東京栄養サミット2021公式サイドイベント「子どもたちに健やかな未来を-給食と栄養教育の可能性-」を開催

掲載日:2021.12.02

イベント |

日本政府主催の東京栄養サミット(12月7・8日開催)に先立ち、UNICEFとの共催で、各国及び各関係機関が取り組む栄養改善に関する最新の知見や経験を共有することを目的として、公式サイドイベントを開催しました。本サイドイベントでは、栄養不良の二重負荷への対策・実践を紹介するとともに、特に、母子を対象とした栄養改善のあり方や、健康的な食習慣の定着を促す栄養教育(日本の「食育」)・給食がもつ可能性を検証し、さらに、それを推進するための課題と対応策を議論しました。

6名のパネリストによる発表と議論を経て、1)栄養は子どもの命のみならず、成長を守るもので、母子保健と統合された栄養サービスの質が重要、2)食事の質に関わる健康的な食環境が鍵となる中、給食には大きな可能性があること、3)栄養不良の三重負荷や「シンデミック」を解決するには、システムズアプローチにより社会全体の取組みが必須、との結論を得ました。

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イベントのセッションアウトライン

登壇者

パネリスト

JICA 人間開発部 国際協力専門員 野村 真利香氏
ガーナ保健局 栄養担当ディレクター兼栄養担当国別責任者 Esi Foriwa Amoaful氏
UNICEFシニア栄養アドバイザー Grainne Moloney氏
オークランド大学 Boyd Swinburn教授
モンゴル科学技術大学産業技術学部副学部長 Mejeenov Purevjav博士
SUN(注1)ビジネスネットワークタンザニア コーディネーター Haika Malleko氏

(注1)SUN:Scaling Up Nutrition Movement(SUNムーブメント)とは、開発途上国の栄養改善に取り組むため、2010年に国連主導で発足した運動。国際機関、民間企業、市民社会等が広く参画している。

モデレーター

JICA人間開発部 保健第二グループ保健第三チーム 課長 衣斐友美

パネリストによる講演

野村 真利香専門員:「国際的な栄養課題の動向と日本の経験」
SDGsの達成に向けて、子どもの命を守るだけでなく、子どもの成長・発達を守る必要性も高まっています。また栄養不良の二重負荷もしくは三重負荷に対処することが喫緊の課題です。さらに日本では、あらゆるライフステージで食育が提供され、人々の健康的な食の選択を支えています。JICAは、様々な分野から問題を捉えるマルチセクトラル・アプローチを用いて、マルチステークホルダーの連携により、複雑化する栄養問題に取り組んでいます。

Esi Foriwa Amoaful氏:「ガーナにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(注2)と栄養の統合」
ガーナにおける栄養課題への取組みの一環として、母子手帳を用いて保健サービスと栄養サービスの統合を図りました。また「人生最初の1000日間」を過ごしている母子や家族へ、栄養教育やカウンセリングをおこなっています。

(注2)「すべての人が、健康増進・予防・治療・機能回復にかかる基礎的な保健サービスを、必要なときに負担可能な費用で受けられること」を示す概念

Grainne Moloney氏:「栄養をすべての子どもへ -UNICEF 栄養戦略 2020-2030」
過去20年において子どもの栄養状態に歴史的な進歩があった一方で、新たな脅威により、後退してしまう恐れもあります。「UNICEF栄養戦略2020-2030」では、食料、保健、水・衛生、教育および社会保護といった5つのシステムから、栄養改善のアプローチを展開する「システムズアプローチ」を通じ、全ての子どもや青年・女性の、最適な栄養状態・成長・発達を支えるための食事・サービス・取組みを保護または促進することを目指しています。

Boyd Swinburn教授:「肥満、低栄養、そして気候変動の世界的なシンデミックについて」
肥満と低栄養、そして気候変動がそれぞれに蔓延(パンデミック)し、互いに負の相乗効果(シナジー)を生み出す状況は「シンデミック」と表現され、21世紀最大の健康上の脅威です。この脅威に立ち向かうためには我々が意識を変え、食料システムを変革する必要があります。

Mejeenov Purevjav博士:「過栄養に対処する手段としての学校給食および栄養教育の発展について」
国民の30%が遊牧生活を送るモンゴルでは、子どもは6歳から学校の寮で生活しており、学校給食や寮における食事がとても重要です。子どもたちが直面する低栄養と過栄養の二重負荷に対処するため、2019年にはモンゴルで給食法が成立しました。国の現状に即した、最も適切な学校給食システムの構築・展開が必要です。

Haika Malleko氏:「タンザニアにおける官民連携を通じた学校給食プログラム」
2019年から2021年にかけて、学齢期の子どもの栄養改善のため、SUNのプールドファンド助成金プロジェクトを活用して栄養強化した穀物を30校の児童12,000人に提供しました。学校、タンザニア政府、市民社会組織(CSO)や民間企業などの連携により、関係者の栄養意識が向上し、栄養のある食品を持続的に供給するための学校と生産者とのつながりを創出できました。

講演後に課題や対応策についてディスカッションを深めました。

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サイドイベントの様子