草の根技術協力事業「ライフスキルトレーニング(LST)持続発展のための組織力向上プロジェ クト」について

#4 質の高い教育をみんなに
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2024.05.10

ユニセフの定義によると、「ライフスキルトレーニング(LST)」 とは、「日常生活における多種多様な問題や要求に、建設的かつ効果的に対応する際に必要とされる能力」を意味します。

教育機関における 「ライフスキルトレーニング」とは、生徒たちを自己認識へと導き、社会人、成人、そして市民としての人生選択と決定に対する責任感を気づかせ、困難を克服するためのツールとして役立つといわれています。

神奈川県のNPO法人「光の子どもたちの会」の代表者を務める乳幼児教育の専門家、鈴木真由美氏が中心となり、美しい海岸に恵まれたセアラ州アラカチ市の公立小中学校において、"ライフスキルトレーニング "が導入されました。

2013年に地域住民が自発的に形成した「地域子育て支援ネットワーク」活動に取り組んでいた鈴木氏は、アラカチ市内の教職員や専門家(看護師、社会福祉士など)、地域住民と話し合う中で子ども達が犯罪に巻き込まれないような"ライフスキルトレーニング"導入の必要性に気づいていきました。

その後、鈴木氏は本事業を通じて「ライフスキルトレーニング」の研修導入を実施しました。同活動は地域の青少年を暴力、違法薬物乱用、早期妊娠から守ると同時に生徒たちが自分の住む街や場所の地域文化を知ることで、環境を尊重することを目指しました。

また、鈴木氏はアラカチ市教育局の教職員を中心とし、アラカチ市政府との協力を通じて教材制作を行い、同市の地域社会・教育背景に適用したユニセフの「ライフスキルトレーニング」指導法を伝えるために、アラカチ市の公立小中学校の教員を対象に研修、講演会、ワークショップを含む人材訓練に取り組みました。

そして2023年5月、アラカチ市より教員2名(アルテミジア・リベイロ氏、ニルデネ・ノゲイラ氏)が本事業の研修で来日しました。2名とも横浜市内でオリエンテーションを受けた後、秦野市の学校を訪問し、帰国後は研修で得た経験と知識を生かして教師の指導法を改善しつつ、アラカチ市内において持続的な「ライフスキルトレーニング」の実施に取り組んでいます。また同年の11月、JICAブラジル事務所はモニタリングのためにアラカチ市を訪問し、鈴木氏による「ライフスキルトレーニング」の教えが非認知能力(Social Emotion Learning:日本でいう道徳や総合的学習の授業)」という公立学校で新しい学習カリキュラムに織り込まれたことを確認しました。

この新学習カリキュラムは、セアラ州教育省(SEDUC/CE)と教育活動を行うアイルトン・セナ財団の連携の成果です。本事業で鈴木氏がJICAの支援を通じて実施した「ライフスキルトレーニング」訓練に参加していた数名の教員は、「非認知能力(Social Emotion Learning)」導入をスムーズに受け入れることができました。

2017年よりセアラ州政府は生徒の非認知能力の向上に力を入れるようになり、全州の公立学校で「非認知能力(Social Emotion Learning)」が展開されるようになりました。とりわけコロナ禍明けに隔離社会から抜け出した学生の多くは攻撃的な行動や抑うつの傾向が高くなり、学習カリキュラムに情緒的発達を含める必要性が重視されるようになっていきました。

2024年1月、神奈川県秦野市より学校教育専門家2名(安藤淳氏、市川潤一氏)がアラカチ市教育局を訪れ、地域の「ライフスキルトレーニング」訓練の見学を始め、日伯両国の教育方針、特にポストコロナにおけるソフトスキル学習の重要性について現地の教員と意見交換を行いました。

また専門家2名はアラカチ市内の滞在中にブラジルの教育制度の理解を深め、訪問先の学校の教員とアラカチ市との今後の協力体制の可能性を探りました。専門家2名が実施した講義「学びの基礎プロジェクト」は、アラカチ市の公立学校の校長先生55名が出席し、教育現場における子どもを中心とするプロセスの紹介・議論が行われました。

関連の草の根技術協力事業:

「ライフスキルトレーニング」教科書。

鈴木木真由美氏、アルテミジア・リベイロ氏、ニルデネ・ノゲイラ氏と訪問先の学校の校長先生、教員。

アラカチ市内にライフスキル授業を開催する教員。

神奈川県秦野市の訓練に励むアラカチ市の教員2名。

アラカチ教育局長との会合。

「学びの基盤プロジェクト」における研修実施時の集合写真。

現地の学生と語り合う安藤淳氏、鈴木氏。

アラカチ市教育局の皆さんとの写真。

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