ラオス北部サイニャブリ県へのJICA協力について~第24回美弥子所長が聞く~
2026.02.27
サイニャブリ県は、ラオスの北西に位置しています。サイニャブリ県ではラオ族の他、タイルー族の人々が多く住んでおり、「綿の栽培・藍染」と「象との共生文化」が特徴の一つです。伝統的には、自ら綿を育て、紡ぎ、藍で染めた衣装を作っていました。特に、藍染は、発酵させた天然藍で繰り返し染めることで深みのある色を生み出すことができます。織りについては、象や花などの文様を特徴としています。現在でもホンサー郡では、伝統的な高床住居の下には織機が並んでおり、手紡ぎ綿と天然藍を用いた布作りが行われています。
藍染の様子
高床式の下に織り機が並んでいる
サイニャブリ県の象祭りは、サイニャブリ県ホンサー郡の象との共生が起源といわれています。ホンサー郡では、かつて象は、農業、林業、輸送の分野で人々の生活に欠かすことができない存在で、いわば家族のように大切にされていました。各家庭には、象に乗せる鞍があり、伝統的な高床式住居は、象に乗るための入り口もありました。
写真は象に乗るときに使われていた鞍
象祭りは、象への感謝と象との共生文化を次世代に伝える役割があります。現在でも、サイニャブリ県には野生の象が約200頭、飼育下の象が約100頭、合計300頭の象がいます。象祭りでは、50頭の象によるパレードの他、元国家主席、現職の財務大臣、各国大使らの参列とともに、僧侶による祈祷などがあり、国家事業としての観光行事であると同時に宗教行事の側面も持っています。
象祭りの目玉の1つである象のパレード
象も一緒に参加してのバーシースークアンの儀式
ブッサコーン・インタランシー副知事:サイニャブリ県はラオス北西部に位置し、タイ国境と647キロを隣接し、人口41.8万人、面積116,389㎢ 、8民族で構成される県です。同県の経済には大きな3つの柱があります。1つ目は農業で、約90%の県民が農業に関わっています。2つ目は電力で、水力発電所の他にラオスで唯一の火力発電所があります。3つ目は観光です。県として、農業と観光分野を重点分野として経済を発展させていきたいと考えています。
小林美弥子所長:農業分野の協力として、フードバリューチェーンに関する技術プロジェクトが近々開始予定です。サイニャブリ県も対象として、国内流通、近い将来は近隣国へ輸出できることのできる付加価値のある農産品開発で協力できればと考えています。また、観光分野については、これまでルアンパバーンで技術協力プロジェクト等を実施しています。サイニャブリ県には象祭りなど魅力的な観光資源があると思いますが、ラオスにおいて観光は最もポテンシャルのあるセクターの一つと捉え、現在は南部ワット・プーを中心に調査を実施しています。
ブッサコーン
副知事:私は、サイニャブリ県に来る前に約10年、農業省に務めており、JICAの農業プロジェクトを担当していました。JICAラオス事務所の農業担当のナショナル・スタッフとも知り合いです。JICAの人材育成を重視するアプローチに大変共感しています。サイニャブリ県では、昨年7月、「初等算数授業改善のための教員指導力強化プロジェクト」の本邦研修で、サイニャブリ県・郡教育スポーツ局の職員が参加し、日本の児童主体の算数の授業づくりを学んだと聞いています。無償資金協力で建設予定の県教員研修センター(PTDC)でも、この研修の成果を他の教員に伝えていってもらいたいと考えています。また、昨年9月には、「看護師・助産師継続教育制度整備プロジェクト」で、サイニャブリ県病院において、免許更新制度の説明及び医療機材の指導などの研修があったと聞いています。 教育・保健分野での協力についても感謝します。
また、サイニャブリ県には、これまで18名のJICA海外協力隊が、子ども文化センター(CCC)、県病院・郡病院、産業商業局に派遣され、情操教育、看護師の質向上、一村一品などの各分野での活躍してくれています。
美弥子所長:今月23日には、19人目となるバレーボール隊員を県教育スポーツ局に派遣します。
ブッサコーン副知事:サイニャブリ県は、バレーボールの強豪県として知られています。以前派遣されたバレーボール隊員は、バレーボールのレベル向上に貢献してくれました。新しく派遣される隊員にも期待しています!
サイニャブリ県の教育局職員が日本で算数の教授法を学んだ
サイニャブリ県病院でのトレーニングの様子
12月から2月にかけて、ラオスは乾季のため、比較的過ごしやすい気候でもあり、国中で多くの祭りがあります。象祭りの他にも各地の祭りを紹介します。
モン族は、農作業の一年の区切りの中で、収穫後でなければ新年を迎えることができず、稲刈りの後の新月に行われます。よって、毎年11月から1月にかけて新年の祭りを行います。祭りでは、男女での毬の投げ合いや闘牛などが行われ、モン族の文化を知る良い機会です。また、モン族は普段はうるち米を食べますが、お正月のときには日本人と同じようにもち米を使って餅つきをします。
男女での毬の投げ合いの様子
餅つきの様子
ラオス南部のチャンパサック県には、世界遺産になっているワット・プー(日本語で「山のお寺」の意味)があります。5世紀頃ヒンドゥー教の寺院として設立され、11~13世紀のアンコール期に大規模な再建が行われ、その後13世紀以降は上座部仏教寺院へと転じ、今に至ります。クメール文化の遺跡で有名なアンコールワットは12世紀前半に建設されているため、ワット・プーの方が先に建設されたと言われています。2001年に「チャンパサック県の文化的景観内にあるワット・プーと関連古代遺跡群」として、ユネスコ世界文化遺産に登録されました。毎年、ワット・プー祭りは、陰暦3月の満月(主に2月)に行われ、全国や近隣国から多くの僧侶と巡礼者が集まります。今年の祭りでは、チャンパサック郡病院に所属するJICA海外協力隊の南菜穂香隊員(看護師)が、同僚やチャンパサック保健科学短期大学の学生と協力し、祭りの期間に、地域の方々への健康診断や栄養指導を実施しました。
ワットプー祭りのステージ
JICA海外協力隊員が健康診断と栄養指導を実施
なお、ワット・プーに由来する仏頭に関し、日本とラオスの間で不思議なご縁がありましたので紹介します。かつてチャンパサック県の村民が所有していたある仏頭は、2012年頃、現地の骨董商が購入し、タイ経由で日本に持ち込まれたと伝えられています。その後、毎夜この仏頭が夢枕に立ち、ラオスに帰りたいとの希望が伝えられたそうで、所有者から在名古屋ラオス名誉領事館へ相談されたことを契機に、2013年、ワット・プー博物館へ返還されました。2025年12月5日に、在名古屋ラオス名誉領事館とチャンパサック県が共同で、ワット・タート寺院において、日本からラオスに返還された仏頭を安置する御堂「老日庵(ラオニチアン)」の完成式を開催しました。ワット・タートは、18世紀から20世紀中ごろまで、同地に存在したチャンパサック王国創設に関わった高僧パ・クー・ポンサメックの仏塔を安置し、王が主催する儀式の場として用いられた由緒ある寺院 です。この度、日本ラオス国交関係樹立70周年の節目に合わせ、「日本ラオス仏頭友好親善プロジェクト」として、両国の寄付でワット・タート内に老日庵が建立され、新たな観光スポットが誕生しました。
多くの関係者が出席した「老日庵(ラオニチアン)」の完成式
日本からラオスへ返還された仏頭
ラオス北東部に位置するフアパン県にある日ラオス友好桜公園では日本の桜を見ることができ、開花時期には多くのラオス人がお花見に訪れます。日本では3月から4月に咲くことが多い桜ですが、ここでは気候の関係から12月末から1月にかけて桜が満開を迎え、12月には桜フェスティバルが行われます。特定非営利活動法人NPO アジアの障害者活動を支援する会(ADDP) 、さいたまラオス友好協会、川崎商工会議所がラオスと日本の友好のために植樹をしています。今では多くのラオス人が、お花見に訪れる人気スポットとなっています。なお、ADDPは「フアパン県ビエンサイ村のPPT(Pro-Poor Tourism)戦略アプローチによるインクルーシブな地域活性化事業」(外務省・日本NGO連携無償資金協力)として観光分野の協力に関わっています。
桜フェスティバルの様子
満開の桜