人気ゲーム「マインクラフト」による3D都市データを活用した防災授業を産学官が連携して実施しました!
2025.12.24
世界的な人気ゲーム「マインクラフト」を活用し、楽しみながら洪水リスクを学ぶ――。そんなユニークな防災授業が11月26日から2日間、フィリピンのカビテ州で開催され、ジェネラルトリアス町・国立ルイス・オリンピオ・フェレール・シニア中学校の7年生(日本の中学1年相当)160名が参加しました。円借款「カビテ州産業地域洪水リスク管理事業」の一環として実施された、産学官が連携した新しい防災教育の試みです。
この授業は東北工業大学(仙台市)の小野桂介講師が、KDDI財団の助成を受けた「モンスーンアジア途上国における洪水防災教育プロジェクト」で作成された3D仮想モデルを活用して、洪水災害に対する備え(preparedness)の強化を目的に実施しました。生徒たちが体験したジェネラルトリアスの街は、前述の円借款事業で解析した浸水深想定や地形データで作られた3D都市データが活用されました。ここに、マインクラフトでお馴染みの家屋や建物ブロックを組み合わせ、リアルな街並みを再現しました。生徒たちはゲームの中で自分が住んでいる地域を探し、洪水が起きたら自宅の周りがどこまで浸水するのかを確認しました。3D仮想モデルで実際の街並みを再現することで、生徒たちは親近感を持ったり、洪水が発生すると街がどうなってしまうかを具体的にイメージできたりしたようです。教室では、真剣ながらも楽しんで防災を学ぶ生徒たちの姿が見られました。
こうした取り組みは、仙台市の中学生との比較として小野先生の学術論文にまとめられました。またマインクラフトを活用した防災授業は岩手県内の北上川流域の流域治水の一環としても導入されています。フィリピンでの知見は、こういった日本国内での事例でも貴重な国際知見として活かされています。
カビテ州はマニラ首都圏の南に位置し、多くの日系企業が進出している地域です。JICAは公共事業道路省(Department of Public Works and Highways )と共に、円借款事業としてこの地域の洪水対策を進めています。河川改修などの「構造物対策(インフラ面での対策)」に加え、今回の授業のような「非構造物対策(ソフト面での対策)」も、被害を軽減する重要な柱です。授業は、教育省(Department of Education )やジェネラルトリアス町の防災担当部署の協力も得て行われました。
JICAは今後も、外部の新しい技術や知見も取り入れながら、災害への備えと、全ての人々の「災害へのレジリエンス(強靭性)」向上を目指し、協力を続けていきます。
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