メキシコ×日本 -新型コロナウィルスの影響を受けた子どもたちの心のケアに関するセミナーを開催-
掲載日:2020.07.09
イベント |
メキシコや中南米地域の学校教員、教育・防災を所管する公的機関職員、NGO職員、JICA関係者など約6,500人
本セミナーは、コロナ禍で日々の生活に不安を抱える子どもたちのケアをどう進めるべきか、そのために学校は何ができるか、といった教育現場の問題意識に対応すべく実施され、メキシコ市や各地の学校関係者を中心に約6,500人が参加するなど、非常に高い注目を集めました。
冒頭、諏訪氏は日本政府の休校要請等の取り組みや、持続的な学校運営のガイドラインに触れながら、日本の教育行政の対応について概要を説明しました。そのうえで、日本赤十字社の提唱する新型コロナウィルスの3つの顔<病気そのもの><嫌悪・偏見・差別><不安と恐れ>に着目し、このような多面的な問題に対して、学校が有効な対策を進められることを強調しました。
次に、学校現場や保護者からよく寄せられる悩みとして、子どもたちの不安や甘え、親の不安、生活リズムの崩れなどの声を紹介し、実践的な対処法を示しました。
講演の後半、諏訪氏はCOVID-19を災害と位置づけ、災害時の3つの反応として<トラウマ反応><喪失反応><継続するストレス反応>を紹介しました。トラウマ反応に対しては安心感を保障する、喪失反応に対しては寄り添う、継続するストレス反応に対してはその原因を除去・軽減する、といった心のケアの基本的な考え方を提示しました。
最後に、学校は知識や技術の伝授だけでなく、集団の中で学びあい人間性を養う場であるという点を強調、ゆえに徹底した感染防止対策と心のケアで子どもたちを守りながら、学校を再開していく必要性を訴えました。
参加者からはメールとチャットを通して多数の質問が寄せられました。講演後の質疑応答のなかで、諏訪氏は特に質問の多かった特別支援学級の生徒への対応に触れ、例えば行動パターンの変化を嫌う知的障がいの子どもに対しては寄り添って安心感を与え、可能なら保護者に学校まで同行してもらうなど、障がいの種類や程度に応じた個別の対応が重要と述べました。
また、学校や教室内での教育活動の具体的な進め方についてもさまざまな質問が寄せられました。諏訪氏は日本の取り組みを踏まえて、密にならないよう午前と午後で分散登校する、体育館や広い教室を使う、学校の設備や食器等を消毒する、マスクを購入できなければ布で手作りをする、といったアドバイスを提供し、あわせて学校の負担を軽減するため公的支援の必要性を指摘しました。
今回のセミナーを機に、学校現場や政府機関において子どもたちの心のケアの進め方がさらに議論され、メキシコや周辺国における子どもたちの心の健康の促進に寄与することが期待されます。
セミナーの様子
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