ラオス南部のJICAの支援について ~第5回美弥子所長が聞く~
2024.07.24
7月2日から4日までの日程でラオス南部出張に行ってきました。今回は「美弥子所長が 行く 」としてJICAのラオスにおける南部での事業を紹介します!!
チャンパサック県の県庁所在地であるパクセ―は南部4県(チャンパサック県、セコン県、アタプー県、サラワン県)の中心地です。今回の南部出張は、パクセー空港を降り立ってスタートです。
チャンパサック県パクセーに到着したときに、是非見ていただきたいのが、『パクセー橋』です。ラオスの人々から通称「日本橋」と呼ばれています。2000年に無償資金協力で建設され、今も大切に使われています。このメコン川にかかる橋により、ラオス南部からタイへ人とモノのアクセスが容易になり、ラオス南部の経済発展に寄与をしています。なお、パクセーの街にお越しの際には、メコン川の対岸にあるPhusalao寺に登ってください。 パクセー橋(日本橋)だけでなく、パクセーの街も一望でき、お勧めの観光スポットの一つです。
パクセ―橋
Phusalao寺
※Phusalao寺の場所
※ODA見える化サイト
セコン県はラオスで2番目に小さな県ですが、ボラベン高原の一部を構成しており、ベトナム国境と接するダクチュン郡は標高度が高いことからコーヒー栽培が盛んです。また、農業関係の日系企業が進出しているなど、コーヒー以外にも農業が盛んな県となっています。
現在、県教員研修センター整備(無償資金協力)に向けた協力準備調査を実施中です。技プロで開発した算数教科書を学校の授業で活用できるように全国で教員研修の「場づくり」を進めています。技プロで開発した算数教科書を授業で活用できるよう全国で教員研修の場づくりを進めています。その一環で、セコン県にも教員研修センターの建設が予定されています。セコン県教育局局長を訪問し、教員研修センターの活用計画について話をお聞きしました。
小林美弥子所長(以下、美弥子所長):現在、調査中の教員研修センターについて、セコン県での具体的な活用計画を教えてください。
カムパイ・シムマーワット局長(以下、カムパイ局長):セコン県での教員研修センター整備に感謝しています。教員研修センターは、現職教員の継続教育(Continuous Professional Development:CPD)のために使用します。例えば、各学校の教育研修会や、各教科別の研修会、指導主事による教授法の勉強会などを予定しています。
左から3番目がカムパイ局長
美弥子所長:以前、JICAの技術協力プロジェクトで開発した小学校1~5年生の算数教科書を現場の先生方が授業で使えるように、現在の技術協力プロジェクトでは教員研修(CPD)を実施しており、セコンでも教員研修センターで算数の研修も進めていただけるとのことで嬉しく思います。ちなみに現場の教員から新しい算数教科書の評価、特に苦労されている点を聞かれていますか。
カムパイ局長:JICAで開発された算数教科書は、現場の教員からは、わかりやすい教科書だと聞いています。現場の教員から、どの点で教えるのに苦労しているかなど調査しますので、JICAに調査結果を共有します。
美弥子所長:セコン県の教育の質向上、子ども達、先生のために一緒に進めましょう。
次に、セコン県とアタプー県にまたがる山間で建設中の「モンスーン風力発電事業」(海外投融資)を視察しました。本事業は、海外投融資として、ADBやタイ輸出入銀行等との協調融資により実施されます。ラオス初の風力発電であり、東南アジア最大の600MWの再生可能エネルギー事業により、気候変動にも貢献することになっています。
※関連記事
アタプー県はラオス最南部に位置する県です。ベトナムとの往来が盛んな県であり、街中には多くのベトナム人の姿が見られ、ベトナム語の看板やベトナム料理のレストランが多く見られます。ラオス南部では、サラワン県とセコン県ともベトナムと国境を接しているものの、以前はアタプー県のみが国際国境だったこともあり今でもアタプー県がラオス南部とベトナムを繋ぐ交通の要衝となっています。
アタプー県では、コープおきなわが「官民協働による協同組合の設立・参加促進を通した地域住民が主体となった未来づくり」プロジェクト(草の根技術協力)を実施中です。前回のフェーズで設立した美らラオ(ラオス焼酎)の協同組合の組織力強化を図る他、コーヒー・蜂蜜・お米の協同組合を設立して住民の収入向上を目指しています。今回の訪問では、職業訓練校で、コープおきなわが ILO と協働して行っている協同組合普及のワークショップに参加するとともに、来年から始まる『協同組合論』のカリキュラム作成に向けて、職業訓練校の学長・担当教員、 ILO 、コープおきなわ、 JICA で 打合せを行いました。 職業訓練校での講義を通して 若い世代の協同組合への参加が促進されることが期待されます。 職業訓練校訪問後、美らラオの工場を訪問してきました。 美らラオ工場では、組合長から麹の作り方を教えていただくなど、前回のフェーズから組合員が力を合わせて引き続き工夫を続けながら美らラオが毎年製造されていることが分かりました。
職業訓練校に設置した蜂蜜の養蜂箱
ILOと実施した協同組合の講義
美らラオの工場
麹作りの説明を受けました。
また、アタプー県知事に表敬し、同県の開発支援について意見交換を行いました。
美弥子所長: JICAでは、これまでアタプー県と協力して様々な分野で支援を行ってきました。これから無償資金協力で教員研修センターをアタプー県にも整備すべく調査をしています。また、保健や水道の分野でも、アタプー県の保健局や水道公社の職員がJICAの技術協力プロジェクトのC/Pです。
ワントン・コンマニー知事(以下、ワントン知事):本日は遠いところからお越しいただきました。教員研修センターについてはアタプー県の教員の能力向上に必要と考えており、特にJICAが開発した算数教科書の指導改善に期待をしています。
また、アタプー県では、①農業、②教育、③保健の分野を重視しています。教育と保健については多くの支援がありますが、農業分野の支援も期待します。例えば、灌漑の支援です。また、高校での農業の授業などの支援も期待しています。
左から4番目がワントン知事
美弥子所長:灌漑の支援については、現在、農林省にJICAの農業政策アドバイザーが派遣されていますので、アタプー県における支援の可能性を相談します。また、高校での指導に関しては、海外協力隊も検討したいと思います。コロナ前までは教育局や病院にも海外協力隊が6名派遣されていました。来年のラオス協力隊派遣60周年に向けて、各県への派遣人数を増やしているところです。
ワントン知事:アタプー県にも是非JICA海外協力隊を派遣して欲しいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
サラワン県は、①ナポン村の焼き鳥、②コンセドン郡のラオス焼酎、③ナーサイ村のココナッツ、④ラム・サラワンの音楽と踊りという4大名物があり、ラオス全国で知られています。そして、①から③の名物からも分かるように土壌が豊かで農業が盛んな県となっています。
ナポン村の焼き鳥
ナーサイ村のココナッツ
サラワン県にある株式会社ツムラの現地法人ラオツムラでは、桂皮(シナモン)や生姜、ダイダイなど生薬の原料となる植物などを栽培・収集・乾燥し日本へ出荷しています。今回、ラオツムラが中小企業ビジネス支援事業のご相談に、JICAラオス事務所に来ていただいたのをきっかけに工場及び農場を見学させていただきました。
ラオツムラは、サラワン県とチャンパサック県に全部で770haの圃場を持っており、その中の1つのポーケム村の圃場(145ha)を見学しました。そこでは桂皮の栽培が行われており、2007年に植林した桂皮の成木も見ることができました。桂皮はラオツムラにおける主要な輸出品の1つとなっているということです。
生薬の選別
乾燥した生薬の保管倉庫
桂皮の苗作り
桂皮の成木
※LAO TSUMURA CO.,LTD
今回は、南部4県を回り、多くのC/Pに対面でお会いでき、また、『現場』を自分の目で見ることができました。文書では気付かなかった多くの発見がありました。「百聞は一見に如かず」です。
ラオス事務所は『現場に行こう!』を今年の目標の一つとしています。
scroll