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ベトナム「中小零細事業者向け女性金融包摂支援事業」に対する融資契約の調印:女性が経営する中小零細事業者の金融アクセスを改善 ーSMBCとのサステナブルファイナンス・フレームワーク事業

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2021年10月20日

VP Bank職員による事業者との面談風景

VP Bankの女性顧客

国際協力機構(JICA)は、10月20日、 Vietnam Prosperity Joint Stock Commercial Bank(VP Bank)との間で、ベトナムの女性が経営する事業者を含む中小零細事業者向け貸付資金として7,500万米ドルの海外投融資による融資契約に調印しました。
本融資は、2019年に日本政府が発表した「対ASEAN海外投融資イニシアティブ」(*1)に沿うもので、その柱として創設された「アジア諸国向け金融包摂促進ファシリティ」 (*2)を活用して実施されます。また、三井住友銀行(SMBC)との協調融資であり、JICAの海外投融資再開以降、ベトナムにおける本邦民間金融機関との協調融資の第一号案件となります。

VP Bankは1993年に設立されたベトナムの商業銀行で、円借款「中小企業支援事業(III)」(2009年承諾)の仲介金融機関の一つとして長年金融アクセスの向上に取り組んできました。主に中小零細事業、一般消費者、リテール向け融資の3分野に力を入れており、ベトナム国内の10万社以上の中小零細事業者が同行の顧客です。特に近年は、女性が経営する中小零細事業者向けの商品開発、金融サービスを積極的に展開することで市場から高い評価を受けています。JICAは2019年から技術協力プロジェクト「ジェンダーの視点に立った金融包摂促進支援プロジェクト」(*3)でベトナムにおける女性の金融アクセス向上を支援中であり、VP Bankは同プロジェクトのパートナー機関として、ベトナムの女性起業家に対する経営診断ツールの提供等を行っています。

ベトナムの中小零細事業者は全事業者の約98.7%、GDPの約45%以上、雇用の約63%以上を占めるとされ、社会経済において重要な役割を担っています。しかし、中小零細事業者の金融アクセスは限定的で、中でも女性経営者の金融アクセスは深刻な課題となっています。

JICAによる本融資はG7の開発金融機関が取り組む「2X Challenge: Financing for Women」(*4)のイニシアティブに準じ、融資金額の30%以上をVP Bankを通じて、女性が経営・活躍する企業に融資します。女性が経営する中小零細事業者を含む中小零細事業者向けの貸付拡大を支援し、ベトナムの持続的な経済成長に貢献することを目的としており、SDGs(持続可能な開発目標)のゴール5、8、9、17に貢献します。なお、2021年9月、JICAは今後のジェンダー課題に対する取組みを強化するため、ジェンダーボンド(*5)を発行し資金調達を実施しました。ジェンダーボンドにより調達された資金は「ジェンダー平等と女性のエンパワメント」に資する事業へ使われることとされ、本事業にもこの資金が活用されます。

ベトナムには「女性の日」と呼ばれる特別な日が年に2回あります。3月8日の「世界女性デー」に加え、本日10月20日が「ベトナム女性の日」と定められており、女性の地位向上や女性への感謝、尊敬の意を示す大事な日とされています。本融資では女性が経営する中小零細事業者に対する金融アクセス改善を通じ、ベトナムにおける女性の一層の活躍を支援します。

また、本融資は、2021年3月30日に導入されたSMBCとJICAの協調融資におけるサステナブルファイナンス(*6)・フレームワークの適用案件でもあります。本フレームワークでは、開発途上国の開発事業の課題設定・モニタリング・事業効果測定に関するJICAのノウハウを活用し、SMBCとJICAが共通の事業効果測定方法・モニタリング手法を用いることで、融資先が創出する開発インパクトを評価し、共有し、マネジメントすることとしています。そうした手法を内包することで、本フレームワークはSDGs達成に向けた取り組みとして国際的に認められた各種のサステナブルファイナンス原則(*7)に合致・準拠したものとして、外部評価機関による第三者意見を取得しています。JICAは本フレームワークの導入により、今後もSMBCとの連携を積極的に推進し、開発途上国・地域の経済社会の発展に向けた民間資金動員を加速していきます。


(*1)対ASEAN海外投融資イニシアティブ:2019年11月、ベトナムを含むASEAN・アジア地域の金融包摂分野について、我が国が第22回日・ASEAN首脳会議における首相声明において立ち上げたイニシアティブ。「ASEAN地域を中心に、質の高いインフラ、金融アクセス・女性等支援、グリーン投資の分野について、民間を含む資金の動員を目指し、今後JICAの出資・融資を倍増させていく」旨コミットしている。
(*2)アジア諸国向け金融包摂促進ファシリティ:「対ASEAN海外投融資イニシアティブ」の柱の一つとして、「ASEAN地域等の金融アクセスを改善し、女性・低所得者・中小零細企業等のエンパワメントを目的とした同地域の金融機関への融資を行う」としていることを踏まえ創設されたファシリティ。
(*3)ジェンダーの視点に立った金融包摂促進支援プロジェクト:ジェンダーの視点に立った金融包摂の促進に向けて、ベトナム女性連合及び金融サービス提供機関の能力強化を通じて、貧困層及び低所得層(BOP層:Base of the Pyramid)の女性のニーズに応じた金融・非金融サービスの開発と提供を促進することを目的としている。
(*4)2X Challenge: Financing for Women:2018年6月のG7に合わせ、JICAを含む各国の開発金融機関が採択したイニシアティブ。女性の経済的エンパワメントに資する案件に対して2020年までに30億米ドルの資金動員を図ることを掲げた。2021年には同取り組みを更に拡大すべく、2021年から2022年の2年間で150億米ドルの資金動員を図る目標を設定。2Xは女性への投資の量及び効果を倍増させるという目標を示している。
(*5)ジェンダーボンド:
新型コロナ危機を受けて一層浮き彫りとなったジェンダー課題に対する取組みを強化するため、2021年9月に発行された債券。これにより調達された資金はジェンダー平等や女性のエンパワメントに資するJICA事業に活用される。
(*6)サステナブルファイナンス:環境・社会・ガバナンス(ESG)といった観点も踏まえながら、持続可能な経済・社会に必要な課題解決のため、資金を活用するもの。
(*7)サステナブルファイナンス原則:国際資本市場協会(ICMA)やローン・マーケット・アソシエーション(LMA)等が定めるグリーンローン原則、サステナビリティ・リンクローン原則、グリーンボンド原則、ソーシャルボンド原則、サステナビリティボンド・ガイドライン。

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