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中米コスタリカで「楽しむ」野球を(桜美林大学)

2025.07.02

中米コスタリカで「楽しむ」野球を
(桜美林大学との連携派遣隊員)

「コスタリカ人の温かさを感じた」「家族のように迎えてくれてうれしかった」「青少年の野球に対する意欲が高かった」「自身の野球に対する向き合い方が変わった」「人の手を借りて成長することも多いと気づけた」「日本も見習うべきところが多いと感じた」「また来年も参加したい」これらの言葉はJICAコスタリカ支所での活動報告において参加した学生の皆さんから聞かれた言葉です。今回は桜美林大学との連携によるJICA海外協力隊(短期派遣)の活動を紹介します。

【連携の概要と実績】
 桜美林大学との覚書「コスタリカ共和国野球振興支援連携」に基づき、2015年度から2019年度、2023年度から2025年度の計8年間で野球短期隊員を毎年10-12名派遣しており、2024年度まで延べ74名を派遣しました。

また、本連携派遣がきっかけとなり、桜美林大学と当地ナショナル大学との間で協定が締結され、JST「さくらサイエンス」に結び付いています。ナショナル大学の教職員を日本に招聘したり、同大学の体育学生に対して野球指導を行ったりするなど、現地の人々と多岐にわたる交流を行っています。

大使公邸レセプションでの記念撮影
前列左から2人目:松本勝弘参事官
同3人目:有吉大使夫人(当日は大使不在)
同4人目:セルヒオ・ビノクール大使(コスタリカ外務省国際協力局長)
同5人目:宮﨑光次教授(桜美林大学)
同6人目:吉田憲支所長

【今回の活動概要】
 7年目にあたる2024年度は、2025年2月4日から3月3日までの1カ月間、11名の短期隊員が配属先であるサントドミンゴ野球協会(エレディア県サントドミンゴ市)を拠点として地方3都市において活動しました。主に現地の小学校(13校)や野球協会にてベースボール型授業の導入や「走る、投げる、打つ」等の基礎的な技術指導、試合を通した実践指導、道具の扱い方や礼節に関する指導を行ったほか、桜美林大学が独自に日本で野球道具を集め、より経済的に困難な地域の野球少年らに寄付しました。

これらの活動には前回に引き続き長期派遣の佐合桃果隊員(2023年度1次隊/JICA初の女性野球隊員)も同行し、活動の補助を担うとともに、同隊員の任地(アラフエラ市)でも複数名派遣でしか実現できない細やかで実践的なチームワーク力に関わる指導を展開しました。また、協力隊の目的の一つである、「異文化社会における相互理解の深化と共生」をより徹底するために、今回の派遣ではこれまで3日間だったホームステイを2週間としました。

現地小学校での活動の様子

現地小学校での活動の様子
中央:佐合桃果隊員

【活動の成果と現地での反響】
 今回の活動を通して受益者は延べ1740名に上りました。今回派遣された11名の中で2回目派遣の5名を中心として積極的にチームを取り纏め、独学で学んだスペイン語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする姿が見られました。

また、野球の技術だけでなく楽しさを伝えることも重要ととらえ、「自らも楽しみながら教える」というスタイルを貫きました。その懸命な様子が伝わったのか、過去には選手や子供たちが道具を粗末に扱ったり、隊員の話を聞かなかったりする姿も見られたようですが、今回で短期派遣も7年目となり、彼らが自らグラウンドを整備し積極的に学ぼうとする姿勢が見られたことは特筆すべき成果でした。これまでの継続派遣によって参加者の行動変容が促された結果だと思います。

 また親善試合を計3試合行ったほか、コスタリカ外務省で活動報告を行ったことでよりインパクトのある活動として広報することができました。野球関係者やコスタリカ政府、JICAも含めてSNS投稿総数は50件以上にものぼりました。コスタリカ政府をはじめとする各関係機関や現地の人々はこれらの活動を高く評価しており、次年度以降の派遣にも大きな期待が寄せられています。

親善試合でホームラン(アラフエラ市)

コスタリカ外務省での活動報告

【活動から感じた国際協力におけるスポーツの魅力と役割】
 今回、ニカラグアと国境を接するロスチレス市でも野球指導を行いましたが、経済的にも困難な家庭が多く、高価な野球道具を購入することもままならない地域でもあります。現地ではわざわざ日本から野球を教えに来てくれたこと、野球道具を寄付してくれたことに大変感謝されていました。特に印象的だったのは、同地での野球指導の後日、あるご家族がわざわざ車で5時間もかけて親善試合の応援に来てくれていた事です。

隊員の皆さんも予期せぬ再会にとても感動した様子で、覚えたてのスペイン語や翻訳アプリなどを使って一生懸命コミュニケーションをとろうとする姿が今でも目に焼き付いています。

ロスチレス市での活動の様子。運動能力の高さがうかがえる。

そして、まだまだ任国では「野球は男性の競技」という意識が根強いですが、最近では佐合隊員の活動の影響もあり、女子選手も増えつつあります。今回も男子に交じって親善試合に参加し、バッティングでは男子顔負けの強打を放つなど私自身も大変驚きました。こうして地域、言語、性別を超えて交流したり楽しんだりできるスポーツの魅力を改めて実感しました。今回の活動に同行した佐合隊員は野球を「男女関係なく楽しめるスポーツ」として広める活動も行っていますので、興味のある方はぜひ同隊員の世界日記もご覧ください。

配属先での活動の様子(サントドミンゴ市)。女子選手も徐々に増えている。

【ホームステイから学ぶ異文化理解】
 今回は2週間をホームステイとしました。隊員にとっては言語の壁がある中でのホームステイに初めは不安や戸惑いもあったようです。

しかし、実際にホームステイを始めてみると、活動先への送り迎えをしてもらったり、コスタリカ料理をごちそうしてくれたり、週末には観光地にも連れて行ってもらったりと、至れり尽くせり。

まるで家族の一員として迎えられ、大変親切にしてくださったことに隊員もとても感動したようです。最終日の夜、配属先とホームステイファミリー合同で盛大に行われた送別会では、お互い号泣しながらお別れしたといいます。

 最後に、今回参加した11名中8名が4月からの就職を控えておりましたが、大学最後の野球をコスタリカでできたこと、社会人になる前に大事な気づきや学びが多かったことに大きな達成感と充実感を得られたことと思います。私自身も担当者として非常にやりがいを感じさせてもらった1カ月間でした。

最後に行った親善試合後の記念撮影(サントドミンゴ市)。皆さんの「やり切った」「楽しんだ」という素敵な笑顔が印象的でした。

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