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- 感染症対策 日本の技術が命を守る mundi 2018年12月号
- 備えと危機対応
-「強靭な保健システム構築」をめざして-
技術と知識・経験を用いて、JICAは感染症の「早期発見、早期封じ込め」に挑むためのシステムづくりを行っている。
システム構築に向けたその取り組みを見てみよう。
強靭な保健システム構築とは
急速に拡大する感染症にどう立ち向かうのか
感染症は初期対応の如何によってはまたたく間に広がっていってしまう恐れがある。黄熱病やコレラ、エボラウイルス病など、発病や進行の経過が急であるものならなおさらだ。一番の対策は「早期発見、早期封じ込め」だと言われている。
現在JICAでは、この「早期発見、早期封じ込め」のため、平時の備えと危機発生時の対応を一貫する「強靭な保健システム構築」を推し進めている。「感染症に対する平時の準備、起こった時の対応、そしてまた平時への移行というサイクルにおいて感染症の流行の影響を最小限にとどめる強固なシステムをつくっておくことで、感染症拡大を防げると考えています」と人間開発部の平岡久和さんは言う。
いつでも正確な情報を入手できる制度構築や、感染の有無をいち早く確認するための研究開発、感染症が発生した国の人びとが状況を判断し、対策チームを組織し、そのリーダーを育成することで感染症の拡大を防ぐ-平時の対策とともに、緊急時にはその平時の成果を活用するシステムの構築を目指している。
これまでJICAが感染症対策として途上国で行ってきたさまざまなプロジェクトや活動の成果が、そうした強靭な保健システム構築のための一端を担う。たとえば制度構築においては、ケニアで長崎大学と共同で行ったプロジェクトで開発された、携帯電話を使った感染症の発生を調査監視するmSOS(情報システム)(注1)が有効だ。また、研究開発では、ザンビアで北海道大学と行われたプロジェクトの研究成果を使って「デンカ生研」と開発した、感染の有無を迅速に検査できるキット(注2)などがある。このキットは、2018年5月のコンゴ民主共和国(以下、コンゴ民)におけるエボラウイルス病流行では、同国政府の要請に基づいてデンカ生研から無償提供され、流行の最前線で迅速診断に貢献した。また、長崎大学や北海道大学では、各国の検査機関職員や保健省の行政官を留学生として受け入れて、感染症対策でのより高い技術の習得とリーダー人材の育成のプログラムをスタート(注3)。現地での理解と正しい知識を広げ支える人材を育てている。
「強靭な保健システム」が構築されれば、感染症の蔓延が防げ、たくさんの命が救われることになるだろう。
強靭な保健システム構築とは
感染症健康危機発生時の対応
平時の成果活用による早期発見、早期封じ込め、感染症対策チームによる緊急援助
感染症流行がない平時の備え
制度構築、研究開発、人材育成、住民への健康教育
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