれ以上が経過している可能性が高く、到着後のおよそ48時間が人命救助の勝負の時間となります。バックグラウンドの異なる隊員同士がチームを組み、通常と異なる条件の下で、いかに息を合わせ迅速に救助活動が展開できるか。国際緊急援助隊の総合訓練では、救助手法のみならず、こうした独特かつ困難な環境下で救助活動を行うための集中力や団結力、調整力など総合的な能力の強化や向上が求められています。

専門的な技能により救助活動を支える専門家チーム

JDR救助チームの救助活動は、レスキュー隊員だけで行われるのではありません。被災建造物の中からいち早く生存者を発見する救助犬とハンドラーの他、損壊した構造物においてレスキュー隊員が安全に捜索・救助活動を行えるよう被災建造物の構造評価を行う構造評価専門家、そして隊員の健康管理や傷病対応、要救助者への緊急処置を行う医療班が、被災現場でレスキュー隊員の救助活動を支えています。

特に、国内の災害現場ではあまり見かけない構造評価専門家は、「Heavy(重)」級の国際認証を持つ国際緊急援助隊が、都市型捜索救助活動にかかる能力評価を行う国際捜索救助諮問グループ(INSARAG:International Search and Rescue Advisory Group)の規定に則って配置している専門家。被災建造物において救助活動中の二次被害が起きないよう、倒壊の危険性がある建物の安定化や壁や瓦礫の固定に対してアドバイスを行っています。近年、国内災害現場においてもこうした構造評価専門家の知見を求める声も上がっており、捜索・救助活動において重要な役割を担っています。

国際認証チームとしての責任、求められるのは国際調整力や他チームとの連携

BoO(Base of Operation)と呼ばれる活動拠点では、警察から派遣される通信班が被災現場に出動する2つの中隊と指揮本部との間の確実な交信を支え、またロジ面からチームを支える業務調整員が、人員/資機材の輸送、通訳やドライバーとの調整、隊員の居住環境整備や食事の提供、情報収集や必要物資の調達など、多岐に渡る活動を通じてチームを支えています。業務調整員は、JICA職員等からなる国際協力のエキスパート達です。

また、INSARAGは国際認証を有するチームに対し、迅速な派遣や自己完結型の活動だけでなく、救助活動に対する安全性や質の高さ、被災国政府・国際チーム間の調整などより高いレベルでの貢献に期待しています。特に、被災国に負担を掛けないよう、他国から被災地に駆け付ける救助チーム群が被災国政府との効率的な調整のもと効率的かつ自律的に活動できるよう、チーム間の調整枠組みを定めており、認証チームには、この枠組みの実施運営におけるリーダーシップも求められています。

JDR救助チームの総合訓練では、そうした国際連携の必要性を理解し、自国のチームに関する情報の発信や被災現場についての情報提供、他国が発信した情報の把握や迅速な反応、そして国際調整枠組みの運営への参加なども訓練内容に取り入れ、国際調整面での隊員の能力向上を図っています。

JDR総合訓練は、隊員数を上回る100名近い関係者の協力を得て運営されています。本訓練では、過去の派遣経験者や訓練経験者によって新しい隊員の能力向上が支えられているだけでなく、訓練現場を貴重な機会と捉え、次の災害救助に向けて更なる学びを得ようと全国各地から関係者が駆けつけてくれるお陰で、JDR救助チームの総合力向上が支えられています。

JDR訓練での学びが国内での救助活動に生かされ、また国内の活動で得た知見を海外の現場に生かすなど、今後も知見の還流が促進され、さらに高いレベルでのチームづくりに繋げられるよう取り組みを推進してまいります。

関連リンク

  • サンテレビニュース(2025年3月3日掲載)
  • 朝日新聞(2025年3月4日掲載)
  • 2023年度の総合訓練
  • 2022年度の総合訓練

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