【最終発表会レポート】北九州市立霧丘中学校「総合的な学習の時間」霧中SDGs -持続可能な社会を自分たちの手で-

2022年3月28日

【画像】「総合的な学習の時間」×SDGsの授業作りに挑戦する霧丘中学校。
本授業11時間目となる全体発表の様子と先生方の想いをレポートします!
当日は、大牟田市立手鎌小学校のオンライン参加も実現しました!

「社会に目を向けて生きる道を探す」(これまでの経緯)

【画像】 北九州市立霧丘中学校2年生担当の社会科教諭 山本敬典先生(H24-2理数科教師タンザニア派遣)と、社会科教諭 後藤健司先生が中心となり、『総合的な学習の時間』に霧中SDGs -持続可能な社会を自分たちの手で-(全11時間)の授業実践に挑戦してきました。

 これまでの様々な学習等を踏まえたアンケートでは95%以上の生徒が「世界を変えたいと思う。また、変えなければならないと思う。」と回答していた一方で、「世界を変えられると思うか?」という問いに対し「そう思う」と答えた生徒は55%ほどでした。
 そこで、先生方は「中学2年生という今だからこそ、SDGsという視点をプラスすることで社会に目を向けて、「こんな生き方もあるんだ」と知り、夢や理想を本気で語れる時間としてほしい」、同時に、(生徒たちが)これからの社会で生きていく上で、人前で意見を述べたり、自分の気持ちを表現し他者に伝えることの難しさを感じたりする経験を積んでほしいと考えました。
 1学期には英語科教諭 中村愛先生が主導となり、タイピングやパワーポイントの使い方を含めたテーマ自由の発表練習を行いました。そして、山本先生と後藤先生が中心となって、2学期から本格的にSDGsの授業実践を開始。2021年10月29日のJICA国際協力推進員 鬼丸氏のヨルダン講話(※詳細リンクは文末)や個人調べ学習なども経て、2年生202名全員が各クラスで『私が取り組むSDGs』をテーマに発表を行い、選抜された12名(全6組各クラス2名)が当日の全体発表に臨みました。

「ジェンダー差別は災害や気象の話ではなく、心についての話」(当日の様子)

 11時間目となる本最終発表会では、選出された12名がステージの上で、環境・ジェンダー・貧困など自分が興味を持ったSDGsの項目に沿って調べ、まとめたことを発表しました。

 環境問題では、自分が生まれ育った場所を振り返り10年前に祖父と行った海の写真と今の写真を比較した問題提起や、バイオマスプラスティック等の北九州市の取り組みを紹介、自分たちが取り組めること等が発表されました。
 貧困問題では、「おにぎりアクション」お寺でSDGs(お供え物をお裾分け)、人々や国の格差として家庭の収入格差による子どもの経済的な格差などの発表がありました。
 ジェンダー問題では、「固定概念を取り払って発言に気を付けジェンダー平等の一般化を目指そう!」と訴えるものや、制服や校則が男女の固定概念を形成していると考え、次回生徒総会で「髪型や制服の規定に関する校則を男女で同じものにする」校則の改訂を提案します等の発表がありました。
 皆さんの豊かな発想や感性、そして「(ジェンダー差別は)心についての話」という発言は、SDGsすべての核心をついていると考えさせられ、大変感動しました。

 また、発表もクイズ形式の問いかけやユーモアある話し方等、それぞれに工夫されていました。質疑応答も活発で、会場全体が笑いに包まれたりと終始和やかで、日頃の先生方や生徒の皆さんのあたたかな雰囲気を感じました。そして、立候補で構成されているSDGs実行委員が中心となってスムーズな運営とともに、後藤先生の講評にあったよう真剣に聴く全員の姿がとても印象に残りました。

大牟田市立手鎌小学校のオンライン参加と動画紹介

【画像】 当日はユネスコスクール加盟校である大牟田市立手鎌小学校の6年生クラスのオンライン参加が実現しました。この小中学校交流案は、両校の児童生徒にとって良い刺激となればと、SDGs教育の在り方を模索する先生方の話し合いの中で出たアイデアで、実際に発表を聞いた本校児童からは、「発表が分かりやすかったです。自分もできることからやっていきたいです。」や「中学生の皆さんがSDGsのことをいっぱい考えて発表していたので、自分もできることを考えて取り組んでいきたいです。」といった感想の発表がありました。

 また手鎌小学校から、児童の皆さんが作成したQRコード付きの「私たちにできるSDGs動画」が紹介された際には、霧丘中学校の皆さんも興味を持って発表に見入っていました。
 中学生を前に堂々と発表する手鎌小学校の皆さんの姿に驚きました。

本授業の感想とアンケート結果

 以下、共有いただいた授業ノートの感想を一部抜粋して紹介します。 

【全体の感想】
・実行委員として代表者のみんなの頑張りを近くで見てきました。なので、クラスでの発表をふまえて、もっと伝わりやすく、もっと深いプレゼンをつくって全体に発表していた姿はとてもかっこいいなと思いました。
・今まで福祉関係にしか興味がなかったけれど森林や海など(環境問題のことも)もっと知っていきたいなと思いました。
・発表するときとてもきんちょうして、うまく発表できるか、かなり不安だったけれど、みんなが真剣に聴いて反応してくれたおかげで、最後まで自分らしくプレゼンをすることができて、本当によかったです。
・手鎌小学校さんのSDGsについての動画のクオリティーが高くてびっくりしました。

【プレゼンの「私たちにできること」の中で、「これはいいアイデアだ」、「これは実現したい」と思ったこと】
・ジェンダー平等の観点から学校の校則を男女平等にすること
・おにぎりアクションは自分でも簡単にできて#Onigiriactionとアップすると写真1枚につき給食約5食分提供されると知ったので家でもやってみたいなと思いました。
・myばしを持ってくることもすぐできるなと思いました。
・「ゴミの分別・食べ物を残さず食べきる」家でも学校でも簡単にできるので今まで以上に心がけていきたいと思った。

【アンケート結果】
「自分が社会へ参加することにより、社会を変えることができると思う」という問いに対して、本授業実施前は「とてもそう思う17%、そう思う38%」でしたが、実施後は「とてもそう思う26%、そう思う49%」へと変化しました。

「紙芝居でいい。大事なのは、中身。」(先生方の想い)

 生徒皆さんの発表に感動していると、金子陽一郎校長先生が、「プレゼンテーションやアピールのテクニックは後からついてくる。どうしても、(生徒は)パワーポイントの作成に意識が向きやすくなるため、いかに物事を深く考える力や聞く人のことを想像しながら資料をつくる力などの本質的な部分を大切にしてほしい。だから、紙芝居でいい。大事なのは、中身。ということをしっかり伝えていくことが課題。」と話してくださいました。
 同時に、この授業全体を通して、「この子はこんなことを考えていたんだ!」と、普段の授業や生活では見えなかった生徒の一面や内心が垣間見えたり、人前で発表するタイプではなかった生徒の活躍や、生徒全員の成長ぶりや秘めた力に驚かされたりしたと、先生方全員が嬉しそうに話されている姿が忘れられません。
 「総合的な学習の時間」×SDGsの授業実践に挑戦する先生方にSDGsという言葉ではおさまりきれない日本の教育現場の力を感じました。そして、すぐやって来る10年後20年後には、今小学生や中学生の皆さんが世界を創っていく時代が来るのだと楽しみになりました!

大変貴重な時間をいただき、ありがとうございました。