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西セピック州のリンパ系フィラリア症制圧を支援 ― より安全で衛生的な集団投薬に向け、8,250個の飲水用カップを寄贈

#4 質の高い教育をみんなに
SDGs

2026.10.14

2026年9月22日、JICAパプアニューギニア事務所において、エーザイ株式会社(東京都文京区、以下「エーザイ」)からパプアニューギニア(PNG)保健省に寄贈された飲水用カップ8,250個の引渡式を開催しました。

今回の寄贈は、PNG政府が進めるリンパ系フィラリア症(Lymphatic Filariasis:LF)の制圧に向け、日本企業とJICAがそれぞれの強みを生かしながら、現地の保健医療活動を支える取り組みとして実現したものです。式典には、PNG保健省、Toyota Tsusho (PNG) Ltd., Trading as Ela Motors(以下「Ela Motors」)、JICAなどの関係者が出席しました。また、エーザイからは、本寄贈に込められた思いやLF制圧に向けた長年の取り組みを紹介するビデオメッセージが寄せられ、式典で上映されました。

エーザイ社員有志による寄付および同社のマッチングギフトにより寄贈された飲水用カップ

西セピック州約36万人を対象としたMDA活動

LFは、世界保健機関(WHO)が定める「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases:NTDs)」の一つです。蚊を媒介として感染し、発症すると痛みや発熱のほか、リンパ浮腫による身体の一部の肥大などの慢性的な症状を引き起こし、就労や就学が困難になるなど、人々の生活にも大きな影響を及ぼします。PNGでは、政府がWHOやJICAをはじめとする国内外のパートナーの支援を受けながら、LFを含むNTDsへの対策を進めています。JICAは、技術協力プロジェクト「フィラリア対策プロジェクト フェーズ2」を通じて、PNG保健省や州保健局によるLF制圧に向けた取り組みを支援しています。

現在、その活動の一環として、西セピック州保健局が中心となり、州全域で約36万人を対象とした集団投薬(Mass Drug Administration:MDA)が開始されています(2026年10月初旬現在)。遠隔地やアクセスが困難な地域が多い西セピック州で大規模なMDAを実施するためには、医薬品だけでなく、各地域への輸送手段、投薬に必要な資機材、実施計画やデータ管理、そして最前線で住民一人ひとりに薬を届ける保健医療従事者など、多くのリソースと関係者の連携が欠かせません。今回寄贈された飲水用カップは、住民がMDAで薬剤を服用する際に使用されます。カップの共用に伴う感染症の蔓延リスクを低減し、より衛生面に配慮した安全な投薬活動につながることが期待されています。

LF及びMDAの概要を説明するJICAプロジェクトのチーフアドバイザー

それぞれの強みを生かし、現場のニーズに応える

今回の取り組みの特徴の一つが、JICAの技術協力と日本企業との連携です。

エーザイは、2013年からLF治療薬であるジエチルカルバマジン(DEC)錠を製造し、WHOを通じて世界33カ国に28.6億錠を無償で供給してきました(2026年6月現在)。PNGに対しても2013年以降、約1,500万錠を無償提供しています。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミック時には、JICAとの連携によりマスク5万枚と手袋3万5,000枚をPNG保健省に提供し、MDAの安全な再開を支援しました。

今回の8,250個の飲水用カップは、エーザイ社員が任意で毎月寄付を行う「ワンコイン寄付」プロジェクトを通じて実現しました。社員一人ひとりの自発的な寄付に会社が同額を拠出するマッチングギフトによって生まれた支援が、PNGのMDAの現場へ届けられます。

さらに、PNGで長年にわたり事業を展開しているEla Motorsも今回の趣旨に賛同し、日本からポートモレスビーまでの輸送・輸出手配を支援しました。JICAは、PNGへの輸入・通関手続き及びポートモレスビーから西セピック州までの国内輸送を支援しました。

このように、企業が持つ知見やネットワーク、社員一人ひとりの思い、そしてPNG政府や州保健局とともに保健課題に取り組むJICAの技術協力をつなぐことで、現場で把握された具体的なニーズを実際の支援へと結びつけることができます。今回の取り組みは、民間企業と開発協力機関がそれぞれの強みを生かし、PNGが抱える具体的な開発課題の解決をともに後押しする官民連携の一例でもあります。

ビデオメッセージを寄せたエーザイ株式会社の真坂 最高人事責任者

今回の寄贈への支援について挨拶するEla Motorsの三上 代表取締役社長

8,250個のカップに込められたパートナーシップ

今回の引渡式では、PNG政府から今回の寄贈に対して謝辞が述べられました。 また、白水(しろうず)健一JICAパプアニューギニア事務所長は、今回の寄贈が、PNGの人々の健康向上という共通の目標に向けたパートナーシップと連帯を象徴するものであることを強調しました。エーザイの真坂晃之チーフHRオフィサー(CHRO)からは、ビデオメッセージを通じて、日本もかつてLFの流行国であり、多くの関係者による長年の努力によって1970年代に制圧を達成した経験が紹介されました。その上で、「PNGの子どもたちがいつの日かLFを『過去の病気』として語れる未来」を目指し、ともに歩んでいきたいとの思いが伝えられました。また、今回のカップは、エーザイ社員が「人々がより安全に薬を服用するために、自分たちに何ができるか」と考えたことから生まれた支援であることも紹介されました。Ela Motorsの三上勝CEOからも、同社が掲げる「より良い地球を未来の子どもたちへ引き継ぐ(Passing on a better Earth to the children of the future)」という理念に触れながら、今回の取り組みを支援し、疾病の制圧に向けて関係者とともに取り組めることを光栄に思うとの言葉がありました。

引き渡されたカップは、ポートモレスビーから西セピック州の州都ヴァニモへ輸送され、2026年10月初旬現在、現地への到着が確認されています。今後、州保健局を通じてMDA実施チームに配布され、投薬活動に活用される予定です。

寄贈への謝意を述べ、閉会の挨拶を行うPNG保健省のDr. Petronia Kaima氏

カップの引渡式に出席したPNG保健省、Ela Motors、JICAなどの関係者

PNGの子どもたちや人々が健康に成長できる未来へ

LFを含むNTDsの制圧は、現在病気の影響を受けている人々を守るだけではありません。感染の連鎖を断ち切り、予防可能な疾病による健康上・社会的な負担を減らしていくことは、PNGの将来を担う子どもたちが、疾病によって学びや将来の可能性を損なわれることなく、健康に成長し、学び、社会で活躍できる環境を整えていくことにもつながります。そのためには、政府や開発パートナーだけでなく、民間企業、市民社会、地域社会など、多様な主体がそれぞれの強みを持ち寄り、長期的に取り組んでいくことが重要です。

JICAは今後も、PNG政府や州保健局が主体となって進めるLF制圧を含むNTDs対策を支援するとともに、日本企業をはじめとする多様なパートナーとの連携を通じて、日本の知見、技術、ネットワーク、そして一人ひとりの思いをPNGの具体的な開発課題の解決につなげ、次世代がより健康に暮らせる社会づくりに貢献していきます。

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