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6月20日「世界難民の日」に寄せて ―シリアルバーと持続的な難民支援の可能性―

#1 貧困をなくそう
SDGs
#8 働きがいも経済成長も
SDGs
#16 平和と公正をすべての人に
SDGs

2024.06.25

【背景・TBBの紹介】

 ウガンダ国政府は、国連難民高等弁務官事務所(以下、「UNHCR」)等の国際人道支援機関とも連携し、近隣のコンゴ民主共和国や南スーダン等から流入する難民に対して、寛容な受入政策をとっています。UNHCRによれば、その受入人数は2024年5月末時点で160万人を超え、アフリカでは第一位、世界でも屈指の難民受入国となっています。また、2023年12月にスイスのジュネーブで開催されたグローバル難民フォーラムでは、日本を含む5か国とともに共同議長国を務めるなど、大陸を超えてリーダーシップを発揮しています。

 JICAウガンダ事務所は、企画競争を経て選定された現地企業「Zahra Food Industries 」(以下、「Zahra社」)とともに、難民居住区で生産された原材料(蜂蜜、ピーナッツ、トウモロコシなど)を一定量(製品の約60%)使用したシリアルバーの製造・販売を通じて、難民居住区に暮らす人々の生計向上や難民問題の認知度向上を目指すTravel Beyond Bars(TBB)プロジェクトを実施しました。

 シリアルバー「Revive」の原材料調達で生じる利益は、難民居住区で暮らす人々に新たな収入源をもたらすことが期待されます。また、ReviveのパッケージにはQRコードがプリントされており、これを読み取ると、本プロジェクトの背景や原材料を生産する難民居住区の人々について説明されたウェブページにアクセスでき、購入者が難民問題について更に意識を高められる仕組みとなっています。

(商品デザインには、「難民との連帯」を意味する青いリボンが用いられています。)

【TBBの成果】

 本プロジェクトでは、シリアルバーの最大消費国であるアメリカ合衆国でオンラインテストマーケティングを実施しました。世界ブランドが集結する競争の激しいマーケットにおいて、ブランド認知度や設定価格、商品配送など、様々な側面での課題が浮き彫りとなりましたが、実際の購入者からは「美味しい」、「朝食に最適」、「良いコンセプトによる良い商品」などの好評を得ることもできました。これらの結果も踏まえ、Zhara社では今後更なる製品の改良とマーケティング戦略の検討を行い、ウガンダ国内での販売にとどまらず、国外へのオンライン販売も行っていく予定です。

 世界難民の日を翌日に控えた6月19日に、ウガンダの難民支援政策を統括する首相府、UNHCRのほか、数多くの人道支援機関関係者が出席するなか、本プロジェクトの完了報告をUNHCRカンパラ事務所で実施しました。出席者からは、「難民居住区で暮らす人々によって生産された作物が市場で売買され、彼ら自身が難民居住区を超えたより大きな経済に取り込まれるというコンセプトが素晴らしい」、「このような、難民に対する包摂的なアプローチと、それを支える仕組み(制度)づくりが今後必要になる」といったコメントがあがりました。世界各地で紛争や武力衝突が増加・長期化し、増え続ける難民を支援する人道・開発支援機関が疲弊する中、TBBプロジェクトは、民間セクターと公的機関が共創することによる持続的な難民支援の可能性を前向きに示唆するものとなりました。

(6月19日、UNHCRカンパラ事務所で報告を行うZahra社代表Quresh Fidahusein 氏。)

【今後の難民支援にかかる取り組み】

 TBBプロジェクトは本年6月末をもって終了となりますが、Zahra社はReviveの国内外での販売を本格的に開始する予定です。またJICAも、現在実施しているウガンダ政府の難民政策立案支援、地方行政の能力強化や難民の生計向上等の取り組みに加え、難民の流入増加により森林伐採が深刻化する地域での自然資源管理にかかるプロジェクトを2024年内に開始する予定です。難民居住区に暮らす人々が、自立し、人間らしく尊厳を持って持続的に生きていけるよう、これからも多様なパートナーとの共創のもと、包括的な難民支援の取り組みを行っていきます。

【参考ページ】
シリアルバーを通じて難民も消費者も元気に! | 海外での取り組み - JICA
【世界難民の日】サヘル・ローズさんと語る「今あなたに伝えたい もう一つの世界の話」 | ニュース・メディア - JICA

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