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Japanese Overseas Migration Museum
Museu da Migração Japonesa ao Exterior
Museo de la Migración Japonesa al Exterior

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海外移住資料館 基本理念「われら新世界に参加す」

「われら新世界に参加す」とは、海外移住資料館の基本理念です。この表現は、1978年6月にブラジルのサンパウロで開催されたブラジル移住70周年国際シンポジウムの基調演説につけられた演題です。命名者は、当館の特別監修者である梅棹忠夫氏です。
ブラジル移住70周年国際シンポジウムの基調演説の中で、梅棹氏は新しい「移住史」観を提言しました。以下は、毎日新聞社編『われら新世界に参加す-ブラジル移住70周年国際シンポジウム』(毎日新聞社、1978年)からの抜粋です。

(pp.13~14)
そのあたらしい土地に移住して、営々とはたらくことによって、その土地に潜在的に存在するあたらしい可能性をとりだすという仕事、そういう仕事に従事する人間は、だれでもすべて平等に、あたらしい社会の一員としてむかえいれられて、ここに旧世界とはまったくことなった、あたらしい文明を形成しようというのが、新大陸のもっている人類史的理想であったはずだ、とわたしはかんがえている。[中略]
そして、そのような新文明の形成に対して、日本からの移住者たちもまた、力のかぎりをつくして参加してきた。日本人はこの国において、新文明の形成に参加した。[中略]
日本人は、まさに、新文明形成の参加者であった、ということである。

また、上記シンポジウムに呼応し、同年12月6日に東京において、「海外移住の意義を求めて」(外務省、国際協力事業団共催)と題するシンポジウムが開催されました。梅棹氏は、同シンポジウムにおいて「海外移住の文明史的意義」と題した基調演説を行いました。以下は、『海外移住の意義を求めて《ブラジル移住70周年記念》-日本人の海外移住に関するシンポジウム-』(外務省・国際協力事業団、1979年)からの抜粋です。

(pp.29~30)
[中略]移民あるいは移住ということは、すなわち新文明への参加であるとかんがえております。移住は新文明への積極的寄与である。そうかんがえた場合、移住あるいは移民は、移住先にすでに形成されている文明を食いものにしてはなりません。移住をしてそこの文明を食っていくというのであるならば、それは単なる居候あるいは寄生者であります。移民はそうであってはいけない。そうではなく、みずからはたらき、みずから創造的精神を発揮してあたらしいものをつくりだしていくことでなければ、そもそも移住の意味がないということです。

これらの基調演説は、「梅棹忠夫著作集」第20巻『世界体験』(中央公論社、1993年)に収録されています。

【画像】

写真提供 千里文化財団

梅棹 忠夫(うめさお ただお)(1920年~2010年)

京都市生まれ。京都大学理学部で学んだ後、世界各地でフィールドワークに従事。のちに京都大学人文科学研究所等で研究活動を継続。1974年の国立民族学博物館創設にも尽力し、1993年まで初代館長をつとめた。文化勲章受章(1994)。理学博士。著書に『文明の生態史観』、『知的生産の技術』、『情報の文明学』等多数。「梅棹忠夫著作集」(全22巻 別巻1)(中央公論社、1989~1994)がある。