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メキシコ×日本 -新型コロナウィルスの影響を受けた子どもたちの心のケアに関するセミナーを開催-

掲載日:2020.07.09

イベント |

概要

  • 会議名:オンラインセミナー「新型コロナウィルスの影響を受けた子供たちの心のケア」
  • 開催日:2020年7月7日
  • 主催:メキシコ治安市民保護省、メキシコ国家市民保護調整機関(CNPC)、メキシコ国立防災センター(CENAPRED)、メキシコ外務省・国際開発協力庁(AMEXCID)、メキシコ市市民保護局(SGIRPC)、国際協力機構(JICA)の共催
  • 講師:兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科 特任教授 諏訪 清二氏
  • 場所:オンラインシステムを活用

主な参加者

メキシコや中南米地域の学校教員、教育・防災を所管する公的機関職員、NGO職員、JICA関係者など約6,500人

背景・目的

  • メキシコにおける新型コロナウィルスの累積感染者数は28万人、死者数は3万3,000人(2020年7月9日現在)を超えるなか、子どもたちの心の健康が懸念され、学校での迅速かつ効果的な対応が求められています。
  • JICAは2016年より実施中の地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)「メキシコ沿岸部の巨大地震・津波災害の軽減に向けた総合的研究」の活動として、ゲレロ州やメキシコ市を中心に教員や子どもたちへの防災教育を推進しています。
  • このSATREPSプロジェクトで協働しているメキシコの防災関係機関との議論の結果、学校現場や家庭における子どもたちの心のケアが急務であることが確認されました。
  • このようなニーズを踏まえ、災害時の子どもたちの心のケアに長年携わってきた諏訪清二氏を講師として迎え、日本の災害管理・防災教育の知見を踏まえた実践的な指針を共有するためのオンラインセミナーを開催しました。

内容

本セミナーは、コロナ禍で日々の生活に不安を抱える子どもたちのケアをどう進めるべきか、そのために学校は何ができるか、といった教育現場の問題意識に対応すべく実施され、メキシコ市や各地の学校関係者を中心に約6,500人が参加するなど、非常に高い注目を集めました。

冒頭、諏訪氏は日本政府の休校要請等の取り組みや、持続的な学校運営のガイドラインに触れながら、日本の教育行政の対応について概要を説明しました。そのうえで、日本赤十字社の提唱する新型コロナウィルスの3つの顔<病気そのもの><嫌悪・偏見・差別><不安と恐れ>に着目し、このような多面的な問題に対して、学校が有効な対策を進められることを強調しました。

  • 「子どもたちに手洗いやマスク着用を徹底させる。規則正しい生活を呼び掛ける。不安をあおるのではなく、COVID-19について科学的に正しい知識を教え、子どもたちの心に寄り添う。学校だからこそこのような教育を徹底できるのです。」

次に、学校現場や保護者からよく寄せられる悩みとして、子どもたちの不安や甘え、親の不安、生活リズムの崩れなどの声を紹介し、実践的な対処法を示しました。

  • 「子どもたちが落ち着かない、眠れないときには、『感染症のニュースばかりで誰でも不安になるよ。不安な気持ちは、全力で立ち向かっている証拠だよ』このように声をかけて、子どもたちの理解を促してください。」

講演の後半、諏訪氏はCOVID-19を災害と位置づけ、災害時の3つの反応として<トラウマ反応><喪失反応><継続するストレス反応>を紹介しました。トラウマ反応に対しては安心感を保障する、喪失反応に対しては寄り添う、継続するストレス反応に対してはその原因を除去・軽減する、といった心のケアの基本的な考え方を提示しました。

  • 「二度と危険な目に遭うことはないという安心感、私がいつもそばいるという安心感、あなたの辛さは誰にでも起こる正常な反応なのだという安心感。これら3つの安心感という考え方はたいへんわかりやすく、心のケアに役に立つと考えています。」

最後に、学校は知識や技術の伝授だけでなく、集団の中で学びあい人間性を養う場であるという点を強調、ゆえに徹底した感染防止対策と心のケアで子どもたちを守りながら、学校を再開していく必要性を訴えました。

参加者からはメールとチャットを通して多数の質問が寄せられました。講演後の質疑応答のなかで、諏訪氏は特に質問の多かった特別支援学級の生徒への対応に触れ、例えば行動パターンの変化を嫌う知的障がいの子どもに対しては寄り添って安心感を与え、可能なら保護者に学校まで同行してもらうなど、障がいの種類や程度に応じた個別の対応が重要と述べました。
また、学校や教室内での教育活動の具体的な進め方についてもさまざまな質問が寄せられました。諏訪氏は日本の取り組みを踏まえて、密にならないよう午前と午後で分散登校する、体育館や広い教室を使う、学校の設備や食器等を消毒する、マスクを購入できなければ布で手作りをする、といったアドバイスを提供し、あわせて学校の負担を軽減するため公的支援の必要性を指摘しました。

今回のセミナーを機に、学校現場や政府機関において子どもたちの心のケアの進め方がさらに議論され、メキシコや周辺国における子どもたちの心の健康の促進に寄与することが期待されます。

【画像】

セミナーの様子