田中理事長が南スーダンとモルドバを訪問:平和と安定の重要性を再確認

2022年6月1日

田中明彦JICA理事長は、5月18日から27日にかけて、4月の就任後初めての海外訪問として南スーダン共和国とモルドバ共和国を訪れました。南スーダンでナイル架橋の完工式典に出席したほか、それぞれの国で政府要人との会談、協力事業の現場視察等を行いました。

南スーダン

キール大統領、マシャール第一副大統領とともに

完工式でのスピーチの様子

ナイル架橋の完工式典に参加、平和と安定の重要性を再確認

田中理事長は、5月19日、日本の無償資金協力「ナイル架橋建設計画」の完工式に出席しました。独立直後の2013年に建設が開始されたナイル架橋は、2度の武力衝突とコロナ禍による計3回の工事中断を乗り越え、10年越しの完成となりました。本橋梁は南スーダン初のナイル川への恒久的な橋梁で、ケニア、ウガンダと南スーダンの首都ジュバを繋ぐ物流が促進され、同国の平和と安定及び経済発展に寄与することが期待されます。完工式は、キール大統領、マシャール第一副大統領、オディンガ元ケニア首相(現AU委員会アフリカインフラ開発上級代表)、堤駐南スーダン特命全権大使等、多くの要人が参加し、盛大に執り行われました。

完工式のスピーチで田中理事長は、本橋梁の意義として①物流・経済の発展への貢献、②人づくりを通じた国造り、③自由と平和の象徴について言及しました。また、南スーダン政府が「フリーダム・ブリッジ」と命名した本橋梁の開通は、ジュバに平和を取り戻した証であり、南スーダンの自由と平和の象徴として、人々に永く愛され、活用されることへの期待を述べました。
キール大統領は、国づくりのニーズに質の高いインフラ協力で応える日本は真の友であると謝辞を述べるとともに、本橋梁の開通は南スーダンの発展への道の始まりであり、橋梁を永続的に活用すべく、持続的な維持管理と平和の維持に努めるよう国民に呼び掛けました。

田中理事長はミジョク道路・橋梁大臣及びクレン駐日特命全権大使とも会談し、今後の南スーダンへの協力の推進を約束するとともに、平和と開発への南スーダン政府の強いイニシアチブを期待すると伝えました。
ミジョク大臣及びクレン大使は、南スーダンの人々に寄り添うJICAの協力とリーダーシップを称え、和平の進展に伴いインフラ開発の需要が高まるとして、日本の継続的な協力に期待を寄せました。

モルドバ

サンドゥ大統領との面談

医療機材引渡しの様子

贈呈式の様子

病院視察の様子

日本の協力の成果を確認し、今後のさらなる協力を協議

田中理事長は、キシナウにてサンドゥ大統領、ブディアンスキ財務大臣、ゲルチウ農業・食品産業大臣及びネメレンコ保健大臣と面談しました。また、ウクライナ周辺国支援として供与した医療機材の引渡しや、ウクライナ避難民受入施設、JICA事業の対象である農家及び病院を視察しました。

田中理事長はサンドゥ大統領との面談にて、これまでのモルドバに対するJICAの協力を紹介するとともに、事業の円滑な実施に対するモルドバ側の協力に感謝し、さらなる協力に向け連携していきたいと伝えました。またロシアによるウクライナ侵略を受け、保健医療分野を中心に迅速な支援策を検討・実施してきたことを伝え、大統領から謝意が述べられました。その後、保健、農業、気候変動対策など様々な分野の今後の協力可能性について協議を行いました。

各大臣との面談では、今後の具体的な協力可能性を協議するとともに、保健大臣との面談時には、ウクライナ避難民流入により逼迫するモルドバの医療提供体制整備のための医療機材を引き渡しました。保健大臣はかつてJICAの研修に参加したことが自身に大きな影響を及ぼした経験に触れ、JICAの技術協力への感謝の意を伝えました。

田中理事長は、JICAによる協力(注1)を通じて農業機材を購入・活用している農家を視察し、新たに購入されたトラクターを贈呈しました。病院への視察では、JICAによる協力(注2)を通じて供与された医療機材がモルドバの安定的な医療体制構築に貢献していると説明を受けました。また、ウクライナ避難民受入施設の視察では、多数のウクライナ避難民を受け入れているモルドバがウクライナ支援に果たす役割の重要性を確認しました。

JICAは引き続きモルドバ全体の経済・社会基盤の発展に貢献すべく、幅広い協力を行っていきます。

(注1)モルドバの農業分野への支援として、JICAは円借款「農業機械・設備近代化事業」等により中小規模の農業事業体に近代的な農業機械・設備を提供し、農業生産性の向上を図る協力を行っています。

(注2)モルドバの保健医療分野への支援として、JICAは円借款「医療サービス改善事業」等によって、医療機材・検査機材の整備等を行い、医療サービス供給体制の強化・効率化による医療サービスの改善を図る協力を行っています。