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JICA開発大学院連携:第三回連絡協議会を開催

掲載日:2020.11.06

イベント |

-JICA開発大学院連携の進展とポスト・コロナにおける人材育成・留学生事業の方向性について大学関係者とJICAが議論-

国際協力機構(JICA)は、11月6日、「JICA開発大学院連携 第三回連絡協議会」を開催しました。会合には、全国から68大学182名に参加いただきました。

JICA北岡伸一理事長メッセージ

北岡理事長より以下の点に触れた上で、今後のJICA開発大学院連携(JICA-DSP)の更なる進展について大学関係者の協力を呼びかけました。

1)JICA-DSPについて

  • JICA-DSPは2018年、日本政府の「明治維新150年」を記念した施策の一つとして発足した。日本の近代化の経験を伝え、各国で役立ててもらうことを主旨とする。大学関係者皆さまの協力のおかげでここまで展開することができ感謝する。更なる発展を目指し、海外展開として「JICA日本研究拠点設立支援事業(JICAチェア)」を開始した。先生方にも是非日本の近代化および開発経験について海外でご講義いただきたい。
  • コロナ禍で留学生の新規来日が止まっていたが、日本政府に特別入国許可をいただき順次進めている。これまでに帰国した留学生は多方面で活躍しており、日本で学んだことを自国の発展の役に立てている。日本のパートナーとして末永く活躍してもらうことを期待している。

2)ポスト・コロナを見据えたJICAの事業展開

  • コロナ禍は人間の安全保障に対する大きなチャレンジである。未曾有の健康危機において、改めて、長年協力してきた途上国との連帯・信頼関係が非常に重要だと認識した。コロナ禍を乗り越えるためには強靭な保健医療システムが必要であり、JICAは「予防、警戒、治療」を柱とする協力を推進していく。また、保健医療分野のみならず、防災、食糧安全保障、災害に強い都市づくり、衛生状況改善等の協力も併せて推進していく。

セッション1:『ポスト・コロナにおけるJICA事業、人材育成の方向性』

続いて、JICA開発大学院連携推進室 紺屋健一室長より、JICA-DSPの進捗及び今後の展開について説明し、参加者より、遠隔用コンテンツ開発への期待、JICAチェアの設置基準、今後の研修員受入や専門家派遣の方針等について質問・意見がなされました。

セッション2:『ポスト・コロナにおける人材育成・留学生受け入れのあり方』

セッション2では、保健医療と水道分野の具体的取組をご紹介するとともに、ポスト・コロナにおける人材育成・留学生事業の方向性について議論を深めるため、長崎大学、北海道大学、東京大学、より具体的取り組みをご紹介いただきました。あわせて、JICAからも地球環境部、人間開発部における取り組みを報告しました。

<保健医療分野を通じた人材育成>

1)「ポスト・コロナにおける人材育成・留学生受け入れのあり方」

JICA人間開発部 新型コロナウイルス感染症対策協力推進室 平岡久和副室長

  • 本感染症は、保健医療にとどまらず、教育・食糧・栄養・貧困等の分野、途上国、先進国問わず人間の安全保障に脅威を与えている。JICAはUHCの達成に向け、予防、警戒、診断・治療の三本柱で協力を強化する。続く大学の発表に関連する「警戒」に関しては、中核人材の留学生受入れを含む現地の拠点強化、拠点を通じた近隣国への人材育成等を実施中。
  • 予防及びそれに必要な強靭な社会システムの構築に関しては、保健医療分野にとどまらず、教育、水・衛生等、危機に強い社会システムの構築支援が必要。留学生についても、本邦での教育に加え、現地に戻ってからの研究のパートナーとしての活躍や活動の展開を期待。

2)「長崎大学における感染症対策人材育成と今後の展望」

長崎大学熱帯医学研究所 森田公一所長

  • 国境を越える問題に対応する、グローバルなリーダーシップを持った人材の育成が必要。研究に加え海外での実務経験等も通じ、実務的な(問題を解決する)能力を身に着けられるよう教育プログラムを構成。日本が各種病気を克服してきた歴史を伝え、自国への応用を考えてもらう。
  • 今後の更なる展開としては、新興感染症の発生時にリーダーとなる人材をアフリカで育成すべく、次世代人材育成センターの立ち上げを検討中。

3)「先回りパンデミック対策の実現に向けた感染症対策グローバルリーダー育成」

北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター 鈴木定彦センター長

  • COVID-19だけではなく、様々な新興感染症が発生しており、その8割以上は人獣共通感染症。自然界に存在していた微生物・病原体が開発に伴い人に触れ、蔓延する。あらかじめ対策を準備しておく先回り対策が重要。
  • 協力拠点のザンビアの能力向上を目指し長年協力を実施。本邦では、座学に加えインターンや疫学調査を通じて実践的な力も身に着けている。既に86名の人獣共通感染症対策専門家を輩出、国際機関、教育研究機関、産業界で活躍中。更に、感染症発生現場で陣頭指揮をとれる人材の輩出を目標としたグローバルエキスパートの育成プログラムも開始。発生を予測し、流行を予防する「先回り戦略」に貢献できる人材を輩出していきたい。

<水道分野を通じた人材育成>

4)「水道分野中核人材育成コースの概要と特色」

JICA地球環境部 岩崎英二部長

  • 水道サービスは生命と生活に欠かすことのできないエッセンシャルワークとして認識された。コロナによる危機に対処するため、緊急支援を実施中。ポスト・コロナにおいては、危機を乗り越える「成長する水道事業体」協力を促進し、3千万人の人々に安全な水を届ける。
  • 留学生事業においては、日本を始め国内外の水道関係者と重層的な関係を築き相互に助け合う人材、未曾有の危機に直面しても自ら考え実行に移す人材の育成を目指している。様々な危機を乗り越えてきた日本の経験を伝え、水道事業を担う社会的責任、長期的な視野を涵養し、危機や困難を乗り越え水道事業体をけん引する人材を育成していく。

5)「アジア諸国における水道分野人材育成事業の役割」

東京大学工学系研究科 滝沢智教授

  • SDGs(Goal6)への貢献を強く意識している。急増する都市人口に給水するための水資源開発と水道施設の拡張、老朽化した施設の補修と更新のための有収率の向上、水道施設更新・拡張のための財源の確保、が非常に重要。そのためにはサービスの向上と料金回収率の向上が必要であり、マネジメントの向上に向けた視野の広い人材の育成が重要。
  • JICA水道中核人材育成事業では、長期的な視野で計画を立案・実施できる人材、問題発見・原因究明・対策立案・実行する人材、広い視野を持ち、国内外の技術やマネジメントに関する情報を収集・活用できる人材の育成を目指している。研究や教育を通じて考える力を養い、実践的な力を身に着け、帰国後も継続的に事業に貢献することを期待。

6)質疑応答

これら発表に対し、留学生と日本人学生の割合や、費用負担に加え、感染症対策に留まらない平時での保健医療分野の強化の方向性や、各分野で有用な日本の経験や留学生に学ばせる工夫、現地の状況に対応する実践的な力の涵養方法、等について活発な質問がなされ、経験を共有しました。

セッション3:全体質疑・意見交換

セッション2における発表に対し、JICA開発大学院連携アドバイザーの熊本県立大学白石隆理事長、JICA緒方貞子平和研究所高原明生所長を交えて、留学生の帰国後のネットワークの構築や、オンライン授業の工夫の共有等、活発なコメントが出されました。コロナという未曽有な危機の状況下で、留学生事業の重要性を再認識し、互いに学び合い、経験を共有しながら留学生事業を推進していくことが確認されました。

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長崎大学熱帯医学研究所 所長 森田公一教授

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北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター センター長 鈴木定彦教授

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東京大学工学系研究科 滝沢智教授

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JICA北岡伸一理事長