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パラグアイ日系社会と民間連携

昨今JICAには、ODA事業を通じて蓄積された現地情報や豊富なネットワークを生かし、途上国への海外展開を検討する本邦企業を側面支援する役割が期待されています。

中南米地域においては、地理的距離などもあり、アジアなどの地域と比較すると、日本の民間企業の関心が限定的で、JICAの民間連携は、アジア地域ほどには進んでいません。

他方で、中南米諸国の中には、戦前・戦後に移住した日本人を中心に日系社会が築かれている国が多く、日本及び日本人への信頼感、親近感が高いと言えます。中南米地域においては、こうした歴史的な関係なども活かしながら、現地で活躍している日系人や日系人が経営する企業をパートナーとして、日本の民間セクターと連携した協力の可能性が高いと言えます。

パラグアイは2015年に中進国入りを果たし、近年堅調な経済成長を遂げています。パラグアイ政府は、国内産業の多角化や、外国からの投資の呼び込み促進のため、関連制度や法律の整備を進めています。本邦民間企業がパラグアイへ進出する利点の一つとして、日系社会の存在が挙げられますが、日系社会の現状や課題等については、日本語で取得できる情報は極めて限定的です。パラグアイでは、2016年に移住80周年を迎え、眞子内親王殿下がパラグアイを訪問されたこともあって、「パラグアイの日系社会」が大変注目を浴びました。この好機を活かし、パラグアイ事務所としても、日本の民間企業のパラグアイへの投資促進や、日本企業と日系社会との新たなパートナーとしての関係の構築を目指したいと考えています。

パラグアイの注目分野

農業・畜産

南米の中心に位置するパラグアイは、大豆・牛肉・小麦などの農畜産物がGDPの約25%、輸出の約66%を占める農業大国です。特に大豆は世界第6位の生産量を誇り、国際競争力の高い農産物として注目されています。

しかし、農業従事者の約93%が小規模農家(20ha以下)であり、農業管理や土壌病害などへの対応が不十分なため生産性が低く、市場へのアクセスが限定的であることが課題となっています。また、大豆・牛肉等の第一次産品に大きく依存しており、農産品の加工・多様化が不十分であることから、より付加価値の高い農産品の開発が求められています。

こうした背景のもと、日本企業の持つ高度な農業技術やノウハウが、パラグアイの経済発展に大きく貢献できる可能性があります。

保健福祉

パラグアイは経済成長が進む反面、社会開発の遅れが指摘されています。中でも顕著なのは保健福祉の分野であり、例えば農村部では医療へのアクセスが難しく、遠隔医療といった新たなテクノロジーの活用に期待が集まっています。また、偏った食生活から肥満の割合が高く、パラグアイでは成人の約6割が過体重または肥満(保健省、2024年)であり、他の南米諸国と同様に栄養改善が課題です。また、障害者は人口の12%(2012年国勢調査)を占めており、その多くは福祉サービスを活用できておらず、就労の機会も制限され家族の援助に依存しながらの生活を余儀なくされています。障害者の社会参加の促進も急務です。日本の福祉用具、車両改造の技術等により障害者の移動の円滑化ひいては経済的、社会的な参加を促進することが期待されます。

特に連携を期待する領域

  • 小規模農家向けの生産効率・品質向上のための技術
  • 食品加工技術の導入・普及による高付加価値化
  • 土壌(牧草地含む)の改良・農薬・肥料・家畜飼料
  • 福祉用品やバリアフリーのための技術
  • 肥満対策に資する食品、健康維持のためのアプリケーション等

日系社会インタビュー(実施者:松田 秀篤氏)

本邦民間企業の対パラグアイ投資検討に関する関連情報の提供の一環として、パラグアイ日系社会の現状・課題・将来展望等を日本に発信するため、パラグアイで活躍する日系人のインタビュー記事を順次紹介します。