長期研修員地域理解プログラム「沖縄の歴史・文化のソフトパワー」を実施しました

2023年3月28日

 JICA沖縄では、これまで研修員福利厚生の一環として、平和学習ツアー(平和祈念資料館)や文化紹介・体験プログラムを実施してきました。今回、長期研修員(留学生)に、沖縄の歴史・文化について理解を深めてもらうため、3月17日(金)、18日(土)の2日にわたる地域理解プログラムを企画・実施し、琉球大学で学ぶ6か国9人が参加しました。

①講義:沖縄の歴史・文化のソフトパワー

上里氏の講義を動画教材で視聴

文化・アイデンティティや、移り変わる治世の中で得たもの・失ったものなどについて、活発に行われた質疑応答

 琉球史の研究者である上里隆史氏を講師に招き、同氏による講義で制作した動画教材上映と、研修員の質問に答える形での講義を実施しました。

 小さな島国であった琉球が、琉球王国時代、東・東南アジアとの交易により栄え、明治維新期に沖縄県となり、戦後米軍統治下には琉球(政府)に、そして1972年に本土復帰し現在の沖縄に至るという大きな変化をたどった歴史と、その中で生まれ育まれた特異な文化、変動の時代にあっても存在し続けた琉球・沖縄のソフトパワーについて興味深く学びました。

②視察1:世界遺産「首里城」

世界遺産「園比屋武御嶽石門」。この後ろに聖域が広がっています

2019年に焼失した首里城正殿跡にて。在りし日の首里城や、復元のプロセスなど、首里城の構造、役割を学びました

守礼門にて。上里氏と参加留学生

 上里氏にガイドいただける貴重な機会でした。首里城は琉球王国時代、王族が居住する王宮であると同時に、王国の政治・外交・文化の中心でした。1945年の沖縄戦で焼失しましたが、1992年に沖縄の本土復帰20周年を記念して復元され、独特な建築様式や石組み技術に高い文化的・歴史的価値が認められて2000年に世界遺産として登録されました。

 正殿に向かって右側にある南殿と番所と、左側にある北殿は建築様式が異なるなど、中国との冊封・進貢関係を維持しつつ、薩摩藩に支配されるという二重支配下にあった時代に、中国式・日本式の儀式や接待を行うため、異なる建築様式をも取り入れた沖縄の「ソフトパワー」のひとつがここでも見られます。
一時的に「沖縄神社」として利用されていたことも、歴史的に興味深いところです。

③視察2:世界遺産「勝連城跡」、あまわりパーク

あまわりパーク(資料館)の展示見学

うるま市(旧勝連町)の中高生による歴史パフォーマンス

勝連城の広大さ、海外貿易に適した立地であったことを体感

 勝連城は地理的に海外交易に適した場所にあり、首里に匹敵するほど栄えていました。10代目城主阿麻和利(あまわり)の首里攻略が果たされていたら、琉球王府は首里ではなく勝連だったのではとも言われてます。

 海外交易が盛んであったことは、城跡内から大量に発見された中国や東南アジアの陶磁器類や、当時生息していなかったオウムの骨、この地でしか発掘されていないローマコインなどから見ることができ、交易の範囲の広さからも勝連の勢力の大きさがうかがえます。

 勝連では、郷土の歴史と誇りを伝承する活動で、1999年より地元中高生を巻き込んだ現代版組踊りの取り組みが継続されており、あまわりパークで公演されるダイジェスト版を鑑賞しました。

 展示物やライブ公演、ガイドの説明により、首里と勝連の関係や、勝連城の特徴を学びました。

④振り返り

 プログラムに参加した研修員からは、「沖縄の文化の特殊性と、それが時間(治世)とともに変化してきたことを学べた」、「首里城は聞いたことがあったが勝連城については知らなかった。琉球時代の首里・勝連・中城の関係を知り、沖縄の歴史への関心が高まった」、「子どもたちが郷土の歴史に関心を持ち、ミュージカルという形で地元の歴史継承に取り組む姿に感動した」、「専門家から直接説明を聞くことができ、理解が深まった。沖縄の歴史・文化をもっと知りたい」など感想が寄せられました。

今後もJICA沖縄は、研修員の日本・沖縄の理解促進のためのプログラムを実施していきます。